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書評 237 「近畿地方のある場所について」

新しいスタイルのホラー小説。序盤から怪異的存在を匂わせながら、主人公がそこに迫っていく。数々の恐ろしい事が起きる。何がそれを起こしているのか。読者の想像をを膨らませながら、徐々に元凶を露わにしていく。これだけ聞くとありふれたホラーものである。

しかし、本書はその過程が面白い。主人公らしき人は複数登場するが、彼らの取材という形でストーリーが進んでいく。取材なのでそれはインタビューであったり、文献調査であったり、現地実査もあればSNSなどのネット情報の収集も入ってくる。これらを章立ての形に落とし込んで、展開していく。

その繋ぎこみが読者への情報開示であり、場面転換の効果も出している。ページの見た目(構成)を取材のソースに応じて変えているのも良いアイデア。

ホラーのネタと怖さ自体は、よくできてはいるもののそんなに新しい奇抜なアイデアではない。しかし、組み立ての面白さがページを繰らせる一冊。


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