書評 193 「コーランを知っていますか」
阿刀田高さんによる宗教聖典解説エッセイシリーズを読むのも旧約聖書、新約聖書に次いで3冊目。本書も同様に軽妙な文章で読みやすい。
前の2冊とは構成がかなり異なっているが、それは原典の違いにある様だ。著者によれば旧約聖書は神話的な物語で、新約聖書はイエスの伝記。コーランはストーリーではなく、講釈の集成。なのでストーリーの要約版にすることがそもそもできない。このため、本書は解説的な記述が多くなっている。そうなると読んでいて面白くなくなるものだが、著者の筆力がそれをカバーしている。
イスラム教の成立と時代背景、アラビアの当時の状況などをうまく解いて絡めてくれている。代表的な教義を拾い上げ、なぜその様な教えがコーランに書かれているのか、それが滑らかに頭に入ってくる。
最終章では現代のイスラム教に繋げて、まとめとしているのも読者にとってはありがたい。
イスラム教の背景をとりあえず要約して知ることができる一冊。