書評 230 「ヒトの言葉 機械の言葉」
言語学に関わる楽しい著作が多い川添愛さんによる、AIの「言葉」の解説。2020年の刊行である点は頭に入れて読む事になる。
人間が言葉を習得していく過程には、過去の経験値から生まれる類推や想定がある。しかし、AIには無い。膨大なデータを読み込む中から、単語の繋がりから次にあるべき確率が高い単語を選別するのがAI。AIはSF小説や漫画で描かれた様な、自立して「考え」を「生み出す」ことはできない。これが一貫して主張されている。
その過程で、言語の本質とは何なのかといったことも書かれている。単語の意味は辞書を引けば分かる。しかし、その説明の中にある単語の意味は? それも辞書で引けばいい。だが、最後には一定の単語を自明のこととして理解できていないと終わってしまう。つまり、言葉でゼロから表現できないが、その単語が何を意味するか漠然とわかっている。それが人間の言語能力の特徴らしい。
言葉の面白さが見える一冊。