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書評 195 「遺跡が語る日本人のくらし」

著名な考古学者で国立歴史民俗博物館の館長を務めた、故佐原真さんの著書。考古学の面白さを中高生に伝える視点で書かれている。

日本人が考古学と言われて思い浮かぶものを網羅し、遺跡や発掘物からこんなことがわかるんだ、と教えてくれる。古代の人々の暮らしぶりを再現するのみならず、共同体から社会への発展過程であったり、抽象的な事に価値を見出す精神の発達といった事まで読み解く。

さらに現代社会の中にも批判されるべき点があるとし、その原点を考古学者として古代に遡って見出している。例えば、戦争はなぜ始まったのかとか、環境破壊の歴史的過程であるとか。文字通り過去を知って過去に学び、現代に生きる我々の指針として未来に活かす。そんな提言までが盛り込まれている。

かなりの大部となってもおかしく無い内容なのだけれど、気軽に手に取れる厚さ。表現も平易であり、本当に読みやすい。

考古学に興味がない人こそ手にとってほしい一冊。


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