まつりのあとに -「文化にする」を考える② -
大雨にも見舞われたけれど、無事、イベントが終了した。
片付けもひと段落し、日常へ。天気の回復を待っていた収穫がまた始まった。
息つく暇もないけれど、前回の続き。「文化にする」を考える。
結果から言うと、イベントとしては多くの出展者、出演者、お客様に楽しんでいただけた、良い時間と場所になったのだと思う。SNS上でも多くの反響があり、終わることに関して名残惜しさを感じる声もある。わたしも、15年間このイベントを支え続けた全ての人に感謝を伝えたい。おかげさまで、多くの学びと出会いがありました。
しかし、それでも終わることと、残ったものについてを考えたい。
前回までの整理
詳細は記事を見ていただいた方が早いのですが、簡単に。今まで「文化」と聞いてもあまりピンと来なかったのだけれど、移住してから少しずつ見え方が変わってきている。そして、15年続いたイベントが終わるのだけど、そのイベントで築いてきたものはどうなっていくんだろうと、疑問に思った。何か残るのであれば、それが文化なのかなと。そのことについてちゃんと考えたくて、この記事を書いている。
決して何かを、誰かを否定したいとか、そういうことではないので悪しからず。(一応、イベント名も伏せておきます)
当日は、多くの笑顔が溢れていた。
イベント自体は、キャンプフェス。今年は2日間にわたって開催された。初日は大雨。けれど夕方には雨が上がり、それ以降は晴天だった。それもあってか、朝から晩まで、各所で笑顔が溢れていた。
自分自身、ひとりの客として来ていたら、きっと何も疑わず楽しんでいただろう。お酒もご飯も美味しいし、ワークショップもいろんな種類がある。音楽だって、新しい良い音楽と出会える。デコレーションも毎年変わり、驚きや発見を与えてくれる。場所については自画自賛になる部分もあるが、大した不便さはなく美しい自然を満喫できる。景色の良いキャンプ泊も楽しめる。夜には満天の星空。朝には雲海。なんだ、最高のフェスじゃないか。
それでも、違和感。
けれど、手放しで最高だと思えない部分がある。このイベントは、わたしも暮らす集落の上で成り立っている。文字通り、集落の頂上だ。演奏の音は、どうしても民家へと届いてしまう。もちろん毎年、会場の管理人としてお詫びの挨拶まわりをしている。「ぜんぜんえぇんよ」と言っていただける方が多いのだけれど、やはりただ暮らす側からすると騒音なのだ。楽しさの裏側。騒音問題。
きっと暗黒大陸のようなもので、存在を知らなければ気づくことは全くない。あるいは知識として知っていても、自分の五感で体験しなければ理解できないものなんだろう。2,3日の間、キャンプ場の中、イベントの会場内だけならすばらしい空間にすることはきっとできる。けれどそれ以上の時間を通じて、地域の暮らしとの関係性を作りながら、本当の意味で受け入れてもらえるイベントにならなければ、「文化」と呼べるものは興らないのでは。
少しずつ見えてきた、そこにあったもの
今回の気づきは、このイベントは「フェスティバル」の文化(カルチャーといった方が的確かもしれない)を、外から持ち込んだ際に生まれた摩擦で終幕に至った、のではないかと思っている。文化があったのか、なかったのか、その答えとしては「持ち込まれた文化があった」だ。しかしそれを、このイベント自体の「文化にする」ことができなかったんじゃないだろうか。
イベント中、特に楽しんでいたのはやはり、フェスティバルを求めていた人々だった。終わってからも、「最高のフェスだった」という評価を目にすることがある。
それを作り上げた全ての関係者の方々には、敬意を表したい。
ただ一方で、「最高のフェスをつくろう!」と、運営メンバー全員で意思の共有ができていたかというと、そうではない。事実、そういった時間は持てていなかった。イベントの意味、目的、想い。そういったものを共通の言葉で表すことができていなかった。先ほど書いた「摩擦」というのは、運営メンバーひとりひとりひとりのイベントに求めるものが少しずつずれていたところにあると思っている。ただ、それでも成り立っているのが逆にすごい。本当に。
このイベントにあったのは、持ち込まれた「フェスティバル カルチャー」だった。一方でこのイベント独自の文化は、生まれつつあったはずが、残ってはいない。今はそう思っている。
まつりのあとに
結局は、なにに対する愛があるか、だと思う。文化に共通するものは。日本文化の根本には、自然への敬愛があるように。そこから考えると、このイベントの文化に近いものは「楽しいこと、新しいことをやり続けよう」だ。
しかしそれが、関係者の共通言語にできていなかった。そしてその結果、イベントとしての周辺地域への配慮や、イベント全体の細かい設計にまで至らなかったのだろう。その点、関係者のひとりとして、後悔が残る。
とはいえ、今まで多くの方に楽しんでいただいたのは事実。たくさんの素敵な出会いがあったのも事実。それはそれとして、これまで続いてきたことを讃えたい。
「文化にする」には、いくつかのプロセスと時間が必要だった。そしてその中身が、少しずつ見えてきた。長くなってしまうので、詳しくはまた別の機会に。
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