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【天国からのプレゼント】

5/31日、本来ならフジコヘミングさんのリサイタルの予定の日だった。

フジコさんは4月に92歳で天に召された。
【過去記事:フジコヘミングさん参照】


ちょうど同じ日、中々予約の取れない、2か月待ちのクリニックで私の頭ん中を検査する日がやってきた。主治医の杉浦先生お墨付きの、精神科医の中でも“発達障がいに関するスペシャリスト″とも呼ばれる水野先生を紹介してもらった。


10年以上前、別のクリニックで同じ検査を受けた事はあったが『衝動性が高いくらいで、特に特記すべき点はありません』と言われ、そんなもんかと思っていた。

だが、今度はその道のスペシャリストの専門医があらゆる角度から同じ検査をして分析してくれる。結果は前回と大きく異なるかもしれない。
いつかの記事で前述していたように、とても楽しみだった。

5/31日までの間に、“宿題″を出された。

画像に載せている2種類の記述式の宿題。一気にやると疲れるので、数日に分けて全て書いた。思いだしたくない事…まるまる全部書いた。

そして検査当日、早めに“宿題″を持ってクリニックを訪れた。
フロイトの絵が飾ってある。患者さんらしき人が2人、やはり静かなピアノ曲が流れていた。



定刻になり、白衣を着た女性に呼び出され個室に案内された。臨床心理士の人だろう。

今日の体調はどんなですか?
今日は何の検査をしに来ましたか?
疲れたら休憩を挟みながらテストをしても構いません。
気になる事はありますか?

とても事務的に、簡潔に説明してくれた。


あぁ…今日はこの人が今日私のテストをするんだ。無機質な人だったが、かえってその方が良い。

『発達障がいがあるかどうかの検査をしにきました。それと軽度でも知的障がいがあるかどうかとても気になります。それもわかるんですか?』と聞いた。


心理士さんは『そうですね、その方にどんな特性があるのかを調べるのです、知的障がいも気になりますか?一緒に検査できますが。』


『はい、昔からお前はバカだと言われて育ちました。今でも国語ができない、軽度さんだと家族に言われます、それならそれでハッキリ分かっておきたいんです。知的障がいがあるのならあるで理解します。例えばそうじゃないのに、私の情緒不安定さを勝手に軽度の知的さんだとすりかえて言われるのがとても嫌なんです』と話した。


『ご家族にそう言われるのは嫌ですね…。それも含めてテストしますので大丈夫ですよ』



ひと通り話して検査開始だ。


積み木を見本と同じように並べる。
画用紙に絵を描いてそのイメージを伝える。
心理士さんが言う数字をそのまま復唱する、数字は6桁まで増えた。
今度は心理士さんが言った数字を逆に答えていく、『3、1なら1、3ですね』と言った具合いに。紙に書いてはならない、4桁くらいまでいくと、数学を逆から言っていくのは難しく感じた。6桁くらいまで言ったところでストップした。
次は心理士さんが言ったバラバラの数字を小さい順に並べ替えて答えていく。 

今度は表に示された図形があり、その下にパズルのように分割された絵が、色んな方向を向いている。その中から3つを選び上の図形を完成させる、上下左右反転している物もある。私はこのテストが1番難しく感じた。前もテストしたとき同じように感じた事を思い出した。図形は相変わらず苦手だな…。

次は、日本語の言葉が何個も書いてある表を出された。それぞれどんな意味か説明してください。
『経緯、月と太陽、仰々しい、めずらしい、…』など熟語や形容詞、四字熟語まで次から次へと読んで、言葉の意味を説明していく。ページをめくるごとに言葉の難易度が上がっていく。
ダメだ、読めない漢字がある、四字熟語苦手だ、途中でギブアップ。
母が言う『お前は国語がダメなんだ』が聞こえた気がした。やっぱり国語だ。

1番好きな一問一答形式のテスト。
1分間は何秒?
第二次世界大戦が終わったのは何年の何月何日?
サハラ砂漠があるのはどこの大陸?
おくの細道を書いたのは誰?
源氏物語を書いたのは誰?
江戸幕府を開いたのは誰?
イタリアの首都は?
万有引力の法則を発見したのは誰?

簡単な算数の文章題を心理士さんが読み上げ、暗算で解いて答える。
最初は足し算、引き算…
30個のリンゴを7人で分けたら余りは何個ですか、小学校3年生の問題だ。
心理士さんの言葉を集中して聞かなければ、すぐに忘れてしまう。紙に書いてあれば簡単な問題でも、聞き取りだけで頭で考えるのは意外と難しい。

太郎さんは500円使いました、花子さんの60%しか買い物をしませんでした。花子さんはいくら買い物をしましたか。

全部で15問くらい、ど忘れして後で2問ほど間違えていた事に気づいた。私のバカ!

最後は小学校の時知能検査でやったような、同じ記号のものをできるだけ速く選んで○で囲っていく作業。


はい、ここまでです。お疲れ様でした。
疲れましたか?
どんな問題がやりやすかったですか?
逆に難しく感じたものはありましたか?


気づくと1時間ちょっと過ぎていた。


検査結果は10日以降になります。
次回の予約を取って帰ってください。


できれば検査結果を聞く日は完全なオフの日が良かった。でも休みがない。
6/10の夕方の予約を取り、検査結果を聞いてから仕事へ行く事にした。


その検査結果を持って杉浦先生のところへ行き、それをもとにこれからの診察方法、処方箋が変わる事があるかもしれない。


帰りは雨だった。頭が疲れた。

テストはどれも小学校6年生までに習っているような内容が8割。国語の難しい漢字や四字熟語は中学レベルだった、あれをスイスイ解ける人は最後のページまで滞りなくいくんだろうな…。いずれにしても義務教育をきちんと真面目に受けていれば解けた問題がほとんどだった。

やっぱり私はバカなんだ…国語は小学校4年生くらいからやり直した方がいい。母がいつも言う『お前はバカだ、日本語がおかしい』が頭の中をこだまする。やはり母の言うとおりだ。

一問一答形式の問題は、皮肉な事にこんな私でも家庭教師の仕事を長年しているのでたまたま答えることができただけだ。それでも間違えてしまった。恥ずかしい。


まぁいいや、バカは今に始まった事ではない。生まれつきバカなんだ、IQも低いだろう。

それよりも自分にどんな特性があるのかを調べにきたんだ。提出した“宿題″を水野先生が読むんだろう、量がたくさんあるし文もたくさん書いたので、先生も疲れるだろうな。


ちょっとだけ落ち込み、家で1時間ほど寝たら頭がスッキリした。


その後地下鉄を乗り継いで19時からの家庭教師の仕事へ向かった。


たまたま5/31が最短で検査の予約が取れた日だった。それでも約2か月待った。


本来ならフジコヘミングさんのリサイタルだった日。 



何の関係もないけれど、フジコさんが『きちんと病院に行っておいで』と天国から言ってくれているような気がした。
今日の検査の時間はフジコさんが与えてくれたギフトなのかもしれない、と勝手に思った。



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