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ド派手グループと新たな親友

大学生になり、晴れて自由の身となった私は、毎夜毎夜同じ音楽科の新しい友人の家を訪ねては、飲みに飲みを重ねた。


短大の音楽科は毎日5限まで、ほぼ隙間なく講義があり忙しかったが、勉強&ピアノと遊びは別モノ。




夏期講習で一緒だった、同じ県出身の紀香と美里、ソルフェージュの時間にPHSのけたたましい音で周囲の大ひんしゅくを買った派手なマキも一緒に居る。




紀香は大人っぽいボブヘアで、当時大流行した女優にソックリ、同い年でこんな色気を放つ者がいるのか?というオーラを身にまとう。
紀香とニコイチで居る美里はグラビアアイドルのようなスタイルで、胸の谷間が見える服をよく着ている。美里はピアノ科でありながら、圧倒的な歌唱力を持ちあわせていた。



2人とも私と同じ地方出身にまるで見えない。




外見からド派手なギャルのマキは、とにかく男たらし、大学生活始まって3日目には、2駅隣の繁華街でナンパされたという、どっからどう見てもチンピラの彼氏を作った。
マキは私と同じマンション、5階の住人だったので、仲良くなってからはお互いの家を行ったり来たり、チンピラの彼氏クンと3人でマキの作ったご飯を食べた。






何度目かの飲み会に誘われ(そちらは清純派or正統派系の学生)顔を出した際、
いきなり真っ赤な上下ジャージを着た美人が現れ、『プハーッ!上手いったい!』とチューハイを一気飲みした。

ビックリしたが、中学時代からの友人のアケミを彷彿とさせる何かがあった。

皆でとりとめもない話をしていたが、赤ジャージ美人と意気投合し、飲み会がお開きになった後、私の部屋に来て“飲み直し”となった。


なんと赤ジャージ美人も5階の住人で、6階に住む私と徒歩20秒の距離であった。


よくよく話してみると赤ジャージ美人は、私の家庭環境と少し似ているところがあった。
そうなると話は尽きない。
出会った初日から、明け方までお互いの身の上話しの披露会となった。


どことなく怖そうな雰囲気を持つ赤ジャージ美人は“百合ちゃん”という、お嬢様な名前であり、正真正銘のお嬢様育ちであった。
(以下、ゆりお嬢)


ゆりお嬢は、その見た目から(気が強そうなヤンキー顔の美人)お嬢様女子高時代から、地元の“レディースに入らんか?”と、しつこく勧誘をうけ、2度ビックリして私は吹き出した。

大の赤好き、二言目には『あぁ?』と言うもんだから可笑しくて仕方がない。

しかし、ゆりお嬢はタバコ一本吸わない、生真面目な性格である。



高校時代の親友、みっきーとは正反対のタイプであったが、その後ゆりお嬢とは今でも続く親友となった。





その翌日から、紀香&美里、ド派手なマキらのグループに、ゆりお嬢も加わり、ヴァイオリン専攻のノリちゃん、チェロ専攻の佳乃、with私…という7人グループが出来上がった。



7人のうち、彼氏持ちは既に何人もおり、皆派手で男好き、大学内では少々浮いたグループだっただろう。



大学生活が始まって1か月経つ頃には、それぞれ皆の“お宅訪問”をし、結果インテリアや音楽にこだわっていた私の家が溜まり場となった。


単に“彼氏もいなくて酒もタバコも自由に吸えるレナちゃん家”が皆にとって居心地が良かったのかもしれない。




そんな華やかな(ケバい)グループの中で、私は相変わらず野暮ったいおかっぱ頭、その頃流行っていたモード系を意識して、コムサデモードやポールスミスのメンズラインを着るか、これまたメンズの古着ファッションを愛用しているもんだから、グループ内では浮いていた。




いつしか、7人で帰宅する坂道でのこと、
『どうやったらそんなに大人っぽくなれるの?』
と、紀香に尋ねてみた。
色気抜群の紀香の答えは…
『う〜ん、、レナちゃんの場合、まず前髪から変えたらいいんじゃないかなぁ?前髪伸ばして分けるとグッと大人っぽくなるよ…』
と、自慢の髪をかきあげながら答えた。


ヘェー、前髪かぁ……




『それよりね〜、私昨日で30人目だった♡』



誰かの放った言葉で、私は凍りついた。

30人目って何のこと…???



『やだぁ…キスした男の数だよぉ〜。キスの仕方でエッチが上手いかどうか大体分かる…』



へ、ヘェー、、、凍りついたのは私だけでなく、隣を歩くゆりお嬢もだった。


ちょ、ちょっと待って…この7人のグループの中で処女って私だけ?
まだなーんにもないの、私だけ?

皆の顔色を見る。



『そうそう、キスの仕方でわかるよねぇ〜』なんて言い出したり、自らも経験があるフリをする者もいる。


『やっぱ、10代で2ケタはいっておかないとね…』


紀香の圧倒的余裕の表情と、その言葉の放つ強烈なパワーにやられてしまった。


『10代で2ケタいっとかないと、イケてないってコト??何それ、ヤダ、キモい!』
なーんて、男の影もない私が言えるはずもなく黙ってうつむいた。






『さっきのどーよ?』
私の部屋でヤンマガを読みながら晩ご飯を待つゆりお嬢に聞いてみたが
『言わせておいたらええったい!』と一括された。


次第に、私が晩ご飯を作る→ゆりお嬢が私のタバコや酒を買ってくる→2人で夫婦のように晩ご飯を食べる→ゆりお嬢の家に送られてきた野菜や食料品が私の家にそのままくる→私が料理し2人で食べる…の図式が出来上がった。


料理は得意だったし、親友が美味しそうに食べてくれるのを見るのも嬉しかった。
尚且つ材料はお互いで出し合い、ゆりお嬢は毎日差し入れとしてタバコや酒、ヤンマガを買って持ってくる…のでお互いにとってコスパも良かった。

カレシどころか、ゆりお嬢との半同棲生活みたいなもんだ。




それにしてもだ。


皆、どこで彼氏とやらを作ってるんだろう?


大学には男子は1割しか居らず、音大あるあるでゲイとカミングアウトしている男子生徒も居た。(それも超美男子のボンボンだったりする。)


とりあえず、紀香に言われたように前髪でも伸ばしてみよっか…




そんな“田舎から出てきた大学1年生あるある”な話で、ド派手なメンバーと共に学生生活が始まった。






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