【ノクターン2番】

勝負曲という表現には少し違うような気もするが。

長年ピアノをやってきて、心を落ち着かせるとき、人前で何か弾く機会があるとき、夜そっと練習を終えるとき…中学生の頃に初めて弾いてから、必ず欠かさず弾くのは、ショパン作曲 ノクターン2番だ。

この曲はあまりにも有名で、誰もがどこかで一度は聴いたことがあるだろう。
ノクターンは「夜想曲」とも言う。

色んなピアニストか弾いているノクターンがあるが、私は誰よりもフジコ・ヘミングが弾くノクターン2番を聴くのが好き。フジコが小さい頃、ピアニストだった母親が、夜、子守唄がわりにそっと弾いていたそうだ。

それを真似して、学生時代から1日の練習の終わりに必ずノクターン2番を弾くことにした。
部屋の電気を消し、間接照明だけの明るさで弾くノクターンは、その時気持ちを届けたいあの人に、自分の気持ち慰めるときに、何より自分の音を純粋に聴くときの曲として、長年弾いていた。

フジコのコトバにもあるように、いつの間にか、自分の弾くノクターン2番が一番好きになっていた。

そっと語りかけるようなトリルの美しさ、ルバートのかけ方は、フジコの演奏からひそかに勉強した。

一生懸命頑張った日、辛くて涙に濡れる夜に、心を安定させる時も、精神安定剤のようにノクターン2番が常にある。

このノクターン2番を弾けなくなるほど辛い時期もあったが、やはり最近原点に戻ってきた。

熟成された赤ワインのように、深い海のように、きっとこれから起きる未来のあれこれのために、色んな思いを馳せながら、今日もそっと練習を重ねよう。

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