プロローグ:残滓
破壊は再生へ。終わりは始まりへ。
幾度となく繰り返される時の巡り。そこに例外はなく、『これまで』を失った世界は『これから』へと生まれ変わる。
――――その、筈だった。
そこは、終わりゆく世界。あたりは闇に支配され、すべては等しく無へと還る。憎悪、失望、絶望……それらすべてを煮詰めたものがはびこり、侵され、吞まれてゆく。それは、唯一”残されてしまった”彼も例外ではなかった。
光は途絶えた。すべての努力は意味を為さない。無数の残滓達は、自身の救済すら諦め、ただ消えることを望んだ。けれど、「それでも」と彼は手を伸ばす。指先に灯った微かな光が、彼の頬を淡く照らした。
「どうか、もう二度と」
叶わぬ願いを押し殺すように。
「きみと」
戻らぬ日々を慈しむように。
「であいませんように」
巡りを止めた世界で、彼はそう呟いた。
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