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ハグは怖いが役に立つ

オジさんの科学vol.053 2020年5月号

 日本のコロナウイルスによる感染者や死亡者の数は、ロックダウンまでした欧米に比べてかなり少ない。
 その要因の一つは、中国のデータやダイヤモンドプリンセス号の経験から「3密」を発見できたことだと思います。これがマイクロ飛沫感染(いわゆるエアロゾル感染)の防止に効果を発揮しました。
 一方、欧米で重要視された「ソーシャルディスタンス」は、一般的な飛沫感染や接触感染に対する予防策だと思います。そして、この感染経路においても、日本は勝っていたのだと思います。それが生活習慣のちがいです。

 例えば、欧米人と異なりマスクに対する抵抗感が無いうえに、花粉症や黄砂の時期にも重なり着用率が高かったと考えられます。
 また、日本人は混雑した電車の中などで、大声でしゃべったりしません。スマホに熱中していたのかもしれません。
 小さな頃から石鹸で手を洗う習慣が身についています。また清潔な水が潤沢にあるので、手洗いに時間をかけ、大量に水を使っても気にしません。
 家に入る時は、靴を脱ぎます。
 そして、お辞儀や会釈による挨拶が普通で、握手、キス、ハグなどの身体的な接触はしない、などなどです。

これは、パグです。200521

 でも、昔と比べると身体接触は増えていますよね。外出自粛、買い物は少人数で、と言われているのに、手を取り合ってスーパーに来る輩の多いこと多いこと。
「Hug」と言う言葉だって、オジさんの若かりし頃は上陸していませんでした。みくりさんと平匡さんにとって「火曜日はハグの日、資源ごみの日」。オジさんの場合は「木曜日はただの資源ごみの日、出すのは8時まで」です。
 そしてついに、科学の研究でもハグが取り上げられるようになったのです。
 といっても、こちらは赤ちゃんのハグですが(*^_^*)

 大人同士のハグはお互いに抱きしめあい、気持ちを伝えあいます。では、大人が赤ちゃんを「かわいい!」とハグした時、その気持ちは伝わっているのでしょうか。
 東邦大学と東京大学、大阪大学の研究グループは、100組以上の0歳児と親を集め、ハグと赤ちゃんの心拍数の変化を調べました。
 
 赤ちゃんは、生後4ヶ月を過ぎると自律神経の活動が変化します。そこで研究グループは、赤ちゃんを生後4ヶ月未満と以上のグループに分けました。
 そして、お母さんに、赤ちゃんを「軽く縦抱きする」、「可愛いと思ってぎゅっとハグする」、「そのまま走れる位強く抱きしめる」という3つやり方で、20秒ずつ抱いてもらいました。抱きしめる強さは、軽く縦抱き<ハグ<強い抱きしめ、となります。

 4ヶ月未満の赤ちゃんは、いずれの抱き方でも心臓の鼓動がゆっくりになりました。しかし強く抱きしめる程、心拍数の下がり具合は悪くなりました。強く抱きしめてはダメなのです。ハグだと軽い縦抱きより、ドキドキしていたのです。

 ところが4ヶ月以上の赤ちゃんの場合は違っていました。ハグの時だけ、他の抱き方よりも鼓動がゆっくりになり、リラックスすることが判ったのです。
 同じことが、お父さんの場合でも確かめられました。

 さらに赤ちゃんにとって初対面の女性でも調べました。全員育児経験をもっている人たちでした。それでも両親の時に比べ、赤ちゃんはあまりリラックスしないことが判りまました。

心拍数の変化

 お母さんの手のひらに圧センサーを付けて調べると、ハグの強さにバラつきがありました。また、お父さんとは手の大きさや体格も違います。でも赤ちゃんは、両方でリラックスしました。
 このことから赤ちゃんは、決まった強さでリラックスするのではなく、自分の両親のハグを覚えていると考えられます。生後4ヶ月で親子の触れ合いを学習するのかもしれません。
 赤ちゃんを抱っこしないお父さんは、覚えてもらえなくなるのです。

 また、今回の調査では9割以上の親が、赤ちゃんをハグすると「安心する」と答えました。実際に心拍数も下がりました。両親もハグをすることにより、リラックスしたのです。
 外出自粛は、ストレスが溜まります。赤ちゃんをギュっとハグしてあげましょう。そして自分もリラックスしましょう。

 オジさんもリラックスしたい。しかし、うちの息子は既に独立しています。目に留まったのが、我が家の愛猫、小鈴です。
 麻布大学の研究によって、ヒトとイヌは見つめあうことにより愛情ホルモンのオキシトシンが互いに増えることが判っています。ネコだって同じかもしれません。
 小鈴を見つめると、目を逸らされました。そこでハグをすることにしました。

 東京大学やウィスコンシン大学などの研究で、ヒトから分離されたコロナウイルスがネコにも感染することが確かめられました。また、感染したネコから他のネコへ伝染ることも判りました。緊急事態宣言中は、ネコも外出を自粛させた方が良さそうです。

 うちの小鈴は、家の中とバルコニーの往復だけです。他のネコとの接触もありません。大丈夫。
 では、「やー」、ぎゅ~~~っ。
「ぎゃ~~~」・・・・・・。

ぎゃーーー

                  2020.05.21や・そね

<参考資料>
ニュースリリース
『両親のハグによって乳児がリラックスすることを実証~科学の言葉で語る親子のハグ~』  
 東邦大学、東京大学、大阪大学 2020年4月2日

『新型コロナウイルスはネコの間で感染伝播する』
 東京大学 2020年5月13日
『イヌとヒトの共生を支えた内分泌のはたらきを概説』
 麻布大学 2019年10月15日

WEB
『COVID-19 strategy: The Japan model』the japan times  2020年4月28日
『新型コロナ、クラスター対策と「8割減」の本当の意味』
 ナショナルジオグラフィック 2020年5月19日
『「3つの密」、誕生の背景とは? - 押谷・東北大教授(厚労省クラスター対策班)感染症学会LIVE配信特別シンポ、COVID-19テーマに開催』
 医療維新 2020年4月23日

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