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体のオプションが増えた分だけ、心は軽くなっていく

【オプションその1 老眼鏡】
老眼鏡デビューしたのは夫の方が先だった。
夫は去年くらいから、スマホの細かい字が見えにくい。本の細かい字が読みにくい。と言いだし、ホームセンターで老眼鏡を買ってきた。
「どう? 見て、この眼鏡」
夫が嬉しそうに眼鏡をかけて、にっこり微笑む。
なんだか、ビーバップ・ハイスクールにでてくる菊リンが使っているような形の老眼鏡だった。
「この眼鏡すごくかけやすいよ。かけていてもつかれないし! めちゃくちゃよく見える!」
と言って、老眼鏡を褒める夫を見守りながら、老眼かぁ。こんなに目が見えてるのに、見えにくくなるの? 私にもいつかやってくるんかいな、と思っていたら今年、突然やってきた。
私が「夜、目がみえにくい。しょぼしょぼする」と伝えると
「それ、老眼かもよ。俺の老眼鏡使ってみてよ」
というので使ってみたところ、うっすらぼんやり見えていた小さな文字がくっきりしっかり見えた。いよいよ大人の階段上るんだ!と興奮した。
(っていいますか、もうすごい大人の年齢だけど) 
私も夫も視力がよくて二人とも2.0だったから、目がよく見えない状態がわからなかった。
知人に「目が悪くて、床板の木目が見えない」と言われたとき、ええ!?っと凄く驚いたことがある。目が悪いって大変なんだなぁと。
しかし、今なら知人のその気持ちがよく理解できる。
視力がいいと老眼になるのは速いよ。と言われていたので、そろそろそうかもしれないと覚悟はしていたけれど、ほんとにこんな風に目も衰えるんだなぁ、と人体の不思議を感じた。
そして夫はホームセンターで、二つ目となる「菊リン風の老眼鏡」を私用に買ってきてくれた。
二人で眼鏡をかけて見つめ合う。
夫と私が菊リンになっても、
トオルとヒロシには勝てそうもないな、と思った。
(詳しくはビーバップ・ハイスクールを読んでくださいね)
スマホを見たり本を読むときは老眼鏡をつけると、本当によく見える。
「眼鏡作った人、天才!」と子供のように思った。

老眼鏡を使うようになって、数日がたったある日。
ふと、老眼鏡ってネーミングが、なんだか哀愁が漂っているよなぁ。
「ちょっと目の筋肉が衰えたので使ってみたら最高によく見えた眼鏡の件」とか、少し前に流行っていたラノベのタイトルのように、長くても哀愁が漂わなくしてくれたら、なんだか心晴れやかなのにさ。
そんなことを思いつつ、老眼鏡デビューをした私にはちょっと楽しみなことがあった。
大好きな作家の角野栄子さんがいつも素敵な眼鏡をしていて、私も眼鏡を使うようになったら自分に似合う可愛い眼鏡を作りたい! と密かにワクワクしていたのだ。
角野さんが「靴はもうぺったんこだけ。お洋服もワンピース。自分の心地良い物しか身につけない」と言っていて、私もそうしようと思い、ここ数年はリネンのワンピースばかり着ている。人生の先輩が楽しそうに過ごしている姿を見ると、私も楽しもうと刺激をいただける。本当に有り難く思う。

【オプションその2  転倒防止用杖】
老体になってきている夫は、たびたびぎっくり腰になるようになった。
夏休み、冬休み、GWと、長期休みに入ると、「ぎっくり腰の皆勤賞」を取る勢いでグキリと、腰を痛めていた。
ぎっくり腰になる原因は草むしりだ。
長期休暇に入ると、やる気満々で草をむしり、大きく育ったオリーブを切り出す夫。
30代、40代、50代になっても、庭の草むしりの手は抜かない男、それが私の夫。草むしりはヒーリングだよ!っと楽しんでいた。
でも数年前から草むしりの後、ぎっくり腰になる確率が増えた。
最近、「マッサージ師さんに、ぎっくり腰にならないような草むしりの体勢を教えてもらったー!」とウキウキしていた夫。
その日の夕方庭で、片足立て膝をついて草を小さく切っていた。いろんな方向に向きを変え、おかしな動きをしている。なんか、オモロイ格好! とニヤニヤして家の中からずっと夫を眺めていた。
それなのに今年のGWはぎっくり腰になり、ほぼ寝ていた夫。
おじいちゃんになっちゃって。って、私もおばあちゃんみたいだけどね!
と二人で横になり笑い合った。
GWをほとんど寝て過ごし、有給休暇も使い安静に寝ていた夫。
久しぶりの通勤に、グキッと腰の具合が酷くならないようにと、私が病気になって購入した赤い杖を会社に持っていくことにした。作業服にちょぴり可愛らしい赤い杖を持つ夫の姿にキュンとした。
帰宅した夫は
「杖持って来てる!」「何その杖?」
と、同僚にざわつかれたらしい。
数年前まで
杖と言えばハリー・ポッターのニワトコの杖だったのに。
エクスペクト・パトローナム!と、家の中で魔法使いになって騒いでいたことが懐かしい。
いや、魔法の杖をもたなくなり私の転倒防止用の赤い杖を持つ、今の夫のことも大好きなのである。

【オプション3 そのたもろもろ】
私は若い頃から白髪が多かった。
だから歳を重ね白髪のことで「わー白髪が生えたっ」と
ショックになることは今更なかった。
夫も数年前からちらほら白髪がではじめたので
「白髪でてきたね」
と言ったら
「うそー!? 嬉しい! 小寿々ちゃんとおそろいだね」
にっこりうきうきしていた。
私も相当夫のことを愛しているのだが
夫も私に負けずに私を愛してくれている。
本当にイタリア人に負けないほどの愛情表現を毎日くださる。アモーレよりも強い愛を26年間、有り難くいただいている。

歳を重ねても、
めちゃくちゃ若々しい人もいるし、
美魔女の人もいるし、ムキムキの方もいるし、
イケオジだっているし、
ナチュラルな人もいるから、自分の好きな歳の重ね方をすればいい。
今の世の中多様性ですから。

私は歳を重ねても
若々しい。ことを重視していない。特に望んでいない。
ただ年相応で、そして清潔でありたいと思う。
年齢にも、あらがわない。
ほっぺたがぷくぷくたるんできたら
「プクミ」とその部分に名前をつけた。
夫の二重顎には
「タルオ」とつけた。

「プクミ」&「タルオ」

キラキラネームみたいではないか。
と言うか、お笑い芸人のコンビみたいでもある。
「今日もタルオ元気そう!」
そう言って夫の二重顎を触り挨拶をしている。

噂で聞いていたアレアレ星人にもなってきた。
何かって言うと、
「アレ、アレだよ」
「アレってなによ?」
「アレなんだよ~!」
二人でわけがわからなくて大騒ぎだ。結局わからなくて数日後
「アレさぁ、コレだった」
アレがコレになって解決したりする。アレアレからコレコレになっただけ。

そんな風に歳をとる、歳を重ねた自分の変化を
「なんだコレーー!!」っと楽しんでいる。
若い頃の、いつでも戦ったる!といった
ありあまるパワーは消え去り
いつでも
なるようになるのさケセラセラ~♪に変化した。
誰にでもよい顔していたあの頃から
数人の好きな人との時間を大切にするようになった。

歳をとると価値がないように言う人もいる。
歳をとるのは誰だって初めてで、
未知の世界は怖いよね、そう思う。

でも、歳をとると
何を言われても何があっても
さっさっとデリート、消去、忘れる力が半端なくつくよ。
「えっと、なんだっけ?」って。
毎日、なんだっけ?のオンパレードだよ。
なんて素晴らしいオプションだろうか。
あと、オモロイネタがものすごく増えた。
大好きな人と一緒に歳を重ねていくって面白いなって思う。
経験値は増えて、考え方もいろいろ学ぶけれど、
歳を重ねても、根本的な根っこの部分は全然変わらないことも
知った。

あれこれと体が言うこと聞かなくなって
オプションは増えていくけれど
心は軽くサッパリしている。

先日SNSで夫への思いを書いた。

「夫がさ、老眼鏡をして
さらに虫眼鏡を使ってスマホを見てた!
「どんだけ見えないの?」って笑ったよ
でもって
「私も老眼鏡しないと見えない時ある」
って言ったら
「一緒に歳を重ねることができて嬉しいね。幸せだね」
と夫に言われた。
ほんと、そう思う。
夫と二人で
身体ヨボヨボー!
お互いに年とったね、とか言いながら
大好きな人のそばで笑って
一緒に歳を重ねて
生きていけるって幸せだよ。
歳を重ねた夫も大好きだ」

SNSで夫への気持ちを書いたところ
全然知らない人からコメントをいただき驚いた。

老眼鏡&虫眼鏡の証拠の写真。

「たまらない!こんな幸せ虫眼鏡使っても見つけられない!!」と、センスのいいコメントをいただき恐縮してしまった。

きっとみんな楽しく歳を重ねたいんだよ。
だから人生の先輩が肩肘張らずに、
自然体で過ごしている姿にホッとしてしまうのかもしれない。
私もその一人だし。
歳をとったらさ、もういいじゃん。って
軽やかに生きたい。
前世とか来世とか、そうじゃなくて
今の自分は今世で一度きりだから。
好きなことしたり、たくさん笑って、
歳を重ねても楽しみたい。
若い頃のように無理がきかなくなった体に、
今まで本当にありがとう、と思いを伝え
これからは心地よく楽しいことをして
一緒に過ごせるといいなと伝えたい。

子供の頃、チャーミーグリーンという洗剤のCMで老夫婦が仲良く手をつないでいた。
あんな風に仲良く一緒に歳を重ねてくれる人がいたらいいな。
そう思っていた。
今の私の隣には、にっこりと笑いながら一緒に歳を重ねてくれる夫がそばにいる。
いつだって手をつないで歩いてくれる。
たくさん喧嘩して、泣いたり、怒ったり、笑ったり、感動したり、
嬉しかったり、多くの時間を夫と過ごしてきた。
私が病気になっても、夫は今まで以上に優しく愛情をくれた。
本当に有り難く幸せな気持ちでいっぱいだ。
そして、夫からはいつまでも可愛い人と思われていたい。
歳を重ねても乙女心は変わらないんだなぁ。
そんな気持ちも発見できた。

歳を重ねた今も、知らないことは沢山あって、いつも驚きと発見の毎日よ。
でもって、すんごくしんどかったつらかったことも、笑い話になっている。
よくがんばった自分!と素直に思えるのも歳を重ねてきたご褒美じゃないのかな。

若い人の良いお手本になれる気はしないが、
面白おかしくこれからも生きていきたい。
そもそも、生きているから、
歳をとれるんだよね。
有り難いねぇ、と感謝することもどんどん増えていく。
このさき、どんな風に楽しんでいけるかな? 
若い頃とは違う楽しみ方を模索しながら
ワクワク毎日を過ごしていきたい。
そしてまだまだいろんな人と出会って刺激を受けながら
成長していきたいと思っているのです。



最後まで読んでいただき
ありがとうございます。

心から感謝の気持ちを込めて。

横山小寿々


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