アメリカで話題のCROとは?B2B営業のカンファレンス『Sales 3.0』を視察してきました
少し前になるのですが、2023年9月7~8日にラスベガスで開催されたB2B営業向けのカンファレンス『Sales 3.0』の参加記録をご紹介していきたいと思います。
今回はこのカンファレンスの概要と、会場の雰囲気、そして多くの講演で共通して話されていた主なトレンドについてご紹介します。『Sales 3.0』がどんなものだったのか、早速見ていきましょう。
会場はラスベガス郊外のリゾートホテル
カンファレンスの会場はラスベガスの郊外にあるヘンダーソン市のホテル「グリーンバレーランチ・リゾート」でした。
まさにリゾートホテルといったたたずまい。このホテル内のメインホールで講演が行われました。
モダンというよりもレトロで重厚な雰囲気の会場です。建物についての紹介はこの辺にして、肝心のカンファレンスの概要に移ります。
2023年度のタイトル「CRO Summit」に込められたメッセージ
『Sales 3.0』の2023年度のタイトルは「CRO Summit」。ここでいうCROは、CEOやCOOなどのようにCXO(XX最高責任者)という肩書の一種。略さずに書くとChief Revenue Officer(収益最高責任者)ということになります。この見慣れないCROという肩書ですが、営業やマーケティング、カスタマーサクセスなどの売上を直接創出する部門をまとめて統括する人のことを指します。
2020年のトライツブログで「営業‐マーケティング連携の特効薬となるか?今話題の『RevOps』」という記事を書きましたが、CROはここでご紹介した「マーケティング/インサイドセールス/フィールドセールス/カスタマーサクセスと分業化されたマーケティングおよび営業の業務や組織を、共通の目標である『収益(Revenue)』のもとに連携・統合させよう」という考え方そのもの。
マーケティングや営業、カスタマーサクセスといった部署に分割されタコツボ化してしまった組織を連携・統合することが現在必要だ、というメッセージがこの「CRO Summit」というタイトルに込められているのです。
少人数をターゲットにしたコンパクトでシンプルな会場デザイン
このような企画ですので、参加者のターゲットはかなり絞られます。講演の中で参加者の役割について手を挙げて回答する場面があったのですが、その時の様子だと営業担当者は1~2割ほど。多いのは営業マネージャーやリーダー、そして営業組織の設計や育成、パフォーマンス管理などの業務を担う、日本で言うところの企画部門の方が多くの割合を占めていました。
そのため、先ほどの写真でもお分かりのように会場はこじんまりとしていて、参加者は120~150人ほど。会場の横にある協賛企業の展示ブース兼ネットワーキングエリアで提供される食事も、バリエーション豊かでしたが至ってコンパクト。
以前訪れた1,000人以上が参加したイベントにあった、ド派手なオープニングセレモニーもなく、会場内を練り歩くマスコットキャラクターもおらず、演出や空間デザインはシンプルだったように感じました。
このような雰囲気の中、2日間で合計23もの講演をたっぷりと聞いてきました。多くの講演で共通して語られていた、主なトレンドを3つご紹介します。
主なトレンド①「SalesからRevenueへ」
1つめのトレンドは、CRO Summitで触れたように「SalesからRevenueへ」というものです。営業やマーケティングといった役割の中だけで仕事をするのではなく、「営業という役割から今すぐ飛び出して」(Roderick Jefferson “Transition From Sales Enablement to Revenue Enablement”)、より包括的に戦略、プロセス、KPI、育成、情報プラットフォームといったものを再構築しよう、というメッセージが多くの講演で熱く語られていました。
主なトレンド②「AI活用」
2つめのトレンドは「AI活用」です。AIによってマーケティングや営業活動の一部がどんどん自動化されてきている現在の様子を反映し、AIを搭載したツールを開発している企業のトップも講演を行っていました。「AIはもう未来じゃない。今ここにある」(Hang Black “Building a Revenue Leadership Team to Meet Tomorrow’s Buyer Today”)という言葉のとおり、さまざまな活用状況を見ることができました。詳細は今後のトライツブログでご紹介する予定です。
会場でのAI活用事例「Sybillで講演録を自動で書き起こし」
そしてAIは、私を含めてこのカンファレンスの参加者全員の体験を大きく変えていました。今回導入されていたのがSybillという音声自動書き起こしAIツール。講演の内容を録画し、かつほぼリアルタイムで一言一句を書き起こして、最後には要約を作ってくれるという優れもの。画面は以下のようになっています。
左上に動画があり、その下にどの時間にだれが話していたかを表すバーがあります。そして右側にはこの講演のサマリーが表示されているので、拡大して見てみましょう。
このように「Overview(概要)」「Introduction(導入)」「Key Takeaways(重要ポイント)」がまとめられています。右上にある「Transcript(書き起こし)」タブをクリックすると、以下のように話者別の逐語録を見ることができます。
Sybillが導入されていなかったこれまでのカンファレンスでは、動画データが後日公開されるのが関の山。ここまで詳細に逐語録を書き起こしてくれたり、ましてやサマリーを作ってくれるなんてサービスはありませんでした。まさにこの会場の中で「AIはもう未来じゃない。今ここにある」を体験することができました。
主なトレンド③「顧客中心営業は今や当たり前」
そして最後にご紹介するトレンドは、「顧客中心営業は今や当たり前」。ほぼほとんどの講演で「Customer-Centric Selling」「Buyer-Centric Selling」という言葉が使われており、根性と人情で顧客のキーパーソンを口説き落とすようないにしえの営業についての話は一切出てきません。
顧客の購買プロセスに、それぞれの場面での顧客の体験価値を加えたコンセプトとして「バイヤー・ジャーニー(Buyer’s Journey)」というものがあります。このコンセプトを使った「すべてはバイヤー・ジャーニーに始まり、バイヤー・ジャーニーに終わる」(Roderick Jefferson “Transition From Sales Enablement to Revenue Enablement”)という決め台詞も出ていました。
また、1つめのトレンドで紹介したCROについての話でも、これからのCROに求められる資質の1つとして、「顧客中心営業という考え方をベースとして、自分たちの事業がどのように収益を得ているかを精緻に理解している」(Wallen Zenna “Building a CRO Ready Organization”)と挙げられるほど。
カンファレンス全体を通して、「顧客中心営業」が現在の営業の基礎となっていることが強調されていました。
次回から講演の詳細をご紹介します
今回は会場の風景や、そこで使われていたSybillというツールの画面を見ながら、『Sales 3.0: CRO Summit』の概要をご紹介しました。次回からは、23の講演の中から特に日本の私たちにも役に立つものを選りすぐって、詳しくご紹介していきます。どうぞご期待ください。