プロダクトロードマップの考え方
一番最初に注意として、たいそうなタイトルを付けていますが、個人的に考えていることをまとめてみようと思って書いたものなので、これが正解でもないし、間違っている可能性もあるというのは理解いただきたいです。
今回はプロダクトと書いたのですが、広告プロダクトという立ち位置で書いてますので、世の中のtoCなどのサービスのプロダクトとは考え方としては異なります。
基本的な考え方
分かりやすく、開発工数とインパクトで区分するとこんな感じになるかなと思います。
①開発工数(小)×インパクト(大)
こんなに都合のいいものはだいたいない。
もしあれば、ロードマップを変えてでもすぐにやるべき。笑
ただし、今まで誰もやってない領域であれば、こういったパターンは意外とあるので常に考え続けることは大事。
②開発工数(大)×インパクト(小)
ここの部分って誰が考えてもやらない方がいいって分かっているけど、なぜかここの開発に力を入れてることが多い。
後述しますが、例えば、競合との意味のない同質化、展開しようのない個社要望の対応など、目先の少ない売上に飛びついて失敗するパターンがだいたいこれ。
③開発工数(小)×インパクト(小)
積上思考で考えてしまう人はここばかりやることに陥りやすい。
もちろん、開発する内容の多くがここになるというのはあるけど、ここ中心に考え始めるとプロダクトとして大きく伸ばすことが出来ない。
せいぜい105〜110%成長くらいしか望めないけど、「現実的」なところを考える人はここばかりしてしまう。(事業としてそれでいいなら問題ないけど)
④開発工数(大)×インパクト(大)
ここはもっとも差別化要素になるので、やらないと分かっているけど、やれてない人がほとんどだと思う。
理由として多いのは「分からなくて外したら嫌だから」がとにかく感覚として多い。明確にそうとは言わないけど、もっともらしい理由をつけて先送りにしたり、勇気を出して踏み出さない。プロダクトマネージャーや事業責任者で腹括ってる人は、ここの大事さは理解した方がいい。
個人的にリソースを割り振るのがいいかと思っているのは、事業のフェーズには寄るけど、これくらいがいいんじゃないかなと思っています。
①開発工数(小)×インパクト(大)
これはあるならすぐやる。でいいと思ってます。
ずっと考え続けた結果、見つかった場合はすぐにやらないと意味がない。
②開発工数(大)×インパクト(小)
本当は一切やりたくないけど、会社として対応しないといけなかったり、何も分かってない偉い人が大事だと勘違いして推し進めてくる場合でやらざるをえない場合があるので一応。笑
本当は自分の上長とか巻き込んで、ちゃんと議論して解決に持っていって欲しいけど。
③開発工数(小)×インパクト(小)
②と③で8〜90%くらいを占めてる会社が割と多い気がするけど、本来的にはこれくらいのバランスがちょうどいいんじゃないかなと。足元は半分くらいのリソースで固めつつ、自社のサービスの差別化を推し進めるのがプロダクトとしてはあるべき姿じゃないかとは思ってます。
④開発工数(大)×インパクト(大)
このフェーズはずるいんですが、2パターンに分類させてもらってます。笑
特に新しい領域(差別化)は、手応えを得れてるパターンと、恐らくこうじゃないかというパターンの2つに別れる。
特に恐らく大きく伸ばせるのパターンは、開発を出来る限り最小限で済ませて、小さく修正しながら、進める方がいい。最初からちゃんと作りたがる人が本当に多いんだけど、それって本当にいるんだっけ?みたいな形で、とにかく削ぎ落として最小限でスタートするのがいい。(極論、管理画面とかなくていい。笑)
あとはコンコルド効果にならないように、ダメだった時などの引き際はちゃんとジャッジできるように客観視できるように注意する必要がある。
コンコルド効果元は超音速旅客機コンコルドの商業的失敗にまつわる話から由来する言葉。簡単に言えば、「今まで投資したもの(金銭、時間、努力・苦労、etc)が無駄になるからと、そのまま続けても損失にしかならないのが解っているのにやめたくてもやめられない状態」を指す。
ここまでを踏まえた上で、個人的に考えるやってはいけない(注意しないとこける確率が高い)ものを書こうと思います
やってはいけないこと(うまくいかない確率が高いもの)
個人的にほんとにうまくいった確率が圧倒的に低いものを並べてみる。
たぶん、これでやることを決めてしまってるPMや事業責任者とかの人は凄くセンスがないと思う。笑
1.星取り表で開発すべきものを決める
こんな感じで並べて、機能落ちしているものをとりあえず埋めていこうとする人は、本当にプロダクトとして敗北への差別化戦略を走っていると思った方がいい。
「それが致命的な差になっている」というものは、もちろんやらないといけないけど、とりあえず並べてみて揃えてみようなんてやり方は一番になることが出来ない。
これをやりたがる人の特徴は
・何も分からないから、比較できるものがあると安心
・自分で決めて失敗した時に責任を取りたくない
・考えるのめんどくさいから真似しとけ
当たり前だけど、同じことをしていても一番になれないし、ずっと差別化出来ない。当然、競合は追い付こうとしている間に、さらに先に進んでいるんだから、そこを理解してやるものを決めないといけない。
経営陣が分かりやすいから、こういうの使いたがるというのはあるあるだけど、それでもプロダクトに責任を持っているのであれば、ちゃんと自分で考え、自分で決定しないといけない。
2.個社や営業からのリクエスト、要望を中心に決める
これは今までの経験上、本当にうまくいったことはない。
大前提として、「時間軸が違う」というのは意識すべきだと思う。
営業は、売上責任があり、代理店や広告主に向き合っているし、現状や足元の課題について一番把握している。
プロダクトは、プロダクトに責任があり、企画/開発に向き合って、半年や1年先を見て動き続けていないといけない。
ヒアリングや要望などは、多くの場合は「今」困っていることに対して出てくる。そして、開発には時間がかかるということを理解した上で対応すべき。「今」必要な機能は、「今後」必要な機能ではないかもしれないということ。
「今」困っていることを解決しても、3ヶ月後にはまた別のことで困ってくるのだから、本当に解決すべき課題かどうかは見極めないといけない。特に、あったらいいなという機能は、だいたいの場合なくてもいい機能ということ。
一緒に「今」困ってることを解決するのではなく、少し先の未来を見てモノを創って、営業の武器を創ってあげないと、ずっと足元でお互いが困り続け、疲弊し続けることになるというリスクは考えて意思決定すべき。
3.安易な可視化はしない
これは凄く賛否が別れる例えだけど、来店計測なんてまさにそう。
参考指標として見えるに越したことはない。だけど、ここもしっかりと考えていないと、その来店単価の効率化を求め始めると破綻する。
凄く雑に分けると、こんな感じになると思うけど、CPVを安くしようとすればするほど、常連客にしか広告が当たらないなんてことも生まれる。
もちろん、運用者が「きちんとKPIを設計して」「きちんと運用をして」「きちんとレポーティングができれば」問題はないんだけど、表面的な数字だけを追うと、CPVはめちゃめちゃ安いんだけど、全然来客数や店舗の売上が伸びてないみたいなことも起きてしまう。
将来的には来店計測もすべきではあると思っているけど、安易に見えた方がいい、だけで進めても意味はない。
あと個人的に最も価値がない指標だと思っているビュースルーコンバージョンも。笑
あれをやった方がいいって言ってる人は本当に自社の数値水増しの自社利益以外にマーケットに何の正しい価値を伝えられるのか、是非教えて欲しいなと思う。笑
プロダクトの差別化戦略の考え方**
これは人によって考え方の違いが大きい箇所なので、これが正解という訳ではないけど、個人的にはこれが近しいんじゃないかとは思ってる。
1.勝率60%
これは少し感覚的な状態だけど、これをやれば7〜80%うまくいくって思った時にはだいたい遅い。なぜなら、その確信を得る頃には競合がうまくいっていたり、参考になるようなものが既にあったりする。もちろんそこからでもうまくいくことはあるんだけど、先行者メリットがない分、プロダクトの質で勝つか、コストがかかるけどパワープレイでひっくり返すかしかないので、感覚的にはその勝率の時は参入が少し遅いくらい。(もちろんやらないよりはマシだけど)
逆に4〜50%の勝算でいくのも少し違う。この場合は、ややギャンブル的な要素が入っているので、何らかが足りていない状態。顧客のニーズがそこまで大きくないのか、マーケットの流れがきていないのか、凄く感覚的な話だけど4〜50%の勝算で突っ込んでうまくいったことは個人的には余りない。
なので、抽象的ではあるけど、個人的には勝率60%あるかどうかを凄く意識している。このタイミングでいくと、凄く大きな勝ちに繋がる。競合が参入しようとしても自分が先に走っているというのは、後発が追いつくまでの間にプロダクトのクオリティを上げることもできるし、更なる差別化を進めることもできる。
2.マーケットの規模があるかどうか
意外とこの視点も抜けがちな人が多いと個人的には思う。何か自分のアイデアに盲目的になった時こそ、その機能って本当にニーズあるんだっけ?ということを意識した方がいい。
・この機能があったら〇〇万の受注くれるって言ってます!
・同じ業種でも展開できるので、インパクトは大きいです!
こう言ってる機能なんて、だいたいインパクトない。笑
感覚的には99%インパクトがない。こういったものってさっきのやってはいけないものでも書いたけど、個社の要望から生まれるものはマーケットやプロダクトにインパクトを与えるものがほとんどない。全くないとは言わないけど、自社視点かマーケット視点でいうと、圧倒的に全社で考えたものが多いから。
プロダクトとしてしっかりと考えないといけないのは
・マーケットのニーズはそこにあるのか
・どうやってクライアントの事業を伸ばすのか
・継続性はあるのか(単発施策にならないか)
・(少なくとも業種/業界の)課題解決ができているのか
くらいは最低限考えないと、マーケットの規模は出ない。
3.自社だからやれる武器はあるか
ここが最も重要だけど、自社じゃないとダメなものがそこに存在するかは意識すべきポイントだと思う。
他でも簡単に同じことができるということは、参入障壁が低いということなので、ブルーオーシャンだと思っていても、すぐにそうじゃなくなってしまう。もっといえば、開発力/資金力/営業力を持った競合だと、何ならあっという間にひっくり返されてしまうかもしれない。
自社でしか持っていない面があるのか、手法があるのか、機能があるのか、は凄く意識すべき。逆にいうと、ここが凄くハードルが高いものだとすぐに参入もできないし、その間に市場を抑えることができる可能性を持つので、徹底的にこだわるべき。
残念な考え方にも書いたけど
星どり表や要望シートでプロダクトを決めている人たちには出来ない考え方なので、これは大きく差別化できるポイントではあると思う。
プロダクトマネージャーとして意識して欲しいこと**
僕はかなりビジネスに寄っているタイプで、いろんなタイプがあるのはわかっているけど、これから書くことは企画などに携わるのであれば、凄く意識はして欲しいなと思う。
自分がいる意味があるのか、何の為に存在するのか
多くの場合の組織やPMの役割がこんな感じになっていると思う。
もちろんProject ManagerとProduct Managerで役割が違うけど
Product Managerを名乗る、志すのであれば、自分がいる意味をちゃんと意識して欲しいとは思う。
要望や競合の調査から求める開発ロードマップなんて、はっきりいってPMがいる必要はないし、それで進行しているのであれば、あなた何の為にいるんでしたっけ?って感じ。(Project Managementは別です)
Product Managerであるのであれば
・営業よりもマーケット/顧客ニーズを理解する
・要望に対して、なぜ必要か/不要かを話せる
・必要要件を最低限にまとめれる
・自分の頭で考え、判断をする
は凄く意識して、取り組んで欲しいなと思う。
よく聞く「営業の言われたものをつくったけど、全然使われませんでした」や「営業が売ってきてくれないから機能が役に立ってません」的なものって、その最終ジャッジをしたのは自分なのに、他責にしてることを恥じた方がいい。
本当に必要かどうか、やる意味があるのか、その優先順位でいいのか、は全てPMの責任において判断すべきで、それを「営業が〜」とかいってる時点で終わってる。厳しい言い方をすればPMやめた方がいい。
本当に自分がなぜいるのか、ただの整理屋さんになってないか、間に立つだけのいてもいなくてもいいような存在になっていないか、は凄く重要で、プロダクトの差別化ができるのは、(優秀な営業や開発する人がいる前提で)PMの力量が全てと言っても過言ではないし、PM次第で、凡庸なつまんないプロダクトになる可能性もある。だからこそ、ヒリヒリもするし、面白くもある。
実力なんて
熱量×知識×時間
でしかないと思っているので、自分次第でいくらでも素晴らしいものをつくっていけると思っている。
・自分で考える
・知識を得る
・判断をする
・責任を持つ
っていずれも苦しいし、辛いこともあるし、もしかしたら周りがみんな否定的になる可能性もあるけど、それでもそれを超えて素晴らしいものが出来あがった瞬間のただ一瞬のために頑張る価値はあると思う。
日本から世界に、というのは個人的に凄く大事にしている考えなので、世界でも戦える、勝てるものは必ずつくれると思うので頑張っていきましょう。
色々とプロダクトについて書いていたら、長文になってしまったけど、以上となります。本当はあと5000文字ありましたが、一旦今回はこれくらいの文字数まで減らしたので、後日気が向いたら載せます。笑
賛否両論あると思うので、言いたいことがある人は一緒に飲みに行って語りましょう。お誘い待ってます。笑