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#エッセイ りんご

 ぼくは昔から文章を書くのがとにかく下手くそで、その下手くそを克服するにはとにかく書くしかなくて、だったらせっかくnoteにアカウントがわけだし、ときどきでもいいからなにか記事を書くべきではないかと、妻と一緒にりんごを食べているときに思い立った。
 そうして書いてみたのが、以下のエッセイふうのなにかである。

 りんごは地味な果物だと思う。赤、緑、黄と色のバリエーションは存外に豊富だが、どの色にも派手さがなく、他の果物と比べるとどうしても見劣りしてしまう。桃やイチゴなどが相手だと勝負にすらならないし、かろうじて勝負になるとすれば柿やミカンあたりだろうか――。
 しかし、かろうじて勝負にはなっても、りんごが勝利することはないだろう。りんご農家の方々からお叱りを受けそだが、りんごとはそういうやつである。

 そんな地味な果物であるりんごは、しかし栄養価は相当高く、スーパーフードと言われることもあるそうだ。イギリスにはその栄養価の高さを表す、こういったことわざまで存在している。
 An apple a day keeps the doctor away.
 日本語に訳せば「1日1個のりんごで医者いらず」といった意味だ。栄養満点のりんごを毎日食べてさえおけば、医者の世話にならずに済むというわけだ。医者からしてみれば、商売あがったりである。

 中国やスペインにも同じような意味のことわざがあり、りんごのスーパーフードぶりは海外でもよく知られているようだ。外見が地味なのは否めないが、中身はなかなか凄いらしい。
 ちなみに、りんごには以下のような栄養素がたっぷり含まれている。不要な塩分を体外に排出してくれるカリウム、若々しい肌に必要不可欠なビタミンC、強い抗酸化作用のあるプロシアニジン。
 詳しいことはよくわからないが、きっと凄い栄養素なのだろう。知らんけど。
 
 ぼくはりんごを食べるとき、皮をむかずに丸ごといく。子供の頃からそうで、皮ごと食べたときの歯応えが好きなのだ。皮に歯を立てると軽い抵抗があり、さらに歯を押しこんでいくと、やがてプチっと皮が破れる。すると、皮の抵抗を受けなくなった歯が、シャクっと柔らかい実に突き刺さる。その瞬間の破壊的な歯応えがなんとも言えず気持ちいい。
 皮ごと食べられるぶどうなどでも、同じような歯応えを得られるが、あくまで同じような感覚だ。まったく同じではない。皮ごといくりんごの歯応えは絶妙で、意外にも唯一無二だったりする。

 妻もりんごを食べるときは皮ごといくが、ぼくのように歯応えが好きとか、そういう理由ではない。皮をむくのが面倒くさいという、いかにも人間らしい理由で皮ごといく。

 ところで、りんごひとつの重さはおよそ250グラムらしく、心臓もだいだいそのくらいの重さだという。心臓の重さを簡単に説明するさいに、りんご一個ぶんほどだと例えることもあるそうだ。
 心臓は命の要と言ってもいい臓器だ。りんご一個ぶんの重さしかないというのに、命を維持してくれているとは、なんと頼もしい臓器なのだろうか。
 そう感心する一方で、少々危うくも思う。りんご一個ぶんの重さの臓器が命の要であれば、命を握り潰すのはまあまあ簡単なのかもしれない。
 などと意味深なことを書いてみたが、これといった特別な意味はない。意味深ふうなことを書いて、イキってみたかっただけである。

 さて、ここまで無駄に長く書いてきたのだが、この話にどうオチをつければいいのか、さっぱりわからない。さっぱりわからないので、無駄に長くなってしまった。
 いいオチがうまく浮かばないのも、文書の下手さに起因しているのだろう。しかし、下手だと嘆いてばかりいても生産性がないので、とりあえずりんごを皮ごと食べて消費してみる。

 皮の軽い抵抗のあとに歯がシャクっと実に刺さり、甘酸っぱい味が口の中に広がっていく。だからといって、マンゴーのような濃厚な甘さはなく、レモンのような鋭い酸味も感じない。甘さも酸っぱさも絶妙に微妙だ。
 世界が認めるスーパーフードだというのに、見た目に加えて味までもが地味な果物である。
 まあしかし、「日陰の梨」になるよりかはマシかもしれない。



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烏目浩輔
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