公立中学校で「卒業式のオンライン配信」を考えてみる (2)
(前回のあらすじ)
大学院での生活が自粛となり,既に一斉休校の始まった地元 所属校に戻った私は,北海道奥尻高等学校の実践をヒントに「卒業式のオンライン配信」の具体的な検討を始めた。
先行実践から得たヒント
Facebookで流れてきた北海道奥尻高等学校の実践にリアクションしたのは,3月2日(月)のことでした。
保護者の別室参加,在校生の自宅参加に,教育ICT関連のコミュニティ内で話題になっていた ビデオ会議ツール Zoom を活用していたのが一番の注目のポイントでした。
学校行事における「卒業式」は,卒業生と在校生,両者の関係性に大きな節目をもたらすイベントだと,私は考えます。
(私自身が経験的に感じていることですが,卒業式当日の堂々とした卒業生の姿は,在校生に明らかな影響を与えます。卒業式翌日には必ず在校生の成長が感じられるのです)
北海道奥尻高等学校の実践でも,この卒業生と在校生の関係性にフォーカスすると Zoom を通した在校生の活躍が目を惹きますし,スクリーンに映る参加者の姿が,励ましやエールを卒業生に届けています。
また,保護者の参加についても,Zoom の活用により,開催時刻や参加場所の制約にとらわれず,柔軟に対応できているのも魅力でした。
企業の後押し
今回,私自身が「卒業式のオンライン配信」を具体的に検討できたのは,経済産業省 教育産業室のプログラム「#学びを止めない未来の教室」とのタイアップで,Zoom がビデオ会議の大規模開催を含むプランの無償提供を開始したことも強い後押しとなりました。
[新型コロナウィルスによる全校休校 マナトメサポートプログラム]
Zoomは世界で最も利用されている遠隔会議、遠隔セミナー、遠隔授業向けクラウドビデオ会議サービスです。
この度、日本国内教育関係者様へサービス無償提供致します。1会議最大300名まで時間制限なし回数制限なしでご利用可能。(通常は3名以上100名以下のグループミーティングは40分まで)その他、最大500名規模の遠隔セミナー向けサービスも提供可能です。
在籍校の中学1・2年生は合計約160名,会場に駆け付けられない卒業生の保護者のオンライン参加も考えると,参加者200名程度。
受付時間を含めた1時間強の式が想定されました。
このような条件を満たして,卒業式のオンライン開催を実現するには,「マナトメサポートプログラム」で無償提供されるライセンスが必須となりました。
早速3月6日(金)の未明に Zoom (Zoom Video Communications 社)に問い合わせたところ,当日朝イチの素早い対応を頂き,大規模開催のハードルはクリアしました。
在籍校への提案
Zoom の大規模開催のライセンスを確保し,アイディアの第一案を考えたところで,次なるハードルは在籍校への提案でした。
実現までの時間が限られていることと,現場の先生たちに向けて経験知の多くない話題を切り出すには,それなりに勇気が入りました(笑)
アイディアの第一案を切り出すにも,Zoom の 操作感や詳細な設定項目等については,私自身も未知の部分がありました。
しかし,実現後の(卒業式終了後)のビジョンだけは明確にして,提案しました。
「卒業式のオンライン配信」実現後のビジョン
・卒業生にとってさびしい卒業式にしない
・在校生の気持ちを卒業生に届ける
・卒業生の家族がより多く参加できるようにする
(仕事中の家族や,遠方のじいちゃん・ばあちゃんにも)
・学校にある機材やICTの利点を最大限活用する
結果的に,在籍校の校長をはじめとして現場の先生たちの理解を得て,実現に向かってすぐに動き出すことができました。
(つづく)