公立中学校で「卒業式のオンライン配信」を考えてみる (1)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う休校要請から,その後の出来事の記録を兼ねて書きます。
2020年2月27日(木)夕方の政府 新型コロナウイルス感染症対策本部の発表以降,突然の一斉休校に対処するため,学校が大きく揺れています。
ニュース記事やTV報道で,唐突に「学級の解散」を告げられた子供の悲痛な表情を見る度に,9年前の東日本大震災の当時の記憶が重なり,私は胸が締め付けられる思いをしていました。
(ちなみに,東日本大震災 当時は,福島県いわき市に勤めていた)
休校要請 直後の学校現場は
現場の様子が気に掛かるものの,大学院で実情が見えていない私は,在籍校に連絡をとり,翌週には学校へ出向いていました。
・2/27(木):全国の小学校・中学校・高等学校へ一斉休校の要請
・2/28(金):別件の連絡とともに,在籍校への訪問を打診
・3/4(水):在籍校を訪問(本年度の研究成果報告を兼ねて)
訪問日は,既に学校に子供の姿はありませんでした。
在籍の中学校では,前日3日(火)までに「卒業前の最後の学級活動」「県立高校入試の事前指導」が行われ,中学1,2年生においても「学級解散前の最後の学級活動」が慌ただしく行われました。
また,本年度で退職する先生へ向けて,兼ねてから生徒会本部が準備してきた「先生の卒業式」も,急遽 繰り上げて行われたそうです。
(休校初日とともに県立入試が行われ,年度末は,修了式も離任式も中止)
一斉休校の影響を心理学的な側面から考察,対策を検討
畳み掛けるよう3学期の強制終了に追い込まれ,級友や恩師との突然の別れを経験した子供の心には,どのような影響があるでしょうか。
現場の状況を知り,「何かできることがあれば」と在籍校の校長先生に申告して学校に通い始めた5日(木)に,私は次のような考察をしました。
「愛着人物との分離に伴う不安や恐怖,それに愛着対象喪失によって起きる悲哀の過程を精神病理学的に追究*」した心理学者・精神分析学者のボウルビィの研究等を背景に,心理学用語において分離不安障害とは,「愛着のある人物や場所から離れることに対し不安を感じること**」(Wikipedia)と定義されている。
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部による一斉臨時休校の要請は,児童生徒に長い春休みをもたらした一方で,唐突な学級解散や規模を縮小した卒業式の実施を余儀なくさせている。中学生においては,親と並び,先輩・後輩を含む友人の存在が,愛着の対象として重要な役割を果たしていると考えられる。このため,今回のような出来事は,卒業生にとってだけでなく,在校生にとっても愛着対象から唐突に引き離される事態を招かせており,それを起因とする喪失感等を招く可能性が考えられる。
この懸念を克服するには,学校生活の大きな節目となる卒業証書授与式における経験を,卒業生と在校生が共有する機会を確保し,分離に伴う不安等を軽減する方策を検討したい。
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*中野明德(2017)ジョン・ボウルビィの愛着理論―その生成過程と現代的意義―. 別府大学大学院紀要 19, 49-67
** https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%86%E9%9B%A2%E4%B8%8D%E5%AE%89%E9%9A%9C%E5%AE%B3 (分離不安障害 - Wikipedia)
ここで対策のヒントにしたのは,北海道奥尻高等学校の実践でした。
(つづく)