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GIGAスクール構想の鍵は,「合意形成」と「教育観の問い直し」

先日の学修成果発表会では,学校でのICT活用の推進における「組織的な合意形成」,「教育観のパラダイム転換」の必要性を指摘したところでした。

このことに関連した内容を松田さんの記事に見つけ,触発されて Facebook に投稿したのですが,その投稿を再構成して考えを掘り下げてみました。

世代間のギャップ

合意形成が必要だということは,裏を返すと,世代間に「課題意識のギャップ」が大きいことが考えられます。

上の記事で松田さんがおっしゃるように,Mt.GIGAの頂きを目指す時の課題には,管理職とそれ以外に,大きな溝があります。

それは,各世代が多感な10代だった頃に,どのようなインターネット環境に触れていたかを考えると見えてきます…

【50代 (40年前)】
・JUNETの運用開始 (1984) ※学術機関のみの利用
・NTTがISDNの商用開始 (1988)

【40代 (30年前)】
「インターネット」ネイティブ世代
・郵政省がインターネットの商用認可を開始 (1993)
・「Windows 95」の発表、ISPの低廉化 (1995)
・「Yahoo! Japan」のサービス開始 (1996)

【30代 (20年前)】
「iモード・定額通信・SNS」ネイティブ世代
・「iモード」サービス開始 (1999)
・「2ちゃんねる」開設 (1999)
・「Bフレッツ」提供開始 (2001)
・「パケ・ホーダイ」サービス開始 (2004)
・「mixi」サービス開始 (2004)
・「ニコニコ動画」サービス開始 (2006)

【20代 (10年前)】
「高速移動通信・スマホ」ネイティブ世代
・「YouTube」日本語版公開 (2007)
・「Twitter」日本語版公開 (2008)
・「iPhone 3G」国内発表(2008)
・「UQ WiMAX」提供開始(2009)
・首相官邸などの公的機関までもが積極的にSNSを活用し始める(2011)

参考:「インターネット歴史年表」 https://www.nic.ad.jp/timeline/

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世界のインターネット上のホスト数推移: 1981–2011
[引用] インターネットの歴史 - Wikipedia

情報時代の進展は加速度的に進んできました(そして,今もなお)。

つまり,管理職にあたるベテラン層と,ミドル・若手層とでは,過ごしてきた環境が大きく異なるため,ICT活用に対する課題意識にずれが生じるのは,当然のことでもあるのです。

私の研究では,ICT活用への苦い思い出ストレスをベテラン層が多く感じていることから「硬直マインドセット」に陥ってることを指摘しましたが,こういう背景があることを知ると,さらに納得できます。

ちなみに,50代のベテラン層の先生方にも,ICT活用に関心を持っていたり,開発途上の分野なのだから積極的にチャレンジしてみよう!という「しなやかマインドセット」を持った方もいらっしゃいます。

ギャップを乗り越える合意形成

ま,要は,GIGAスクール構想に及び腰になっている管理職こそ,デジタル・ネイティブの世代との合意形成に臨まなければいけない訳で,それが出来ない学校・自治体は,柔軟な合意形成を図る他の組織に対して「30年分の差」をあけられるということです。

とはいえ,この合意形成が簡単でないことは言うまでもありません。ここで求められるのは,世代間の「対話」で,管理主義を重んじてきた日本の教育システムが避けてきた,難題そのものでもあったりします。

しかし,教育現場において,両者はともに,未来を生きる子どもの姿をイメージしなければなりません。

未来を生きる世代の人たちにとって,必要な資質・能力とは何か,そのために今何ができるのかを「対話」を通して見出し,目的の合意(コンセンサス consensus)を創出しながら,これからの学校教育にあたっていかなければならないのです。

合意形成の方法論については,場面や組織に応じて考えていかなければならないかなと思います。(組織論から学ばないとね)

合意形成に失敗しているGIGAスクール構想の事例

Twitter や Facebook に教師アカウントが当たり前にあるご時世ですから,合意形成の失敗談もよく聞かれます。

例えば
・端末が届いたけど,自治体の運用方針が決まるまで,眠らせている。
・フィルタリングが厳しすぎて,検索結果がろくに表示できない。
・iPad のカメラが禁止され,アプリのインストールが認められていない。
・自治体に持ち帰りの許可を尋ねても,認めない方針だと言われる。
・教育クラウド・アカウントがあるのに,メールが遮断されている。
・端末の個性化が認められない(壁紙の変更,ステッカー貼り)。

こういった事例の問題は,管理職や自治体の一方的な意思決定によるもので,情報時代に必要な合意形成プロセスとは,相反するものです。

このようなトップダウン型の意思決定が通用していたのは,工業生産的な教育システムで成り立っていた「昭和」までだったのですが,いまだにこの型にしがみついている組織は珍しくありません。

皆さんの住む自治体,そこにある学校が,世代間の対話を通じて「2021年以降の未来の教育」を目指しているのか,それとも「昭和の教育」を引きずっていくのか,よ〜く注目していかなければなりません。
(そこに住んでいるだけで,30年の遅れに巻き込まれますからね)

自治体や管理職に求められる役割とは

それは,インフラとしての情報環境を整備することです。
(松田さんのいうインフラ論ルート

つまり,GIGAスクール構想における「ハードウエア」面において,早急な端末調達をすすめ,高速・大容量化のための校内ネットワークの改修を進めることです。

また,「ソフトウエア」の側面については,教育クラウド・アカウントの配布アジャイルの視点に立った規定の運用で,とにかく動き出すことです。

 アジャイル(agile)とは,「すばやい」「迅速な」という意味です。ソフトウェア業界では、かつては詳細まで徹底的に検討し,盤石な設計をし,何ヶ月もかけて大人数で…(略)しかし,変化の速い今の時代には,この方法は適していません。そこで,まずは基本的な機能だけを開発してリリースし,ユーザに使ってもらいながら使い勝手をフィードバックしてもらい,急がれる不具合の修正や,追加機能を順次付け足していくということを繰り返す開発手法を採用するアジャイル開発が一般的になりました。
[引用] 「学校アップデート: 情報化に対応した整備のための手引き」

教育クラウド・アカウントの整備は,端末調達を待つ必要はなく,Google for EducationMicrosoft Education は,無償ですぐに利用できます。

これらはすぐに導入できるものの,利用者が使い慣れないと,利活用が進みません。使い慣れるためにも,教育クラウド・アカウントの早急な整備が必要なのです。

規約や規定は,これまで「上位組織が決めて,下部組織にそれを守らせるものだ」「よく考えて決められたものだから,覆ることはあり得ない」「運用に不都合はない。規定内で行動しないのが悪いのだ」というような,スタンスが基本でした。

しかし,これが情報時代に沿っていないのです。

合意形成に大正解はありません。情報社会の生き延び方について,世界のどこでも,結論は出ていません。そして,これからもその結論が出ることはないでしょう。

私たちは常に最適解を検討し続け,一旦決めたものを,改善の可能性があるならば随時,変化させていける運用をしなければならないのです。

全ての世代で必要な「教育観の問い直し」

デジタル・ネイティブと言える世代にも,課題はあります。

40代より若い世代がみんな未来を見ているかと言うと,そうでもありません。彼らは過去の被教育体験の影響を受けているので,教育に携わる者全員が,マインドセットのあり方や教育観のパラダイム転換についての「自身の立ち位置を問い直す」必要があります。

ここで言う,教育観のパラダイムとは,「工業時代の教育観」と「情報時代の教育観」のマインドセットが大きく異なることを指しているのですが,それはまた今度!

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