スポーツによる人材育成の成果を左右する思考の違いとは?【バックキャスティング思考】
1.はじめに
現状の効率化、改善を軸に活動を考える思考を「フォーキャスティング(Forecasting)思考」と呼び、将来のあるべき姿から逆算してギャップを埋めるように活動を考える思考を「バックキャスティング(Backcasting)思考」と呼ぶそうです。
この2つの思考の違いで、「人材育成の一環としてどのようなスポーツであるべきか」という事について、考えていたことが説明できるなと思ったのでまとめてみることにしました。
Twitterでも書いてみてます。
部活動において、どちらの思考で運営されているかによって学生が得られるものが変わると思います。
2.現代社会に求められる思考
変化の激しい現代において必要とされるのは、柔軟に変化に対応し目的・目標を修正しながら進むことができるバックキャスティング思考です。
ただ、バックキャスティング思考というのは「取り組んでいるフリ」ができないので、とても大変なやり方です。
どういうことかというと、理由は2つあります。
それはバックキャスティング思考においては
①目的を達成するための明確で具体的な目標を定める
②目標とのギャップを可視化して進捗管理する
ことが必須となるからです。以下解説します。
3.バックキャスティング思考が大変な理由
まず、①について、バックキャスティング思考においては、「どのような状態になれば目的を達成できるのか」を明確に定める必要があります。すなわち目的に対する目標の妥当性を問われます。妥当な目標を定めるためには、大量の情報をかき集め目的達成の仮説を立てる、という労力が求められます。
次に、②では、バックキャスティング思考においては目標を立てたところで終わりではなく、活動が目標達成に叶っているかどうか、日々チェックをします。もし計画通りに進んでいないようであれば、目標や活動を修正を重ね、目標達成に向けた活動の記録が残るとともに、目標に到達できていない部分が可視化されるので、成果を誤魔化すことが難しくなります。
このようにバックキャスティング思考で取り組むことは労力がかかり大変でです。
4.それぞれの思考によって得られる経験の違い
ただ、バックキャスティング思考で取り組むことは大変ですが、目的の設定、目標の設定を通して、物事を自分事化することであり、日々が充実するのではないかと思います。
また、得られる学習も目標と活動の振り返りを通すことによってバックキャスティング思考の方が深い学習が得られると考えられます。
フォーキャスティングでは改善や効率化の方法においては学習が得られると思いますが、バックキャスティングのように問いを立て目的・目標設定をする力は育まれ難いからです。
部活動がフォーキャスティングかバックキャスティングかどうかは練習計画の立て方でわかります。
フォーキャスティングではシュート○○本、ダッシュ○○本、フォーメーション練習○○本、というように練習の「量」を軸に計画する傾向があります。
バックキャスティングでは「シュート成功率の高いフォーム」「フリーになれるチーム連動」のように、まずは理想形を理解し、現状の自分との差異を細かくビデオ等で分析した上でその足りない部分を埋めるための練習を行います。理想形を把握するためには多くの情報収集が必要ですし、差異を埋めるための方法を考えるためにもまた多くの情報収集をした上で、練習に反映します。
上記のような違いがあるので、学校での部活動を経験した後、一般企業で働く際、一言に「体育会系人材」といってもフォーキャスティング思考かバックキャスティング思考のどちらでスポーツをやってきたかでパフォーマンスは異なるのではないかと思います。
5.スポーツの価値を高める思考:バックキャスティング思考&プロアクティブ思考
スポーツの価値の中でも大きな部分である「人材育成」ですが、社会の中でより、スポーツが必要とされ、スポーツの価値を高めていくにはバックキャスティング思考のチームを増やしていくこと、だと思います。
また、似たような概念ですが「リアクティブ思考」と「プロアクティブ思考」という違いによっても、部活動における教育効果の差異が出るのではないかと思います。
「リアクティブ」は何か問題が起きたときや、課題が出たとき、指示されたときに、それに反応していく活動。どちらかというと「受動的」の姿勢です。
「プロアクティブ」はほぼバックキャスティング思考と同じですが、自ら目指す所を定め、そのギャップを分析し、ギャップを埋めていく活動。こちらは「能動的」な姿勢です。
繰り返しになりますが、自ら目的達成のための目標設定をするためには責任と覚悟が必要なので、プロアクティブにいくのは大変です。
だけど、バックキャスティング、プロアクティブに生きる方が人生楽しいし、スポーツで学ぶことも多く、社会で必要な力が身に付くのではないかと思います。
6.さいごに
スポーツの価値を高めていくため、本業の学校スポーツ推進でも、ライフワークのアメリカンフットボールでも、バックキャスティング&プロアクティブな活動を増やしていけるように頑張りたいと思います。
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