和英辞典を引く#2
1. 本シリーズの説明
本シリーズ「和英辞典を引く」では、日本語の慣用句を英語ではどのように表すのか、これを和英辞典で調べ記録する。この作業をすることで、日本語の感覚と英語の感覚との共通点や差異を知ることになれば嬉しく思う。また、辞書を引くことは一種の遊びになる、ということ実感したいとも思う。
2. 今回の言葉
★(お)あつらえむき (誂え向き)
用例はどのようなものがあるだろうか。以下を参照されたい。
英和辞典を引く前、<X just as S ordered/hoped>の形が浮かんできたが、実際のところはどうであろうか。和英辞典を引いてみよう。
・一つ目の例文はlikelyで、二つ目のそれは<S be just the thing for X>という形で「あつらえ向きの」が表されている。
・限定用法のlikelyにはあまり馴染みがなかった。「適切な、ふさわしい、格好の」を意味するlikelyである。
他の和英辞典も引いてみよう。
・<S be just right for X>の形で表されている。
・justは副詞で「まさに、ちょうど」を、rightは形容詞で「適切な、ぴったりの」を意味するものだろう。したがって、上の表現を直訳的に見ると、「SはXにとってちょうどぴったりのものである」となる。これはまさに「あつらえ向き」の語釈に合っていると思われる。
もう一つ和英辞典を引いてみよう。
・idealあるいはperfectがあてられている。
・「希望にぴったりあっている」ことを「理想的な」ことあるいは「完璧な」ことと言い換える発想はなかったが、いざ提示されると納得できる。
3. 関連語
★打ってつけ
用例を眺めてみる。
「打ってつけ」の語釈に「誂えた」という語が出てくることから、同語は「おあつらえ向き」と意味を大きく共有していることがわかる。
さて「打ってつけ」を和英辞典で引いてみたが、基本的には「おあつらえ向け」と同じ訳語があてられている。すなわち、idealやperfectやrightなどである。その中で異なる訳語を挙げている辞典があったので次に共有する。
・「X(するの)に向いている」を意味する熟語<be cut out for/to be X>が用いられている。
・同熟語に関して3つの辞典すべてが「通例疑問文・否定文で用いる」としているため、その王道の使用法から外れた例文となっているかもしれない。
今回はこれで終わりとなるが、最後に本記事の作成過程で気づいたことを述べておく。それは以下のことである。個人的に、日本語で慣用句的に使われている言葉を英語に訳そうとすると、無意識的に単語一語ではなくフレーズで発想してしまいがちだが、その慣用句の意味内容を一語で表す——それこそ「おあつらえ向きの」——単語がありうることが今回学べた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?