所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ
こんなタイトルをつけると心配されそうだが。「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ」というのは漫画の引用で、『るろうに剣心』という作品の瀬田宗次郎というキャラクターの台詞。ふと思い出した。
「生きていける」。今回のキャンペーンのキャッチフレーズのようだ。サポートしているNPO団体、ブリッジフォースマイルが、1,000万円のクラウドファンディングを始めた。親を頼れない子どもたちを社会への巣立ちを応援するNPOで、これまでは主に社会的養護の出身者を対象に活動をして来た。
しかし、現実問題、支援を必要とする子どもは社会的養護の枠組みにおさまらなくなって来ている。むしろ、支援と繋がることができず、深刻な苦しみの渦中にいる子どもが多いことは、ニュースを観るだけでわかる通りだ。今回、ブリッジフォースマイルでは支援対象を大きく広げた。子ども若ものの「困っている」「助けて欲しい」という相談に広く門戸を開いた格好だ。
ところがNPO自体が資金面で苦しんでいる。この4月から制度が変わり、これまでやって来たことにお金が出なくなったり、これから新しいことを始めなくてはならないのにお金が必要だったりする。頼られる側のNPOも「困っている」「助けて欲しい」そう言いたい状況でのクラウドファンディングだ。ただ、サポーターの立場で僕がNPOの内情をつぶさに伝えようとしてもしょうがないので、詳細はクラウドファンディングのページを参照していただくこととして、もうちょっと個人的な話をしたいと思う。
突然だが、実家が割と太い。家族仲も割と良い。別に金持ち自慢とか、家族円満自慢をしたいわけではない。ただ個人的に親を頼れない、ということのコンプレックスみたいなものはないし、実感もない。恵まれて来た、と言えばそうだと思う。少なくとも、親ガチャとか、毒親みたいな話とは無縁な人間だと思って来た。
一方で、僕は精神疾患の経験がある。経験があるというか、今も患者であることに代わりはないので、現在進行形である。特に22歳の時と38歳の時に体調を崩し、親に大変迷惑をかけた。入院療養を親に支えてもらった。それがゆえに、もし自分が「親を頼れない」境遇にあったら、と思うと愕然とする。44歳まで生きながらえていられただろうか、とすら思う。
実際、虐待をはじめとする辛く厳しい経験をした若い世代は、その後、精神疾患に苛まれるケースも多いと聞く。生活の困窮、身寄りのなさ、に加えて、精神疾患があるのであれば、とても一人で乗り越えられるようなものではないと思う。勿論、そうした境遇の子が全てではないが、残念ながら、そうした苦しみに置かれている子も少なくない。
「社会で子育て」をすると言う。どういうことかと思う。
先に相談支援が始まったということを書いた。例えば、誰もが知る有名企業で職業体験をしたり、ボランティアの大人と一人暮らしの知恵を学んだり、ブリッジフォースマイルではこれまで子どもが社会に巣立っていくための様々なプログラムを展開して来て、20年の実績がある。それでも相談支援、というのは今回新たに始まったことだ。
NPOにはリソースの限界がある。限られたスタッフ、限られた予算、それを多くのボランティアやサポーター、寄付者、支援企業に支えられて、なんとか回している。支援、と言いつつも、際限ない支援は約束できないし、継続できない。「きめ細かく」とか「とりこぼさない」とか言葉で言うのは簡単だが、一人一人を支えるためにも、可能な限り柔軟なプログラムと支援体制を用意して、それを補っている。
相談支援、というのは平たく言うと、「困っている」「助けて欲しい」という子ども若ものの声に直に対応するということだけれど、予め「準備」がないと信頼できる支援はできない。そういう意味で、子どものニーズに合わせて様々なプログラムを持っているブリッジフォースマイルというNPOは、これまでのノウハウやリソースを対処療法にも活かせるポテンシャルを持っている。
とは言っても、これまで取り組んで来なかった、大きな挑戦であることには違いない。「やる」ということは決まったが、資金が足りない。1,000万円というクラウドファンディングの目標額は、緊急ショートステイの光熱費や家賃、信頼できる伴走支援の充実、これからのために必要な政策提言の目的に使われる予定だ。
ところで、僕はカナエール、それから、コエールという、若もののスピーチのプロジェクトに関わって来た。その時に登壇した子の中に、こう語る子がいた。
「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ」
それは違うと諭せるだろうか。大人が否定する言葉に、実行や実態は伴っているだろうか。道半ば、なんだと思う。ただ、「困っている」「助けて欲しい」という子ども若ものへの相談支援が始まることは、より直接的に、その言葉への回答になるやも知れないと思う。「生きていける!」そう子ども若ものが思える社会を作るためには、今回の取り組みが一過性のものにならず、中長期的に続いていくことが必要だ。
終始、情緒的な話になってしまって恐縮なのだけれど、「子ども支援」と一言で言っても、その際限のなさに途方に暮れる。一朝一夕で解決できるような問題では到底ない。だからこそ、できる限り長く、この活動が続いていかなければならない。続けるためには支援、これまで以上の、これまでより多くの人の支援が必要だ。そのためのクラウドファンディングだ。
クラウドファンディングは今日始まったばかり、これから2ヶ月続くのだけれど、一人でも多くの人にサポートしていただきたいと願っている。明るい話に目を向けていたいが、そうばかり言ってられない現実がある。まずは改めて、自分の気持ちを整理するためにこの文章を書いた。子どもたち若ものたちのために、何かしたいと思っている人の考える材料に少しでもなれば幸い。