生成AI×英語学習の新規事業 「スピフル」開発の舞台裏
こんにちは!
株式会社プログリットでPdM(プロダクトマネージャー)をしています、越野です。
現在PdM4年目で、この会社では、
新規事業の事業企画、プロダクト企画
英語コーチングサービス「プログリット」の学習アプリ、学習管理アプリ、管理画面のPdM
英語学習サブスクサービス「シャドテン」のPdM
を経て、2022年後半より新規事業の「スピフル」のPdM、兼、事業責任者をしています。(詳しい職歴は下記の記事をご覧ください。)
今回は、「スピフル」のリリース(2023/12/19にリリースしました!)を記念して、開発までに拘ったことや、生成AIを用いた新規事業に行き着いた経緯等について、リリースまでの軌跡を振り返りながら記述しようと思います。
前提1: スピフルは、当社初の「アプリ単体」での事業
当社をご存知の方は、「プログリット」=「コーチング」であり、「人」を活用したビジネスのイメージが強いと思います。が、実は、プロダクト開発にも力を入れているんです!
細かい開発体制は割愛しますが、現在プロダクト開発部は総勢15名、エンジニアデザイナー含め、内製の組織で開発を進めています。
今までの「プログリット」「シャドテン」とは異なり、今回の「スピフル」は、当社初の「アプリ単体」での事業です。(今までの2事業は、人のサポートを絡めたサービスでした)
また、「生成AI」をメインで利活用した初の新規事業でもあり、チャレンジングな取り組みとなりました!
前提2: 「スピフル」とは
「スピフル」とは、スピーキング力向上に特化したトレーニングアプリです。
日本語を見て瞬時に英作文する「口頭英作文」と、テーマをもとに1分程度スピーチする「1分間スピーチ」の2つのトレーニングができます。
生成AIの活用ポイントとしては、1分間スピーチのアウトプットを「スピーチ添削」を入れているのも特徴です。
(7日間無料トライアルもありますので、ぜひお試しください!)
前提や宣伝はこれくらいにして、以下、どのように「スピフル」を開発し、その中で生成AIをどう活用していったのかの変遷を記述できればと思います。
第一期: 開発着手せず課題の見極めに尽力する
今回の新規事業のテーマは、ミッションに適う「スピーキング」事業を作ること。どの課題を解くか、も未定だったため、2022年10月ごろから課題リサーチを開始しました。
この時期は、定性調査で課題感にdeep diveすることをひたすら繰り返しました(総計100名以上行いました)。
ハイアリングには、友人、他サービスの受講生や解約者に加え、外部ツールも活用しました。(ユニーリサーチ というサービスが手頃な価格で早くインタビューできたのでおすすめです。)
インタビューは、
現状の競合サービス(スピーキングアプリおよび英会話サービス)の利用頻度(毎日〜離反・未使用)でセグメント分け
① 英語の課題感、② 他サービスの充足点、③ 他サービスの不足点を分けて聞く
アプローチを取りました。
英語サービス市場は既に競合も多い市場。
であるからこそ、ユーザーの課題に対する競合のアプローチ方法や、競合が解決できていない課題を調査することが手早いと考えました。
(ここでは、『UXグロースモデル アフターデジタルを生き抜く実践方法論』、という書籍のアプローチを参考にしました。新規事業をアイデアに頼らず想起できるアプローチが載っているのでおすすめです。)
ここで様々な課題が見えてくるわけですが、意識したことは「アイデアに飛びついて開発しない」「リサーチはチーム全員で行う」でした。
新規事業を行う上で、予算・スケジュールの制約や各方面から伸し掛かる期待感はつきもの。それに応えようとするあまり、自分や社内ブレストで出たアイデアにすぐ飛びつきたくなる。そうなる方も多いのではないでしょうか(実際自分もよくそうなりかけました)。
ただ、アイデアはあくまでアイデアに過ぎず、大事なのはいかに課題に立脚しているか。魅力的なアイデアが出たとしても、課題を解決しうるかの検証なしに製品化を進めると、誰も欲しがらない製品ができてしまいがちです。(よく言われる、スタートアップの失敗の多くは市場のなさが起因する、というやつですね)
そこで、エンジニア、デザイナーにもインタビューに複数回ずつ同席してもらい、また課題の構造化も共に行いました。
彼らの客観的かつ違った角度の目線を通すことで、課題が今今の仮説や事業アイデアと結びついているかをスクリーニングできます。
また、彼らに課題感のリアルを掴んでもらえるため、より精度の高い製品開発に繋がりました。
チーム全員が、「英語学習者の課題」として捉えるのではなく、インタビューで出会った「〇〇さん」の課題をどう解くかまで視点を下ろした上で実装したことが良かった、と振り返っています。
第二期: 仮説検証で苦戦していたら荒波がやってきた
さて、課題の構造化はできた。ただ、しっかりと利益が出る事業アイデアが出ない、、、、、そんな時にやってきたのが、「生成AIの波」。
課題リサーチ後、「口頭英作文」をいかに収益化するか、に大きく苦戦していました。
課題の解消には、日本語を見て瞬時に英作文する「口頭英作文」トレーニングが有益だとわかった。ただ、既に安価なプロダクトが存在し、そもそも口頭英作文自体の認知が低い。その状態で「口頭英作文」単独での事業化は難しい。ユーザーと事業の狭間で、苦戦する日々、、、
そんな折に、「生成AI」はやってきました。
ここで初めて、「AIを活用したスピーチ添削」と口頭英作文の組み合わせを想起しました。
というのも、
「口頭英作文」だけだと、結局話せるようになったか分からない
アウトプットを「英会話」で行っても、その発話が正解か分からない
という声が非常に多かったのです。
2つのトレーニングを組み合わせることで、英会話が担う「アウトプット」まで範囲を広げられる。
それができると、英会話市場にも対抗できるプロダクトになるのではないか。その日から検証を開始しました。
ここでも、即座に開発をせず、既存の製品を組み合わせてプロトタイプを動かす方法を取りました。
インタビュー内で許諾をとった上で、
1. 即席でスピーチをしてもらう
2. インタビューを進めている間に文字起こし→GPTのPlayground上にプロンプトを投入し、フィードバックを生成する
3. パワーポイントで整形し反応を見る
という地道な作業です。
この時点では、何をフィードバックするか、何をフィードバックできるかの確証はなかったため、有りものでの検証を繰り返しました。
第三期: 品質安定を志向しベータ版開発へ
検証を繰り返すのちに、ある程度見えてきた、フィードバックの型。
ただ、すぐにはリリース版の開発を行いませんでした。
2023/08より3ヶ月間、「プログリット」の卒業生(=サービス利用終了された方)30名を対象に、「ベータ版」検証を行いました。
このフローを挟んだのは大きく2つの理由があります。
1.自由なGPTを「不自由に」する
GPTは、自由な生成ができる一方で、出力の安定性には疑問符が残る代物。そのため、商用化前に「GPTをいかに不自由にするか?」の制御方法を検証しようと考えました。リリース後のレピュテーションリスクの軽減や、そもそも高品質なフィードバックをできるようにすることが狙いです。
2. スピードよりもプロダクトの品質
ここで重視したのは、「GPTの時勢」と「競合の多さ」。
当時すでにGPTを利活用したプロダクトは多く存在していたため、「GPTを活用」という目新しさは通用しない状態でした。そこで「GPTを利活用した上で英語学習上良い添削を作る」ことに舵を切ることで、差別化を図ろうと考えました。
また、スピーキング力向上のサービスは世の中に多くあったため、一定の品質がないとサービスを受容してもらえません。英語学習の玄人であるプログリット卒業生に納得してもらえるかをリリース基準にしようと考えました。
かくしてベータ版をリリース。
ここでも、「極力開発しない」を貫きました。
添削に関して「受け続けた時の印象の変化」を調査できていなかったため、
1. Googleサイトでスピーチテーマを掲載
2. LINEで録音→送信してもらう
3. 添削生成の管理画面(ここだけ簡易で実装しました)で文字起こし、添削を生成
4. 人が添削の品質を確認
5. LINEで添削を送信
という突貫フローで、データ蓄積に集中する仕組みを作りました。
この3ヶ月添削生成を実際の録音に対して行ったおかげで、正式リリース時に安定した添削生成の仕組みが構築できました(詳細は弊社エンジニアKokiさんのnoteをご覧ください!)。
また、この3ヶ月間、お客様には毎日アンケートに回答いただき、毎週エンジニア・デザイナーと確認する時間を設けました。(ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました!)
毎日満足度や改善要望を聞き、それをチーム全員で受け止める。これを繰り返すことで、細かい使い勝手を含めた課題の解像度を上げました。
また、エンジニアデザイナーの皆さんが課題感に直接触れることで、自分一人では気づけない課題や解決方法にたどり着くことも多々。「課題にダイレクトに触れられる仕組みづくり」は本当に重要だと実感しました。
最後に
今回、足掛け1年掛かりで新規プロダクトをリリースしましたが、リリースして終わり、ではなく、ここからが勝負です。一人でも多くの方の課題解決に「スピフル」が寄与できるよう、プロダクトの改善を重ねていく所存です。
また、そんな経験を共に得たい、熱量を持ってプロダクトを改善したい方、ぜひそんな方と働きたいと思っています。
サービスを本気で良くしたいPdM、エンジニア、デザイナーの方、全力で募集中ですので、まずはカジュアル面談からだけでもぜひご検討ください!
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