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”だんせい”と言っても男の事ではないよ
最近めっきり寒くなってきましたが、あえて半袖のシャツを着て「まだまだ若いんだぞ」というところをアピールしている元気モリモリ43歳です!#若者はモリモリなんて言わない
こんにちは、コッシーです。
さて、皆さんは”だんせい”ストッキングをご存知でしょうか?
別名「着圧ストッキング」とも言われる弾性ストッキングの事です。
足に浮腫み(むくみ)のある方などが着用する事で足に圧をかけ、リンパ管の体液の流れを良くするストッキングになります。
あまり馴染みの無い方はもしかして、『男性ストッキング』だと勘違いして、男性専用のストッキングのことだと思われたかもしれません。
そう思った自分を恥じる必要はありません。経験豊富なこの僕も何を隠そう初めてこの言葉を耳にした時には完全に男性ストッキングだと思いましたから。
あれは、足に浮腫みのある女性入居者の皮膚科受診に付き添った時のことです。診察した先生から、「”だんせい”ストッキングを着用してください」と言われました。
(え?この方女性なのに男性?ははーん、きっと先生は間違えてんだな。プププ。もう仕方ないなぁ)
愚かな僕はこの時先生が間違えたんだと思い込み、無謀にもドヤ顔で先生に進言してしまいます。
「先生、この方は女性なので”女性”ストッキングですよ!!(笑)」
「は?」
あの時、人ってこんなに冷たい眼が出来るんだなって思いました。#世界が凍りました
このように誰にでも間違いはありますので、もし男性ストッキングと思ってしまった方がいたとしても全然気にしなくて大丈夫です。むしろお医者さんなどに「女性ストッキングですよ!」なんて言わなければセーフです。
とにかくこの弾性ストッキングはなかなか優秀なヤツでして、介護現場において結構な活躍をしてくれます。人に寄りますが、数日間着用するだけで足の浮腫みを治めてくれる場合もあります。
ただこの弾性ストッキングですが、着圧が強いだけあってものすごく履きにくいんですよね。
力のない高齢者だとご自分で履く事は難しい方もいると思います。うちの入居者で着用されてるほとんどの方がこちらで介助をしています。
先日皮膚科受診においてストッキングを着用するように言われた入居者の方もご自分での着用が難しい方でした。
その方は浮腫みの状態が悪く足がパンパンに腫れており、先生から着用するように指示されたストッキングの着圧は結構強めでした。
そのため女性の力だとその方に弾性ストッキングを履かせるのがとても困難とのことでスタッフ達が困っていました。
こういう時こそチームプレーです。女性の力では難しいのなら男性スタッフがストッキングを履かせれば良いのです。これが本当の”男性”ストッキングです。なんちゃって。#爆笑するところです
その日から男性スタッフの持ち回りでストッキングを履かせることにしました。初日は若手のホープI君(30歳)にお願いしました。
履かせ終えたI君に感想を聞いてみると、「想像以上に手強いです…」とかなり大変だった様子でした。
おそらく介護経験がまだ浅いI君は弾性ストッキングを履かせるコツが分かっていないだと思います。
その点僕はこれまで何人かの入居者にストッキングを履かせてきました。履かせては脱がし履かせては脱がしとストッキングを履かせ続けてきました。
ストッキングを履かせたら僕の右に出る者はいないと思います。ストッキングの魔術師と呼んでください。#嘘です#恥ずかしいので絶対にやめてください
とにかく僕にとって弾性ストッキングを履かせることなんて造作もないわけです。いくらその入居者の足の浮腫みが酷かろうがストッキングの着圧が強かろうがそんな事はストッキングの魔術師には関係ないのです!#絶対に呼ぶなよ
僕の当番日がやってきました。入居者の部屋に行き足の状態を確認します。やはり浮腫みは酷いようです。タンスからストッキングを取り出し入居者に履かせようとしました。
イメージでスッと履かせて、I君に「全然大した事なかったよ」と涼しい顔で言い先輩風を吹かせるつもりでした。
でも今回のストッキングは僕の想像を遥かに超えた固さでした。
履かせようと口をめいいっぱい開こうとしますが全然開かず、しかも足の浮腫みが酷いためなかなか履かせることが出来ません。
苦戦する僕を見て入居者が不安そうな顔をしています。入居者に心配をかけるわけにはいきません。
目を閉じて深呼吸をします。自分の力を両腕に集中させます。頭の中でストッキングを開くイメージをします。(自分なら出来る。自分なら出来る)そう心の中で反芻します。
ふーっともう一度深呼吸をして、閉じていた目をカッと見開きます。
「うおおおおお!!」
両腕に力を込めてストッキングを開きます。大きく開くと同時に入居者の足を滑り込ませます。途中で何度も引っ掛かりそうになりましたが、勢いをつけてクリアーしていきます。ストッキングを膝下まで上げ、そして全体に皺がないことを確認しました。
お、終わった…
僕のストッキング人生の中でも1.2を争うほどの強敵でしたがなんとか打ち勝つことができました。
役目を終えて安堵し退室しようとした時でした。入居者が僕を呼び止めました。
「右足は?」
そう、僕が履かせたのは左足だけでまだ右足のストッキングが残っていました。もちろん僕がその事を知らないわけはなく、僕は笑顔で入居者に答えます。
「I君呼んでくるからちょっと待っててね」
どうやら僕に弾性ストッキング履かせる力はもうないようです。
ストッキングの魔術師の名はI君に譲ることして、僕のことはストッキングに敗れし者と呼んでください。ストッキングだけにね。#敗れると破れる
それではまた。
コッシー