【創作】漏
夏は夜に怪談を話すのはなぜだろう。古くは四谷怪談から始まり今ではYouTubeなどでオリジナルの恐怖体験を話す者もいる。何故か夏の風物詩のように捉えられているが別に春や冬に話しても問題はないように思う。もしかすると暑い夏に背筋をひんやりと冷たくさせる目的なのかもしれないが、そんなもんは錯覚であってどれだけ怖い思いをしたところで暑いもんは暑い。それに怪談話のほとんどが創作であり現実世界ではあり得ないと思えることばかりだ。わざと恐怖心を煽るように声に強弱をつけたり照明を薄暗くして話しをすることで、恐怖を感じる臆病者もいるかもしれないが、オカルトの類を一切信じない私のような人にとってはただのホラ話であって怖くも何ともないのである。しかしごく稀にそこそこリアリティの高い話もあって先ほど聞かせていただいた便器に引きずり込まれる話などとても信ぴょう性が高くて十分現実でも起こりうることだと思う。現にさっきの話の中に出てきた幽霊に引きずりこまれた男性の消息は未だに分かっていない。いやもちろん私は霊や妖怪の存在はいるわけないと思っている。けれでも普通の人間が便器の中に忍び込むことは可能なわけで、仮にその男性を便器に引きずり込んだのが人間だったとしたらこの私でさえ犠牲者になることだってあり得る話だ。特に小ではなく大の場合だと無防備に尻を便器に向けることになり、中に潜伏している何者かにとっては引きずり込むのに格好の餌食となる。もちろん便器の中に誰かが潜んでいるなんて思っていない。いるわけはないと思っているのだが、可能性はゼロパーセントとは言えない以上そこを警戒するのはリスクマネジメントの観点から当然のことだと私は思う。だから私が便意をしかも大きい方をもよおしてトイレに行かなかったとしても客観的に見て理にかなっており、それにより便を失禁したことはある意味自然なことだと言えるのである。
……はい、ごめんなさい。漏らしてしまいました。
おしまい(816文字)
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