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痛がらないおばあさんと痛がるおじいさん
入居者の親戚の方が犬を連れて訪問されたので、「ごめんなさい。動物は入館禁止です。」と断ったら「ええ!?何でですか?」と驚かれたんだけど、逆に何で良いと思うの?
こんにちは、コッシーです。
さて、高齢者の中には戦争を経験された方や戦後の厳しい日本を生き抜いてこられた方がおり、そういう方々は総じて我慢強かったりします。
ちょっとやそっとの痛みでは「痛い」と訴えることはせず、ぐっと我慢をされます。大した事がなければ良いのですが、こちらが異常事態に気付いた時には結構大変なことになってたりします。
入居者にMさんという94歳の女性の方がおりますが、絶対に「痛い」と言いません。Mさんは今でこそ車椅子ですが、半年ほど前まではご自身の足で歩行されていました。
ある日、朝食の時間になってもMさんが食堂に来られません。スタッフが部屋に見に行くとMさんがベッドサイドで倒れていました。どうやらトイレへ行く際に転倒してしまいそのまま起き上がれなくなっていたみたいでした。
慌ててスタッフが駆け寄り声をかけました。
「Mさん!大丈夫?どこ打った?どこが痛む?」
「どこも痛ない」
「いやいやいや!転んだんだからどこか痛むでしょう?」
「どこも痛ない。大丈夫や」
何度聞いてもMさんは「どこも痛ない」の一点張りでした。しかし立ち上がろうとすると苦悶の表情を浮かべるためスタッフがMさんの身体を確認すると、腰の辺りに青あざがありました。痛くないはずがなく、スタッフがそっと青あざに触れると、Mさんから思わず「いたっ!」と声が上がりそのすぐ後「痛ない」と言われました。もう認めちまえよ。
骨折しているかもしれないと、すぐに病院に連れていきました。
病院でもMさんは痛みをぐっと堪えており、先生からの問いかけにも決して「痛い」とは言いません。
先生「どこか痛いところありますかー?」
Mさん「どこも痛ない」
先生「えっ」
僕「腰に内出血が」
先生「どれどれ…いやーこれは痛そうだねぇ!」
Mさん「痛ない」
先生「えっ」
僕「立つのも痛いみたいです」
先生「ここは痛みますか?(青あざ辺りを触る)」
Mさん「いたっ!痛ない」
先生「えっ(笑)」
というコントみたいなやり取りがあり、結局Mさんは腰椎を骨折しており入院されました。骨折するくらいですから相当痛かったと思いますが、そんなそぶりも見せない大正の女性は本当に我慢強いです。でもあのままの状態にしていた場合、無理をして悪化していたかもしれないので病院に連れてこれて良かったと思います。
Mさんのような我慢強い方がいる一方で。逆に心配して欲しさからかすぐに痛みを訴える方もみえます。
入居者のKさんという男性の方は、ちょっとした事で痛みを訴えられます。
お腹が痛い、頭が痛い、足が痛いとさまざまな部位を引き合いに出しては、こちらに痛みを訴えます。右足が痛いと言っていたのに、そのすぐ後に別のスタッフに左足が痛いと言っていたこともありました。
そんなKさんも本当に痛い場合もあるため、最初からウソと決めつけるのは危険です。
実はKさんはこの記事で右脇腹痛で病院に連れていった入居者になります。その時は尋常ではないくらい痛がっていたため、病院に連れていき検査をしたんですが、結局胆石が見つかり入院されました。
Kさんが狼少年だと決めつけていたらきっと大変なことになっていたと思います。
痛みを隠す方もウソの痛みを言う方もどちらも真実を見極めが必要だと思います。その為には常日頃から入居者の動作などをしっかりと見ておく必要があると思います。
どちらも見逃し見落としは大変な事につながるかもしれませんので。
現場からは以上です。それではまた。
コッシー