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ドライバーズハイ!
先々週に続いて、先週も【ぼくはコッシー】が特にスキを集めたみたいで、密かにコッシーブームが起きているのではと勝手にドキドキしています。
こんにちは、多分注目されていない方のコッシーです。
さて、僕は週に1回くらいの頻度でデイサービスの送迎運転手をしております。うちの送迎は運転手とケアスタッフの二人一組で行っています。
どのスタッフとペアになるかは特に決まっておらずその日の勤務状況で誰と組むかが分かります。
いろんなスタッフとペアを組んでいますが(みんな違ってみんな良い!)、その中に一人、まるで口から生まれてきたようなマシンガントークをされる方がいます。
本当によく話す人ですが、決して他人を傷つけるようなことは言わず、明るく元気で常に周囲を笑顔にしてくれます。その方とペアになる時はいつも車内は利用者さんの笑い声に包まれます。
それがうるさいと思われる方もいるかもしれませんが、僕は利用者さんが楽しくドライブ出来る方が良いと思っているので、そのおしゃべりスタッフとのペアは大歓迎です。
ただ、本当にずーーーっと喋っているので、一緒になって喋っていると道を間違えてしまったりすることがあるので、おしゃべりスタッフには申し訳ないけどいつも話半分で聞いています。
やはり運転手としては利用者を安全に送り届けることが最大の任務になりますから、おしゃべりはそのスタッフに任せて、スーパードライバーの僕はちゃんと運転に集中しています。
先日、おしゃべりスタッフと送迎が一緒になりました。
相変わらずのマシンガントークで利用者と談笑しています。
みんなの笑い声に癒されながら気を付けて安全運転をしていました。1人また1人とご自宅に送り届けていきます。
最後の1人のご自宅に向かっている時でした。おしゃべりスタッフと利用者さんの会話が耳に入ってきました。
「○○さんの家に行く途中にね、羊がいるんだよ」
「ほほう、羊ですか。そりゃすごいですね」
ひ、羊だと!?
スーパードライバーの僕は普段は運転に集中しているので会話に参加することはあまりありませんが、今回だけは聞き捨てなりませんでした。
「え?羊がいるの?こんな住宅街に嘘でしょ?」
「嘘じゃないですよー!ほらあそこを曲がるとおっきな羊を飼っている家があるんですよ!」
この時、車を走らせていたのが住宅街だったのでおしゃべりスタッフの言う事がにわかに信じられませんでした。でもこんな街中で本当に羊がいるのならめちゃくちゃ見てみたいと思いました。
「あそこを曲がっても○○さんの家っていけるよね?」
「はい、全然問題ですよ!コッシーさん、行っちゃいますか!?(笑)」
「○○さん、羊見たいですか?」
「見てみたいねぇ」
「よし…行っちゃうか!?」
「行っちゃいましょう!」
羊を目指して車を右折させました。
熱くなった銀のメタリックハートの導火線に火がついたようでした。
不思議なほどハイな気分で、砂埃巻き上げて行きました。
地平線に届くように限界まで振り切りました!
最高のフィナーレを!Yeah!でした。
※もちろん法定速度を守って安全に運転しています
「あそこです!あの家です!」
「オッケー!!」
おしゃべりスタッフが前方を指して大きな声を出します。僕もあきれるほど声を上げて大気圏を突破しました。
完全に二人はハイになっていました。
※もちろん法定速度を守って安全に運転しています
家の前には大きな小屋がありました。
その前に車を停めて覗き込むと…そこには確かに羊がいました!!
車中から撮ったので見えにくいですが、寝ている羊がいました。
「ほらー!嘘じゃなかったでしょー!」
「すごい!なんでこんなところに羊がいるのか分からないけど、間違いなく羊だね!!○○さん見てごらんよ。羊がいるよ」
「可愛いねぇ」
普通の住宅街の普通の家に確かに羊がいました。さすがに民家の前で長居はできませんので、ひとしきり羊を眺めると早々に退散をしました。
車内では興奮気味におしゃべりスタッフと利用者が話していましたが、スーパードライバーの僕はここで気持ちを切り替えていました。
ハイの時間は終わりです。ここからは安全に利用者を送り届けるのが僕の仕事です。
いつもとは違うルートを通っているため油断すると道を間違えてしまいます。より集中しなければなりません。
しかし、ここにきてまたしてもおしゃべりスタッフが気になることを言い出しました。
「私、思うんですけど、あの家の人って外国人じゃないですかね。だって日本人であんな街中で羊を飼おうなんて発想自体しないと思うんですよ」
こいつは天才だと思いました。
確かに僕は生まれてから一度も羊を飼おうを思ったことはありません。
今、これをお読みのあなたも「羊飼いてぇ!」なんて思ったことありませんよね?もし思ってたらどうかしていると思いますよ。
「た、確かに…うん、絶対そうだよ!あの家はきっと外国人だよ!」
「ですよね!きっとアルプスとかからやってきた人なんですよ!」
僕らの中では【街中で羊を飼う人は外国人説】で間違いないと思いました。
車中はもうその話ですごく盛り上がり、3人は再びハイになっていました。
そして道を間違えました。
「あ!そこ左ですよ!」
「ええ!うそん!!」
気付いた頃には時すでに遅しでした。あそこを左に曲がらないと利用者宅に行くにはかなり迂回しないといけませんでした。
「ごめん…○○さん…」
「大丈夫ですよ。急いでいませんから」
本来の到着予定時間から数十分遅れてご自宅に着きました。待っててくださった娘さんに平謝りしました。
娘さんは笑って許してくれましたが、デイの管理者からは絶対に怒られると思うので、僕らはこのまま姿を消そうと思います。
来世でまた会おう!Yeah!
それではまた。
コッシー