【創作】ご機嫌な俺たち
「月曜日はウンジャラゲ?」
深夜のオフィス。つい数分前まで隣りのデスクでカタカタとキーボードを打っていた高橋が急に静かになったと思ったら、おもむろに呟いた。俺に言っているのか分からず、とりあえず無視して仕事を続けた。
「火曜日はハ、ハンジャラゲ?なんで…?」
チラリと高橋を覗くとイヤホンで何かを聴きながらPCの画面を凝視している。
「何見てんの?」
「水曜日はスイスイスイときたか!!」
高橋が急に大きな声を出した。俺は驚いた拍子に椅子から転げ落ちそうになる。
「急に大きな声を出すなよ!びっくりするだろ」
「木曜日はモーリモリて。水木と急に曜日が絡んできたな」
高橋は聞こえていないのか俺の声を無視して画面から目を逸らさず「金曜日はキンキラキン…」と言っている。画面に目をやるとどうやら動画を見ているようだった。
「土曜日激し過ぎ!日曜日は陽気だなおい!」
そこまで言うと高橋はイヤホンを外してニヤニヤしながら俺の方を向いた。
「お前も聞いてみろよ」
高橋はそう言って俺にイヤホン渡して席を立った。俺は空いた席に座り受け取ったイヤホンをつけた。そして動画の再生ボタンをクリックした。
「さあ!みんな揃ってヴァーっと参りましょうか!」
動画の中央にいる男性が高らかな声をあげると、軽快な音楽と共に大勢の人たちが歌を唄いながら踊り始めた。
正直何を言っているのか何をやっているのか全く理解不能だった。だけどご機嫌で唄って踊る人たちを見ているとだんだんとこっちまでご機嫌になってきた。
「なんだこれ!」
「だろ!意味が分かんないよな!」
俺たちは目を合わせると大きな声で笑った。俺と高橋しかいない深夜のオフィスに二人の笑い声が響いた。
ひとしきり笑い終えると高橋が真面目な顔で俺に言う。
「俺たちも踊るか」
高橋の問いかけに俺は無言で頷くとPCからイヤホンを引き抜いた。そして音量を上げて再生ボタンをクリックする。オフィスにウンジャラゲの音楽が大音量で流れた。
俺と高橋はその音楽に合わせて踊った。仕事を放り出してとにかく踊った。
「ウンジャラゲのハンジャラゲ」「スイスイスイのモーリモリ」「キンキラキンのギンギラギン」「ランラランラランランで一週間!」
俺たちは唄いながら夢中で踊った。
そこへ忘れ物をしたのか一人の女性社員がやってきた。そして汗だくで踊る俺たちを見るや否や悲鳴をあげた。
「キャアアアア」
悲鳴を聞きつけた警備員が足早にやってくる。
「どうしたんですか!」
女性社員は俺たちを指さしてこう言った。
「このおじさんたち、変なんです」
おしまい(1197文字)
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