サステナビリティに関する情報収集とネットワーキング
KOSOパートナーズの朝倉です。
本日は上場企業や大企業ばかりでなく、日本全国に散らばるその取引先などのサプライチェーン上の会社、そしてその会社群を支援している会計事務所や法律事務所、コンサルティング企業においても関心が高まりつつある、サステナビリティに関する開示(CSR報告書や統合報告書)や、二酸化炭素(CO2)を含む温室効果ガス(GHG)の削減に取り組むための情報収集とネットワーキングについて記載いたします。
1.現在の環境
国際的にサステナビリティとESG(環境・社会・ガバナンス)に対する関心が高まり、多くの国で企業のサステナビリティ情報の開示が義務化されてきています。特にIFRSが中心となるEU各国において推進されてきており、多くの企業がESG報告を行っています。日本の夏も以前はこんなに暑くなかった、と感じられるほど日々が過ごしづらくなっていますが、世界的に見ても地球温暖化や異常気象など、気候変動が深刻な問題として認識されており、「今後10年で発生可能性が高いとされたリスク上位5項目」として、2019年以降はほとんどが環境リスクに起因するものが挙げられ*1、企業の環境負荷を減らす取り組みが求められています。また、石油その他の資源に限りがあることから、温室効果ガス排出量の削減や持続可能な方法での資源利用や再生可能エネルギーの活用が模索されています。国連の持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定を受けて、こうした地球の課題に対して具体的なアプローチはもちろんのこと、資金を提供する金融機関や投資家においてもESG要因を考慮するようになり、企業のサステナビリティ情報の開示が重要視されるようになってきました。
2.開示の義務化
このような環境もありVUCAと呼ばれる変化の激しく予測困難な時代において、日本の上場企業や大企業で開示が求められている有価証券報告書の記載の中でも、財務情報だけでは判断の難しい非財務情報の開示の範囲が年々拡大しており、サステナビリティ情報もその一つとして組み込まれるようになりました。日本の有価証券報告書の開示文章は、その作成過程で他社事例や印刷会社の事例を参考に行うため、良くも悪くも比較しやすい同じような文章が基本的に並びますが、非財務情報であるサステナビリティ情報についてはTCFDの枠組みである「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」に基づいて整理されてはいるものの、その明細は財務情報に比べると抽象度が高く作成のハードルが高くなっています。金融庁が開示している「記述情報の開示の好事例集2023*2」などを参考にすると各項目の事例がまとまっており良い資料となっていますが、任意開示であるCSR報告書や統合報告書についてはその内容やボリュームも企業ごとに様々です。更に困ったことは、気候変動開示としての脱炭素関連情報の収集については、自社の調査のみで完結できず、サプライチェーン上にある取引の上流・下流における企業群の活動にも考慮して行う必要があり、各社頭を悩ませています。
3.学習とネットワーキングの場の登場
このような状況にあり、弊社KOSOパートナーズにおいてもサステナビリティ開示に関するご支援を承っておりますが、各専門家におかれても、なかなか情報が手続き詳細レベルまで具体化されていないなど難しい判断も少なくない状況です。日本公認会計士協会はサステナビリティ情報開示やその信頼性確保の取組みを進めるべく、公認会計士に求められるサステナビリティ関連の能力開発のための包括的な指針として「JICPAサステナビリティ能力開発シラバス」を取りまとめ、公表しています*3。これは当該テーマを概論、企業経営・ガバナンス、開示、保証と切り分けて学習ラインを整理しており、公認会計士向けの公表ではありますが一般の方が目を通しても良い内容かと思います。しかしやはり具体的なコンテンツまでは落とされていないのが現状です。今後の義務化の範囲や内容の拡大が迫られており確実にニーズが広がっている中で、支援する側もされる側もこの分野の情報収集とネットワーキングが難しい状況にあるため、この現状の課題を解決すべく、一般社団法人サステナビリティマネジメント&アシュアランス機構(通称i-SMA:アイスマ)が設立されました*4。先述のシラバスに即して可能な限りの網羅・横断的な教育・研修コンテンツを用意し、ディスカッションやコミュニケーションの場を設け、そのときどきにおけるベストプラクティスを確認しながら悩みや解決方法などが蓄積されていくことが期待されています。
アイスマでは2024/8/26の月曜に設立記念も兼ねたフォーラムを開催します*5。サステナブルファイナンスを涵養する水口剛理事長(高崎経済大学学長)を始め、金融庁や環境省、その他割愛しますが各専門家にご登壇いただき、後半はネットワーキングイベントを兼ねています。もしこの記事をお目通しいただいたのは開催日前でしたら是非ご来場いただければと思います。何かサステナビリティの開示や保証、その他些細なことでもご質問ご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。
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今後もKOSOパートナーズ公式notedではさまざまな情報発信を月に1回程度配信してまいります。
ご意見・ご感想ありましたらぜひお声をお寄せください。
*1 WORLD ECONOMIC FORUM The Global Risks Report 2023
*2 金融庁「記述情報の開示の好事例集2023」
https://www.fsa.go.jp/news/r5/singi/20231227/01.pdf
*3 日本公認会計士協会「JICPAサステナビリティ能力開発シラバスの公表について」
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20240425gfu.html
*4 一般社団法人サステナビリティマネジメント&アシュアランス機構
https://i-sma.or.jp
*5 i-SMAフォーラム2024年8月26日(月)情報サイト
https://i-sma.or.jp/events/forum_20240826/
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第1部:基調公演及びパネルディスカッション(14:00~17:00)
開演の挨拶(14:00~14:05)
基調講演①:サステナブル社会の実現とファイナンスの役割(14:05~14:20)
【登壇者】水口 剛 高崎経済大学 学長
基調講演②:GXリーグの人材育成に関する現状とネクストステージ、資産運用特区でのGX関連動向(14:20~14:35)
【登壇者】落合 孝文 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 シニアパートナー 弁護士
パネルディスカッション①:地域金融とサステナブルファイナンス(14:45~15:15)
投融資においてもサステナビリティの要素が織り込まれるようになり、ESG投資額は増大している。企業側は有利な資金調達をするためにもサステナビリティを考慮する必要が増してくる中で、企業側がサステナブルファイナンスを受けるにあたりどのような信頼性の担保をすべきか、金融機関側が融資実行をするに当たり企業に求めている事は何かについて議論する。
【登壇者】
高崎経済大学学長 水口 剛
環境省 地球温暖化対策課 脱炭素ビジネス推進室長 杉井 威夫
株式会社バイオマスレジン福島 代表取締役 公認会計士 渋佐 寿彦
【モデレーター】
株式会社PID取締役会長 公認会計士・サステナビリティオフィサー 嶋田 史郎
パネルディスカッション②:サステナビリティ情報開示の潮流(15:25~15:55)
有価証券報告書においてもサステナビリティ情報の開示が求められ、サステナビリティ情報の重要性が増している中、サステナビリティ情報開示の現状や展望、企業の対応課題や解決策について議論する。
【登壇者】
金融庁 企画市場局 企業開示課 専門官 南 貴士
宝印刷株式会社
株式会社プロネクサス 開示・教育支援事業部 執行役員 谷口 義幸
【モデレーター】
日本公認会計士協会東京会 常任幹事 公認会計士 朝倉 厳太郎
パネルディスカッション③:今求められるサステナビリティ保証(16:05~16:35)
財務情報に監査が求められていることと同様に、サステナビリティ情報にも保証が義務化されようとしている。
企業はどのような準備が必要となるのか、監査・保証提供側にはどのような要素が求められるのかについて議論する。
【登壇者】
株式会社リクルートホールディングス ディレクター グローバルサステナビリティ開示規制 ESG対話 グループDEI 大野 美希子
東京海上アセットマネジメント株式会社 ESGスペシャリスト・SSBJ委員 菊池 勝也
新創監査法人代表社員 公認会計士・税理士 高橋 克典
【モデレーター】
CSRデザイン環境投資顧問株式会社 取締役 公認会計士 鶴野 智子
閉演の挨拶(16:35~16:50)
第2部:ネットワーキングイベント(17:10~19:00)
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