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USELESS MEMORANDUM YSL(for men)Before Hedi Slimane中編

Yves Saint Laurentメンズラインの生産において
プレタポルテ・ライセンス問わず
最も深く関わったのが
フランス最大手の紳士服製造業者の一つ
Bidermann社と言えるでしょう。

Bidermann社は1969年
rive gaucheメンズの立ち上げ直後に
メンズラインの生産を担当する様になります。
(レディースラインはC.Mendes社が生産を継続。
両者の関係は1978年まで続きます)

更にBidermann社は当時
Pierre Cardin社とライセンス契約をしており
その契約が1973年に終了するのを見据え
世界各国に於けるYves Saint Laurentのライセンス権を取得しました。
Bidermann社は
単なるライセンシーの枠に収まらず
Yves Saint Laurentと協議して
各国のライセンシーを決めていたそうです。

つまり
Bidermann社はプレタポルテの製造者でありながら最大のライセンシーでもありました。

〜アメリカ〜

1973年〜1974年頃
Bidermann社はアメリカでYves Saint Laurentの事業を次々立ち上げ
Michel Zelnik (前述のPierre Cardin事業の幹部)がYves Saint Laurent mensclothing incの社長に就任します。
(ここで立ち上げられた事業は後にBidermann Industries USAとして統合されます)

1979年 mensclothing incの広告
フォーマルウェアの男性
ローラースケートは
ローラーディスコブームの影響でしょうか?


因みに
Yves Saint Laurentのアメリカ進出は
1968年
最初のブティックをニューヨークにオープンしています。

1969年 アメリカ メンズベルトの広告
1972年 自身もファッションデザイナーで
PLAY BOY誌のファッションディレクターだった 
Robert L Greenが手掛けた
サファリスーツのルック
クセが強い

Yves Saint Laurent(とBidermann社)が
アメリカ市場の
最初にパートナーとして選んだのが
アパレルメーカーManhattan Industries社でした。

Bidermann社とManhattan Industries社の両者はパートナーとして
どちらかにイニシアティブがあるものではなく
あくまで50/50の関係だったと
Manhattan Industries社の元会長兼CEOである
Laurence C. Leeds Jr.は述懐しています。
彼の証言によるとこの関係は
その後7〜8年続いたそうです。
(2020年3月31日 WWDより)

そして
その関係が終了したと思しき1981年に
Bidermann社は
傘下のJ. Schoeneman inc.を再編し
Yves Saint Laurent sportswear,inc.を設立します。

また1991年に
J. Schoeneman inc.を売却した後は
予め買収済みのCluett Peabody & Co
(シャツのArrowブランドで有名)が
Bidermann社の下で
Yves Saint Laurentライセンスラインの
主要な企画生産を担いました。
(Cluett Peabody & Coの
社内資料を確認すると1995年10月
Yves Saint Laurent,Burberry,Kenneth Coleのライセンスに特化した「THE DESIGNER GROUP」というセクションを独立させています)

〜日本〜

フランスで
BidermannがYves Saint Laurentと
提携するよりも以前
1963年の時点で既に東洋レーヨンを
メインライセンシーとして契約を結んでおり
同年から樫山がサブライセンシーとして
製造の下請けに加わります。
またニットウェアに長けた福助が
1976年から「イヴサンローラン メンズウェア」の事業を展開。
(最初の提携は1975年のキッズウェア)
他にも
Burberryのライセンス事業のイメージが強い
三陽商会も1972年からコートを手掛けていました。

1974年 オンワード(樫山)
メッセージ性の強い広告
この時点でメンズも展開している様です

余談
日本以外の国では確認がとれてないのですが
Yves Saint Laurentはテキスタイルの販売も行っていた様です。
と言っても
恐らく百貨店のオーダーサロンや仕立て屋向けに卸売りしていたものだと思われます。
日本のメインライセンシーが繊維開発、販売で
世界首位の東レだった故でしょうか。

以下のタグはYves Saint Laurentの製品ではなく
「Yves Saint Laurentの生地で仕立てられた洋服」に付くタグです。

デザイン及びパターンには
Yves Saint Laurent及びライセンシーの監修が
全く入っていないと思われます。
それ故に仕立てられた洋服は
プレタポルテともライセンスとも
醸し出す雰囲気がまるで違います。
(意訳)全然Yves Saint Laurentらしさがない。

カサンドラロゴ×ブランド名のタグ
フランス語で生地を意味する「tissus」


〜韓国〜

またアジアでは韓国でもライセンスラインが
展開されていました。
essess fashion(esses)という
同国のメーカーがライセンシーだった様です。
韓国の経済成長が著しかった1980年代頃から
展開していたと考えられます。

タグでもメーカー名を主張しています
此方はメーカーの主張が強過ぎて
ブランド名が追い出されていますが
Yves Saint Laurentのライセンス品のタグです

韓国ライセンスはサイズ表記が特徴的なので
分かりやすいです。
成人向けサイズの洋服にも関わらず
タグにサイズ表記として100前後の数字が記されていれば韓国のもので間違いないです。

韓国の紳士服のサイズ

ライセンス品は何故か生産国が分かるタグが外されたものが多いですが(惚け)
韓国製はこれを覚えておけば容易に判別できます。



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