見出し画像

USELESS MEMORANDUM Christian Dior Monsieur編⑤「アメリカ編」

Christian Dior Monsieurにとって
最大の市場といっても過言ではない
アメリカ編です。

「パリはドレスを芸術品として扱い
ニューヨークは消耗品として扱う」
これは
Christian Dior自身の言葉ですが
アメリカは正にライセンスビジネスに
最適の国でした。

1948年アメリカに支社である
Christian Dior New Yorkを設立し
1949年にライセンスビジネスをスタート。

1970年代からアメリカを重要な市場と認識し
注力したメンズウェアは
1980年代には同国の市場における
最重要品目となりました。

自社のライセンス品について
当時の社長Jacques Rouëtは
「Christian Dior 社と他社製品との違いは 
品質への拘り」と語り。

3代目デザイナー
Dominique Morlottiは
年に2度NYを訪れライセンス品について
綿密な指導を行っていたとの事。

2代目デザイナーのGérard Pennerouxも
New York支社の
副社長兼クリエイティブディレクターとして
在任し、正に磐石の体制で
アメリカ市場に臨んでいました。

1964年
日本の鐘紡と締結した
Diorにとって初の
一社を主軸としたライセンス契約。

アメリカ市場で
その主軸となるパートナーに選ばれたのは
アメリカ屈指のアパレル企業Warnacoでした。

Warnacoは1970年にChristian Diorの
レディースの革小物の生産を
任された事が切っ掛けで
パートナーとなりました。

1980年代
そのWarnacoにより
「殆どの」ライセンス品製造が賄われ
HathawayやPuritan等
Warnacoの傘下にあった
専門メーカーの手によって
シャツやセーターが生産されていました。

スカーフやハンカチは
ライセンスの二次許諾で
Ashearが手掛けていたそうです。

シャツの生産を行ったHathawayの
アリゾナ州プレスコットの工場
セーター等の生産を行ったPuritanの
ペンシルバニア州アルトゥーナの工場

ここからはWarnaco関係以外のパートナーを
御紹介。

1974年からHart Schaffner & Marxが
メンズテーラードウェアを
が担当。

トレンチコート等のレインウェアを
1976年からHart Schaffner & Marx傘下の
Gleneaglesが担いました。

Hart Schaffner & MarxとGleneaglesの
一連の広告モデルにはフランスの俳優
Louis Jourdanを起用。

それに加えタキシードをHart Schaffner & Marxからの二次許諾でAfter Sixが製造しました。

1988年のChristian Dior×After Sixの広告

因みにHart Schaffner & Marxは
製造だけでなく販路としても
パートナーシップを発揮し
傘下の専門店
SilverwoodsやRaleigh Haberdasherで
Christian Dior Monsieurを展開しました。

ロサンゼルスのsilverwoods
ワシントンのRaleigh Haberdasher
ショップ名が入ったタグも多数存在します

他にも様々な企業が関わり
1980年代アメリカのDiorには
45の製造請負業社が存在したそうです。

個人的にはアメリカの
Christian Dior Monsieur
非常に好みです。
ヨーロッパの企画も好きですが
気取りなく着られるし
ライセンスブランドにも関わらず
アメリカ服好きの琴線に触れる
メーカーが生産している点も
高ポイントです。

他にも1985年に始まったとされる
最上位ライン「LE CONNAISSEUR」など
アメリカ独自の展開も見所ですね。

「拘り」を意味する「LE CONNAISSEUR」

ただ
この「LE CONNAISSEUR」ですが
正直
1970年代〜80年代前半と思しきアメリカ製
の品と比較して
特段、品質に差がある様には思えないんですよね。

これはあくまで私見ですが…

1980年代、アメリカの製造業者は
貿易赤字に苦しみ
生産拠点をコストの安い海外へシフトしていきました。
それに対抗する様に
1984年にはアメリカの製造業者による
アメリカ製品の購買促進キャンペーン
「CRAFTED WITH PRIDE IN USA」が
始まります。

恐らくDiorは1985年スタートの
「LE CONNAISSEUR」で
この流れに乗り
一部アメリカ製を残しつつ
(この最上位ラインでも普通に香港製とかメキシコ製とかあります)
主要な商材の通常ラインを
海外生産へ移行するという
経営判断をしたのでは?と推察しています。

ところで
そんなアメリカ企画ですが
こんなものも存在します。

MADE IN JAPAN…
アメリカ企画なのに
ややこしや…ややこしや…
因みに担当したのはニュージャージー州の
Ashford Fashions,Incだそうです。

あとこれは
Monsieurラインのタグではありませんが…

フランスのブランドの
アメリカ企画
イタリア生産の
ポルトガル仕上げのスカーフです!
最高にややこしいですね。
タグの情報が渋滞していて大好きです。

以上

一連のnoteで最大のボリュームとなる
アメリカ編を終わります。

いいなと思ったら応援しよう!