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【コソリテおすすめ本】『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』

コソリテスタッフのひはゆきです。
突然ですが、「性教育」というとどんなイメージがありますか?
小学校で女子だけが集められ、生理の話をされる…。昭和の小学生だった私も、そんな感じでした。

では、令和の性教育は?
小学校では、男女混合で精通や生理について学ぶそうです。男女とも当事者という認識の下、異性の身体についても知識を得るようになっている。昭和よりは進歩です。
でも、義務教育で性交や避妊については教えない。ましてや、LGBTの人権などは…。

ここで、日本では「LGBTの問題と、性教育に何の関係が?」と思う人も多いのではと思います。
UNESCOが定めた「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、ジェンダー平等や性的マイノリティへの差別、性の多様性といった問題も扱っています(これを「包括的性教育」と呼びます)。
海外ではこの包括的性教育を行う国もある中、日本は性交や避妊すら教えていない。日本の性教育は遅れていると批判を受けています。

学校教育の実態が実態なので、わが子に性交や避妊について正しい知識を身に付けさせようとすると、家庭で行わなければならなくなります。
的確にフォローできる家庭ばかりではないので、こういうあり方がいいとは思えませんが、その結果、家での性教育が関心を集め、関連本がいくつも出版されているのが現在の状況です。

そのため、性教育に関する情報が玉石混淆になっている面もあります。
中には、資格商法と結びつき、高額な費用を払わされる結果になるものも…。

このように親にとって判断が難しい局面で、おすすめしたいのがこちらの本です。

著者の一人である村瀬幸浩さんは高校の保健体育教諭をされた後、大学講師としてセクソロジーを研究してきたという経歴の方です。村瀬さんの学問的な知見と教員としての実践経験に裏打ちされた一冊と言えましょう。
(なお、コソリテも村瀬さんの講演会を開催したことがあります)

また、マンガイラストレーターのフクチマミさんは、他の作品でも、妊娠・出産・育児に関する情報について分かりやすく発信しておられます(私も何冊か、お世話になりました)。
この本をおすすめしたいポイントは、主に3つあります。

1.親の関わり方について、具体的なシチュエーションを想定している
この本では、「月経(生理)がきたら」「家族団らん中に、TVでベッドシーンを見たら」などのシチュエーション別に、親の関わり方について具体的にアドバイスされます。親側がどう向き合うかという点に、かなり注力されていると感じます。
今の性教育本で取り上げられることの多い「プライベートパーツ」についても、「親が小さな子どものプライベートパーツ(おしりなど)を触るのは、コミュニケーションのつもりでもよくない(子ども側がそれを「好き」の表現だと誤学習してしまう)」と指摘します。私が感じたのは、「あるある」なシチュエーションを具体化し、なるべく網羅しようという心遣いでした。

2.人権や多様性に対する考え方が行き届いている
この本は包括的性教育の人権的アプローチにも通じる、性的マイノリティを含む性の多様性についても一節を割いています。

それに加えてベースにあるのが、性教育は女親だけでなく、パートナーも一緒に行うものだという考え方です。
子どもへの説明は、異性の親からされることに子ども側が抵抗感があるので、同性の親からすべきという話がかなり丁寧に解説されています(この時、例えばシングルファザー家庭で娘がいる場合は本を渡す、親戚の女性に頼むなどの方法があるという補足もあり、行き届いているなあ…と頭が下がりました)。

子どもの視点に立っていることに加え、「父親に性教育を期待しても…」というジェンダー・バイアスも排除した記述だと感じます(その上で、父親が非協力的なケースを想定した箇所もあります)。

3.子どもには「事実を淡々と説明する」という姿勢
性や生命については、「素晴らしいものである」という価値観とセットで語られることも多いです。
しかし、この「命って尊い!素晴らしい!」という感覚は、全ての子どもが持てるものではありません。様々な事情で生きづらさを抱える子どもを、さらに追い込む結果になるという指摘がなされてきました。

この本では、性を不潔視することはもちろん、「すばらしいでしょ」「だから大切にしてね‼」などの価値観をくっつけることもNGとしています。「そういうしくみになっているのよ」と淡々と事実を伝えるよう、アドバイスされます。科学的な正確性へのこだわりも感じられ、信頼が置けるポイントです。
(「価値観をくっつけない」は、親として実際にやってみると意外と難しいのですが(少なくとも私は)、心構えだけでも頭に入れられるのはありがたいです)

なお、性教育については、包括的性教育の視点に立っていること、また医学的根拠に基づいて記述されていることから、こちらの本もおすすめです。

この本の巻末にはトピック別に子どもに渡すカードが用意されていて、私は娘に生理の説明をしたときに使いました。

性教育については、小4の娘がいる私にとっても切実な問題です(女子なので、説明は母親の私が担当です)。同じようにどうしたらいいか迷う親御さんもたくさんおられると思うので、ぜひ信頼のおけるこの本をおすすめしたいと思います。