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「おれのはなしをきけ」〜渋谷らくご6月公演1日目20時回鑑賞後の記録【後半】

前半は新二つ目、インターバルを挟んで後半は新真打。渋谷らくごでは珍しい、キャリアに沿った(ほぼ)香盤順で回は進む。

瀧川鯉八さんが好きで、5月の披露目のチケットも買っていたし、7月の独演会(ゲストは鯉昇師匠)も予約していた。真打昇進をお祝いする気満々だったが、披露目は秋に延期、独演会は中止になった。先月の渋谷らくごの配信が、昇進後初高座だったそうだ。

約1ヶ月ぶりに観た鯉八師匠の第一印象は、あ、髪切った!だった。顔つきがちょっと違う気がする。往年のヒットナンバーを演奏するミュージシャンのように、「やぶのなか」に入っていった。直前まで新二つ目を観ていたのもあるのか、貫禄がすごい。家族とその周辺の、ちょっとしたズレから生じるイヤ〜な感じが絶妙な秀作。鯉八師匠の演じる女がこれまた絶妙にムカつくけどかわいい。男はころっと騙されるんだろうな〜うわぁ〜という感じがたまらない。「やぶのなか」やっぱり面白いな〜!と思ったところでまさかのアンコール。ぶち上げ大ヒットナンバー「にきび」もやってくれた。

「にきび」は薬物ってどう思う?なマクラから、にきびを潰す快感に取り憑かれたお婆さんと、初めてにきびが出来た孫のマー坊の話になる。この「にきびを潰す快感に取り憑かれた婆さん」を演じる鯉八師匠がとにかく最高で、薬物の話をはじめるマクラからニヤニヤしてしまう。薬物の話から、麻薬的快感を描く落語を観ることにも中毒性があるのかもしれない。まさか2席もやってくれると思わず、テレビの前でブラボー!と叫んだ。

三遊亭志う歌師匠は初めて観た。緋色の着物がかっこいい。3月21日から披露目興行が始まったが、結局4月の頭に終わってしまったそうだ。大晦日の人情噺「芝浜」をコロナ禍を少し抜けた?ような梅雨の日に聴くことの味わい深さ。先ほどの鯉八師匠の「やぶのなか」もそうだけど、ステイホーム期間中の余所の家庭に思いを馳せてしまう。志う歌師匠が演じるおかみさんは現実にいそうな、かわいらしい夫思いのおかみさんだった。絶妙なおばちゃん感。魚勝が更生していく過程に説得力がある。サゲまで聴き終わったときにはもう今年が終わったような気がした。来年も真面目に働こう、という気持ちだ。


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