「おれのはなしをきけ」〜渋谷らくご6月公演1日目20時回鑑賞後の記録【前半】
6月の渋谷らくご生配信。5月も配信を見ていたけど、大きく変わったのは「観客の有無」だ。前説のサンキュータツオさんが、明らかに目の前の人向けて話していて、それに観客も笑ったりして応える。少しづつ、状況が変わってきているのだとわかる。
最初に出てきたのは、柳家小はださん。初めて観た。黒紋付が真新しい。羽織りが体に馴染んでいない。二つ目になってから、観客のいる環境で落語をやるのは初めてだそうだ。ザ・フレッシュ。入社式で緊張している新入社員を見ているような気持ちになる。実際、久しぶりの高座に緊張しているように見えたが、むしろそれが好ましく見えた。噺の後半に向けてギアが入っていく様子が心地よい。
二番手は、立川かしめさん。前座時代、一昨年ユーロライブでやっていた「月刊太福マガジン」で何度か観たことがある。その頃から野心的だけど嫌な感じはしない、仕事ができる若者のイメージ。立川こしら師匠のお弟子さんで、こしら師匠の動画作成や撮影を手伝った話を「月刊太福マガジン」でしていたのを覚えている。これまで色んな師匠の「金明竹」を聴いたことがあるけれど、かしめさんらしく演じていると思った。ちゃんと体に噺が入っている感じ。最後にちょっとアレンジが効いているのも、お!と思った。聴いてて楽しかった。
三遊亭遊七さんは、二つ目昇進直前の3月に柳亭小痴楽師匠の独演会、開口一番で観た。その時にやっていたのも「元犬」で、犬がとにかく可愛かったことを覚えている。先日フジテレビで放送された演芸番組「語楽-GORAKU-」で桂宮治さんも「元犬」をやっていたが、全然違う犬種だ…!と思った。宮治さんの賑やかなで元気な犬も良いし、遊七さんの利口だけど危なっかしい犬も良い。女性の落語家を観るとき、わたしはどういう心構えでいればいいのか迷ってしまい、少し身構えてしまうところがある。男性に近づこうと力が入っているところを見るのも疲れてしまうが、所謂女性らしさ、みたいなものを出されてしまうのも居心地が悪い。遊七さんは、性別を意識させないニュートラルな存在感が良かった。人間の性別を飛び越えて演じる犬のかわいらしさ。緊張しつつ、ひとつひとつを確かめるように演じる真面目さも良かった。
二つ目として、自分の名前を出して落語会ができる身分になったばかりの3人の瑞々しさ。前職の先輩が、4月に「新しい人が入ってくるというのは、それだけで嬉しいことだね」と言っていたことを思い出す。期待と緊張と不安をギュッと凝縮したような新しい存在を、今年の4月は全く見られなかった。かなり遅れて、春を感じる。
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