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【映画感想】お前はガンズ・アキンボで殺し屋の生き様を見ろ

 俺だ、コセン・ニンジャだ。
 アキンボ。アキンボ、アキンボ、アキンボ。
 アキンボとは、二丁拳銃のことだ。
 俺はこの言葉が苦手だ。
 あまりにもダサすぎる。
 「秋んぼ」は秋の田んぼみたいだし、「あきんど」「アメンボ」「赤とんぼ」などのぱっとしない言葉とも似ている。
 二丁拳銃でクールに決めた時に、近所のガキから「あっ!アキンボだ!」とか言われた日には、二丁拳銃は燃えないゴミに出して、代わりにショットガンを使い始めるだろう。
 とにかくアキンボという言葉はダサい。考えたやつのセンスを疑うぜ。
 そして、最近公開された映画『ガンズ・アキンボ』。
 見に行く予定はなかった。
 たとえ元ハリー・ポッターが二丁拳銃でデスゲームに強制参加させられると聞いても、「そう……お気の毒に……まあ、アバダケダブラとかで頑張れよ」という感じだったし、見るからにB級な映画だったからDVDリリースまで待つことにしようと思った。
 だが、予告編を見て気が変わった。
 うまくは言えないが、惹きつけられるものを感じた。
 デスゲームでマッチメイクされた時の演出が真のハードゲーマーのゲーム『LET IT DIE』に似ている所とか、RPGぶっぱなしてるシーンとか、そこここに本能をくすぐるような要素がちりばめられていた。
 それに最近はこういう投げやりなアクション映画というか、とりあえず銃を撃って敵が死ぬタイプの映画を映画館で見る機会がなかった。
 そして俺は『ガンズ・アキンボ』を観た。かなりやばかった。
 今日はそんな、元ハリー・ポッターがデスゲーム巻き込まれ系アクション映画、『ガンズ・アキンボ』の話をしよう。
 ネタバレはしないつもりだが、「少しでも語られるとネタバレで嫌だ」という奴は、やってる映画館はもう少ないだろうが、根性で映画館に行け。
 

 あらすじ
 

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 スマホゲームプログラマーでオタクのマイルズ(ダニエル・ラドクリフ)が、スキズムというデスゲーム配信動画サイトの掲示板を荒らしたら、IPと住所を特定されて自宅を襲撃されて気絶させられる。
 そして自宅のベッドで目を覚ましたら、両手には拳銃がねじ止めされていた。まさにシザー・ハンズならぬガンズ・ハンズ。スマホには『24時間以内にニックスを殺せ。できなければお前を殺す』との指示。
 ニックス(サマラ・ウィーヴィング)というのはスキズムで活躍するめちゃくちゃ強い殺し屋だ。11連勝くらいしている。
 こうして、ただのオタクがプロの殺し屋とバトルするという状況をマッチメイクされたわけだ。
 果たしてマイルズは、ニックスを殺してこの戦いに勝利し、明日の朝日を拝むことができるのか。
 

 とりあえず銃を撃って敵が死ぬ映画

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 本作は一応「とりあえず銃を撃って敵が死ぬ映画」に入ると思う。
 そのほとんどのキルスコアはマイルズではなく、プロの殺し屋であるニックスのものだ。
 彼女はゲーム感覚で人を殺すタイプの人間で、麻薬をキメながら麻薬工場を襲って主人公の5000倍洗練された二丁拳銃で無双するくらい強い。
 マイルズはデスゲームに参加せざるを得なくなっても、人を殺す覚悟を決められないくらい一般人だ。
 オタクだから運動不足で、歩きスマホしないで街を見るのは久しぶりとか言ってしまうくらいだ。
 こんな二人が戦えば、3秒でマイルズは死ぬと思われるがそうではない。
 マイルズは運と機転でなんとか生き残っていく。
 そして、スキズム中のある事件を境に、彼は大切なものを失い、ミームを継承し、真の戦士となり、とりあえず銃を撃ったら敵が死ぬようになる。
 あとは本編を見ろ。ビールを忘れるな。
 

 ガンズ・アキンボはノーモア★ヒーローズの親戚だ


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 ノーモア★ヒーローズを知っているか?
 殺し屋のトラヴィスがアメリカのサンタデストロイという町を舞台に、全米殺し屋ランキング1位を目指して戦うゲームだ。
 ガンズ・アキンボのスキズムの設定を見たとき、真っ先に思い浮かんだのがそれだった。
 殺し屋同士が殺し合い、敗北すれば死ぬ。勝利すればまた次の殺し屋と戦う。その無限のループ構造に生きる殺し屋が描かれているのがとてもよく似ている。
 ノーモア★ヒーローズはランキング戦だが、ガンズ・アキンボはリーグ戦と言えばわかりやすいだろうか。
 そして、殺し屋には事情がある。
 ノーモア★ヒーローズ側の殺し屋の事情は語らない。プレイして自分で確かめろ。
 ガンズ・アキンボでは、マイルズはスキズムに強制参加だが、ニックスには彼女の過去にまつわる事情があり、そのせいで彼女は殺し屋以外の生き方ができなくなってしまった。
 それが映画の中で大きな意味を持っている。
 ある意味では彼女はもう一人の主人公というポジションであり、ガンズ・アキンボは彼女の生き様の物語ともとれる構造になっている。
 どちらの作品でも、殺し屋というワードには特別な意味があり、その生き様を描くという意味では親戚関係ともいえるのだ。
 ガンズ・アキンボとノーモア★ヒーローズの両方を体感している戦士ならば、俺の言っていることを理解できるはずだ。
 観ろ、そしてプレイしろ。
 

 総評


 開始10分で、なぜ俺はDVDリリースを待てなかったのかと思い、開始30時間で、なぜ俺はビールを買わなかったのかと後悔した。
 そして開始から1時間半で、俺はすっかり満足してしまっていた。
 たとえ裏サイトの殺し屋バトル動画の映画でも、そこには真の戦士の生き様があり、真の戦士の偏在性を知ることができたからだ。
 マイルズは確かな成長を見せて真の戦士となり、ただの野良犬だったニックスも自らのミームを誰かに託せる真の戦士となった。
 派手なカーアクションとガンアクションがあり、伏線の回収やドラマ性もばっちりだった。
 あちこちに散りばめられたパロディ要素(ソニックやマリオはもちろん、カン・フューリーかサウスパークかのパロディもある)もいい感じに激しいガンアクションの間の清涼剤となってくれた。
 予告編を見て舐めていた精神は完全に燃え尽き、この映画は油断ならぬ火力を持った傑作B級映画だと感じた。
 重厚すぎるドラマや、アベンジャーズみたいな壮大なアクションだけが映画ではないと教えてくれる映画だった。
 夜にビールとポテチを食いながら観たい映画に困ったら、ガンズ・アキンボを観ろ。
 そして、一人の殺し屋とオタクの生き様を体感しろ。
 なぜなら、そこには真の戦士となるための鍵が隠されているからだ。

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