地下の煙たい喫茶店にて
「
いやー調子が悪いですよ、すこぶる。
平均すると残り80年くらい生きるわけでしょう。めんどくさいですよ。
どうしてだろう。
子どものころはいつかたぶん私よりも先に祖父母も両親も死ぬんだと考えると夜眠れなくなって泣いたりしてたんですけどね。
とにかく今は早く死にたい。
いや、死にたいは少しニュアンスが違いますね。
そんな積極的ではないです。
生きるのが面倒なので切り上げたい、ですかね、近い感情は。
朝起きたら思うんですよ『ああ、今日も起きちゃったな』って。
なんかあったでしょう、Web漫画で、朝起きたら腕にボタンがついてて、みんな押さなかったら全員助かるけど、押したら押した人だけ助かるっていうやつ。
知らないですか?SNSの広告でよく流れてきましたよ。無料期間で読みました。
あれの逆あればすぐに押したいですね。
『アルマゲドン』あるでしょう。あれずるいですよね。僕だったら喜んで自爆係に立候補しますよ。
早く人生終えられて、家族や友達はほめられて同情されて、半永久的に英雄視されるわけでしょう。うらやましいな。
ええ、わかってますよ。
多分本当に死が目前になったら急に生にしがみつくんだと思うんですよ。
そういう浅薄で想像力に乏しい人間であることは20数年生きてきた中でよくわかってます。
ただ今そう感じてしまっているんだから、それは今の僕にとっては真実なんですよ。
あなたはそれをわかってない。
運動も勉強も割とよくできましたよ。
中学高校と陸上部で、どちらも全国大会に出ました。短距離です。
それに値する練習量もこなしてたと思いますよ。
中学高校なんで成長期でしょう。毎週毎週タイムが伸びるので練習は苦ではなかったですね、楽しかった。
なので歯を食いしばって練習してたというよりは夢中になってやってましたね。
勉強もね、結果がすぐにでるでしょう。
スポーツよりも余程かけた時間がちゃんと結果に出る。
しかも勉強したことがその先の勉強することにつながっていくでしょう。
割と正当なゲームとして楽しんでやってたんだと思いますね。
そう考えてみると、その頃の夢中さを今も欲しがっちゃってる感はありますよね。
消化試合感。
思春期はボーナスタイムなのだから、大人になった今その感覚を追い求めるのは筋違いだよというのもわかってます。
SNSで夢中っぽく見える大人たちは、ちゃんと水面下で足をばたばた動かしているか、誰かからもらった穴の開いた浮き輪に乗っかっていることに気が付いてないか、どちらかだと思うんですよ。
僕は前者になれると思ってたんだけどな。
思うようにはいかないですね。
『イチローにも松井にもなれないことを受け入れてからが人生だよ』って上司に言われて。
そうですね、いい上司だと思います。
ただ例が2人とも野球選手だし、昔の人なので僕にはピンときづらいですよ。
まあ言いたいことはわかりますよ。
『カワイのように送りバントで生きる人もいる』って続いて言ってました。
カワイはわからなかったので後で調べました。
それで、今日話ってなんですか?
」
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