2022年夏の近況と、「ソシエタルデザイン」ことはじめ
ようやく実現した〈ギャザリング〉
先日、7月末の暑い日、京都市内でイベントを開催した。
コロナ禍を経て、本当に……3年ぶり?
直近のオフラインのトークイベント開催や登壇がすぐには思い出せないほど久々すぎて、隔世の感が否めない。
会場が隣接していたこともあって、これまで「不要不急」でなかなかお会いできなかった方が、次々と京都オフィスを訪れてくれた。ついにイベントの当日は、ゲストのご訪問で予定が埋まってしまう(アポイントをすべてこなすには本来3日ほど必要だった。が、今回は断念)。
必ずしも旧交を温めるばかりではなくて、「実際にお会いするのは初めてですね」なんていう会話からスタートするケースもしばしば。この数年間の変化を象徴していると思う。感染症の盛衰に関わらず、これからはオンラインで出会い、一度も対面しない関係がもっと当たり前になってくるのだろう。
だからこそ、実際に会う価値は高まる。
ずいぶん前、パンデミックの渦中にこんなエントリを書いた。
その希望的観測は、2年を経て現実のものになりつつある。
特に今回はイベントを機に、文字通りのギャザリングができた。
テーマに沿って関心のある人たちが集うという価値。
イベントの数時間のみならず、ある共通のプロトコルのなかで多くの方と深く対話ができたのは、実に感慨深い。
「社会的であること」への関心の高まり
ありがたいことに会場はほぼ大入り満員。
50名も収容できない会場で、終了後には退出するのもひと苦労なほど、対話の輪が広がっていた。
テーマは事業づくりとローカルについて。
2021年から取り組む京丹後市の事業:丹後リビングラボの一環だ。
レポートはすでに各所から出ているので、ご関心のある方はお目通しいただけたらうれしい。
このような共通のプロトコル=(ローカルも含めた)社会との関係性というテーマには、かつては情報感度の高い生活者が関心を示す傾向が強かった。
特に震災以降の価値観の変化や多様化するライフスタイル、停滞する経済などを背景に、個人としてのオルタナティブな選択を考える動きが先行していた。2010年代にイベント等を開催しても、比較的企業の多くは静観していたように記憶している。
しかし、最近では反応が変わってきた。
好むと好まざるとに関わらず、企業は自社のマーケットだけに固執できなくなっているし、社会的要請の高まりにも伴い、自らが及ぼす倫理的な影響を無視できなくなっている。
単線的な価値形成が通用しない時代だからこそ、中長期にわたる企業のあり方、存在意義そのものが問い直されているのではないだろうか。
僕自身、社会性を帯びたテーマについて、近年は公共セクターだけではなくて、企業の方々からお声がけをいただく機会が格段に増えている。
ソシエタルデザインの取り組み
これまで、ソシエタルラボ(Societal Lab)という屋号で、長らく地域や社会と仕事をしている。単なる社会貢献とか単発的な地域活性策をやるつもりはない。むしろ想いはその対極にある。いかに価値が持続的に、発展的につくられるかを考え、さまざまなプロジェクトを実践してきた。
ステークホルダーは多岐にわたり、参加型デザインを志向する。
当然ながら、行政とだけ、企業とだけ、で完結する仕事はあり得ない。
社会あるいは地域は、さまざまな要素で構成されるからだ。
老若男女の市民が暮らし、日々の営みを続ける事業者が無数に存在する。
当事者としての市民や生活者が関わることで、実態・実質の伴う体験やアウトプットが生まれやすくなる。
そして、取り組みを駆動させる存在として、企業の存在は重要だ。企業が主体的に参画することで、経済性や関係性は循環しやすくなり、発展的に価値が生まれるしくみが形成されていく。
たとえばこれまで、自転車を含むモビリティや、食や観光、暮らしや働き方といったテーマで、これからのあり方を考え、生み出すためのリビングラボやそれに類する価値の共創を果たしてきた。
(このあたりの具体的な実践は、機会をあらためて著してみたい)
それぞれが目的をもって、踊れるように、踊りたくなるように。
共感できるビジョンと、自律性を促すデザインが肝になる。
このような関係性を基盤としながら、社会と企業、生活者とをつなぎ、新たな価値を生み出すソシエタルデザインに取り組んでいる。
では、企業の関わりしろや、関わる意味とはなんだろう?
ソシエタルデザインの舞台となる「フィールド」に着目して、筆を進めてみたい。
(後編に続きます)
<参加者募集中のプログラム>
近く京丹後市で、アクティブワーキングを開催する。
京丹後は、海に面する京都北部に位置するまち。
ローカルイノベーターが多く、地域資源を活かしたユニークで創発的な動きが同時多発的に起こっている場所だ。
(その特徴や魅力は、折に触れてお伝えしていきたい)
後編でも紹介するが、さまざまな人々がひとところで関わるアクティブワーキングは、フィールドにおけるギャザリングであり、それ自体が共創的な活動でもある。
思いもよらない気づきを得たり、新しい連携や枠組みの可能性に近づく。
仮説をもって臨むことで、自社に還元できる機会も大いに膨らむはず。
以下、ご参照のうえ、ぜひ参加してほしい。