谷口桂子

作家、俳人 1961年三重県生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒。著書に小説「越し人 芥川龍之介最後の恋人」(小学館)、ノンフィクション「祇園、うっとこの話『みの家』女将、ひとり語り」(平凡社)、評伝「愛の俳句愛の人生」(講談社)、インタビュー集「夫婦の階段」など

谷口桂子

作家、俳人 1961年三重県生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒。著書に小説「越し人 芥川龍之介最後の恋人」(小学館)、ノンフィクション「祇園、うっとこの話『みの家』女将、ひとり語り」(平凡社)、評伝「愛の俳句愛の人生」(講談社)、インタビュー集「夫婦の階段」など

マガジン

最近の記事

「私の物語」より、今日の一句㉖

こんばんは。 この投稿も、今日が最後になりました。 まず、今日の一句です。 転居先不明の返信秋しぐれ 句に合わせた左時枝さんの絵は、紫のアネモネです。左時枝さんとの句画帖「私の物語」には、あと二句残っておりまして、「炎昼の喪服に秘める妬心かな」「侘助や褪せし葉書の男文字」です。 それで「私の物語」は完結となるわけですね。 神保町のギャラリー&カフェバー「クラインブルー」での俳句の展示も、今日で無事終了しました。ありがとうございます。 またしばらくしましたら、別の形でn

    • 「私の物語」より、今日の一句㉕

      こんにちは。今日は冬に戻ったような寒さですね。 さて、今日の一句から。 春昼に自分のための絵本買ふ これも展示したいと思った句です。句に合わせた左時枝さんの絵はオレンジ色のカラーです。 この前、友人が集まったとき、バケットリストの話になりました。死ぬまでにしたいことですが、私は俳句に関しては、あと二冊句集を出したい。それぞれテーマも決まっていて、第二句集は「夫婦」、最後の句集は波郷さんの「惜命」のようなもの。 実は大それた野望がありまして、河野裕子さんの辞世の歌「手を

      • 「私の物語」より、今日の一句㉔

        こんにちは。この連載も、今日を含めて残り3日となりました。 なんだか名残惜しいです。 句集「妬心」を出版した頃で、さらに思い出したことがありました。 その書評を、辻井喬さんに、角川の「俳句」に書いていただきました。「飛ぶ前の吐息」というタイトルだったと思います。 辻井喬/堤清二さんとは、週刊朝日の人間データバンクという4ページの人物インタビューで出会いました。当時、セゾングループのトップを引退か?ということで、注目を集めていた時期。単独インタビューは到底無理と思われていま

        • 「私の物語」より、今日の一句㉓

          こんにちは。 この投稿も、残り4日となりました。いまだに、バッジを獲得とか、マガジンの設定とか、よくわからないまま続けています。 さて、今日の一句 秋時雨返さぬままの男傘 句に合わせた左時枝さんの絵はバンクシアです。 一昨日の投稿で、処女句集「妬心」が出たあたりのことを書きました。書いていたら、いろいろ思い出したことがありました。 この句集は角川書店から出ています。当時の「俳句」の編集長はAさん。風貌も独特で、たいへん個性的な方でした。それでもどこか合うところがあった

        マガジン

        • 私の物語
          22本

        記事

          「私の物語」より、今日の一句㉒

          こんばんは。 今日、3月4日は、私の父の誕生日。去年まではお祝いすることができました。血圧が高かったので、直木賞作家・高橋治さんおすすめの千葉のいわしのごま漬けを送るのが習慣でした。お礼の留守電メッセージが、いまもスマホに残っています。 今年はもう送れません。 昨年4月13日、84歳で死去。おいしいものを食べるのが好きだったので、お正月に開高丼で知られる「こばせ」推薦のところから越前がにを送ってもらい、一緒に食べたのが懐かしい思い出・・。 懐かしい・・という言葉は適切では

          「私の物語」より、今日の一句㉒

          「私の物語」より、今日の一句㉑

          こんにちは、今日はひな祭り。「私の物語」も残り少なくなりました。 では、今日の一句から。 抱かれて畳に広がる夜寒かな この句は私の処女句集「妬心」(角川書店刊)に入っています。「妬心」が出版された当初はそれほど反響はなかったのですが、その年の終わりの「俳句年鑑」の巻頭言に、草間時彦さんが今年印象に残った二人の句集として「妬心」を取り上げてくださいました。注目した句として、抱かれて・・の句をあげていただいたのですが、内容は忘れました。草間さんの紹介によって、俳句総合誌から

          「私の物語」より、今日の一句㉑

          「私の物語」より、今日の一句⑳

          こんにちは。 昨日で、20日間連続投稿だそうで、ここまで続けられる人はめったにいませんよ! と、noteさんにほめていただきました。そうですか? バッジを獲得とか、ほめてくれるのはnoteさんだけのような気がしますが、私のひがみでせうか・・ さて、今日の一句です。 七五三遠目にパンを買ひにけり クラインブルーに展示中の俳句です。この句は、大体の方が意味はわかるといわれます。わからないといわれるのは「三といふ数の重さよ草いきれ」。三人ということなんですけどね。説明しないほ

          「私の物語」より、今日の一句⑳

          「私の物語」より、今日の一句⑲

          こんばんは。三月になりました。 三月の異名に夢見月というのがあったと思います。なんとなく三月に似つかわしいですね。 先週、クラインブルーの近くの、神保町のさくら通りを歩いていたら、早くも桜が咲いているのに気づきました。それも、この通りの入り口と出口に二本ずつ。計四本だけです。ソメイヨシノより濃い桃色で、花が下を向いて咲いていました。おかめ桜というのだそうです。なぜそのような名前なのかはわかりませんが・・ さて、今日の一句です。 小春日や子のなき午後の暮れやすし これも展

          「私の物語」より、今日の一句⑲

          「私の物語」より、今日の一句⑱

          おはようございます。いよいよ二月尽となりました。 クラインブルー展、行く予定だったけど、やはり見合わせる・・という連絡が私のところにも入っています。そんな中、「私の物語」のパートナー、女優の左時枝さんが来てくださいました。 まず、入口にずらっと?並んだ私の本にビックリされたよう。知り合ってから出版した本は献本していますが、それまでの本はご存じなかったんですね。 同様に、この前別のところで、小栗康平監督の「埋もれ木」が話題になったのですが、その映画に左さんが出演されていることを

          「私の物語」より、今日の一句⑱

          「私の物語」より、今日の一句⑰

          こんにちは。いきなり今日の一句です。 またといふ言葉頼みて夏果てぬ 自選三句などのアンケートがあったときには必ず入れる句です。今回の俳句展にも展示しています。この句については、いろんな方が、いろんなことを書いてくださいました。週刊新潮に嵐山光三郎さんが俵万智さんと連載しているコラムにも取り上げていただき、展示会場にも添えてあります。 神保町のギャラリー&カフェバー「クラインブルー」の展示は3月8日まで。よろしければ、どうぞいらしてください。

          「私の物語」より、今日の一句⑰

          「私の物語」より、今日の一句⑯

          こんにちは、イベントの中止が相次いでいますね。クラインブルー展も、行く予定だったという人たちからキャンセルが出ています。そうかと思うと、当然中止と思っていたイベントが、開催しますといわれて慌てたり・・。わかりませんね。 さて、今日の一句 煙草消す男に帰心小夜時雨 煙草を吸う人は少なくなりましたが、この情景、心情は読み取れるのではないでしょうか。指先でワイシャツの袖口をそっとずらして時計を見るのも、帰ってほしくない人にされるとどきっとする仕草ですが、時計を身につける人も少

          「私の物語」より、今日の一句⑯

          「私の物語」より、今日の一句⑮

          こんばんは、ニュースから目が離せない毎日になりましたね。 昨日、お昼に入った飲食店では、お客さんの数にさほど変化はないと聞きましたが、夜行ったお店ではさすがに出入りもまばらでした。 さて、今日の一句 短夜に触れられぬままの紅おとす この句もわりと取り上げられた句ではないかと思います。小説などでそういう場面はあっても、俳句としてまだ詠まれていない題材だと、どこかで書いていただきました。 3月8日まで、神保町のクラインブルーで俳句の展示をしています。 ぜひ、見に来てくださ

          「私の物語」より、今日の一句⑮

          「私の物語」より、今日の一句⑭

          こんにちは、連休も終わり、今週で2月も終わりですね。 そういえば、 くちびるにくちびる残り二月尽 というわたしの句がありました。若い頃の句で、字余りに気づかず「くちびる残りて」として朝日俳壇に投稿しました。それでも金子兜太先生がとってくださいました。朝日俳壇初投稿は、すでにアップした、「私の物語」巻頭の、「春の雨どちらともなく時計はづす」で、加藤楸邨選。朝日俳壇は簡単なのかと思ったら、そうでもないようですね。 さて、今日の一句 子守唄うたってみたし春の宵 この句は展

          「私の物語」より、今日の一句⑭

          「私の物語」より、今日の一句⑬

          こんにちは、投稿14日目となりました。また、元のタイトルに戻してみました。いかがでしょうか? さて、今日の一句 靴を履く背中見ている寒さかな 女優・左時枝さんとの句画帖「私の物語」の中で、いちばん好きという声が多かった句です。今開催中の俳句の展示の案内状にも印刷されています。案内状を受け取った方から、「切ない御句」という感想もいただきました。 読む人によって、いろんな情景が想像できるのでしょうか。 3月8日まで、神保町の「クラインブルー」で俳句の展示をしています。どう

          「私の物語」より、今日の一句⑬

          12 いつと問へず汗浮く喉を見ていたり

          こんにちは、谷口桂子です。昨日に続いて、「私の物語」より今日の一句をタイトルに入れてみました。あまり変わり映えはしないでしょうか? 操作を間違えて、自分の投稿に「スキ」してしまいました。すみません。 今日は天皇誕生日、私の誕生日でもあります。 朝、目覚めて思ったのは、死ということ。昨年の父の死がこたえているのが、漠然とあったものが我がこととして考えるようになりました。 生きてゆくということは一刻一刻死への接近を意味している、と吉村昭さんの小説の一節にもあります。こうして一日

          12 いつと問へず汗浮く喉を見ていたり

          11 引き止める術なく杏煮てをりぬ

          こんばんは、谷口桂子です。 「私の物語」より、今日の一句、タイトルに入れてみました。どうでしょう? いまだに、私の投稿が読まれているのかどうかわかりません。 俳句の展示、前半の二週間が終了しました。先日、来ていただいた方から、白いいちごをいただきました。私は口にするのは初めて。味わうというより、鑑賞用のような美しさ。 以前、ギフト用に青いバラを探したことがありました。ある花屋さんで見つけましたが、生命力がなく、一日で枯れてしまうこともあると聞いて断念しました。 知らないとこ

          11 引き止める術なく杏煮てをりぬ