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言葉の足りない料理店 ┃#完成された物語

仕事終わりに小料理屋に行くことになった。
「腹を割って話そう」と誘ってきた上司は客先への緊急対応のため、俺一人で先に向かう。
曰く、大将は堅気で目利きは一流らしい。

店に入ってカウンター席に腰を下ろす。
いくつか個室もあり、中の様子は伺えないが先客がいるようだ。

女将が静々とそのうちの一つに入った。
「坊主殺しです」
場にそぐわない物騒な言葉に思わず聞き耳を立てる。
「良い鉄砲が入っていますが、どうなさいますか」
「頼む」

大変だ。
公に出来ない取引がすぐ側で行われている。
店もグルだ。
堅気でも何でもない。
あと坊主が死んでいる。

「今日のは特段鮮度が良くて余す所が無い。お客様はどうなさいますか。頭にしましょうか。目玉にしましょうか。身も程よく締まって良いですよ」
大将の鋭い視線に震えながら坊主の冥福を祈る。

俺はどうなってしまうんだ。
ふと、上司に誘われたときの言葉を思い出す。
「腹を割って」

俺は慌てて店を飛び出した。

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クロモ、河豚、マグロ。

書き終わってから言うのもなんですが、「坊主殺し」がメジャーじゃない気がしてきた……。
モズクのような海藻の一種で、酢の物にすると美味しいです。

どうしても「注文の多い料理店」が頭を過ぎってしまうという、これまでにない困難さがありました。

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