東南アジア起業、上場の選択肢(前編):各国の上場市場
こんにちは、越です。
今回は、少々ニッチな話題ながら「東南アジアで起業した会社の上場選択肢」について書いてみたいと思います。2部に分けて、前編である今回は「各国の上場市場について」、次回の後編では「日本で上場する方法」について具体的に書く予定です。
ちなみに、少し前にアップした「東南アジア起業、本社は日本?シンガポール?」をたくさんの方に読んでいただいています。もし東南アジア起業に関心がある方は、ぜひこちらも合わせてご覧ください。
東南アジアの会社、特にスタートアップとして上場しようと思った時、現実的な選択肢がいくつかあります。
現地の上場市場
いままで、ほとんどの現地スタートアップは自国の市場には上場しませんでした。
理由は、市場が小さいから。そこに行くなら海外の方がいい、と。
ただ、ここ10年で新産業が育ってきたこと、やはり言語障壁を考えると自国のマーケットが上がりやすい・プレゼンスを出す意味がある、ということでタイやインドネシアでは自国市場への上場も見られるようになってきました。(インドネシア例:GOTO, Bukapalak)
シンガポール
東南アジアで最も登記が多いので上場選択肢になりますが、僕の知る限りここ10年に東南アジアで創業したスタートアップでシンガポール市場に上場したところはほとんどありません。
理由は、流動性が小さいが故に、上場しても資金調達額が小さく、コストが1億円かかるのに5億円しか調達できない、のように意味が薄いから。
それしか選択肢がなければもちろんするでしょうが、以下に書く他の市場に上がった方がいいか、と大概なります。
アメリカ(NYSE/NASDAQ)
大成功した会社は、ASEANの証券市場よりは、アメリカのNYSE/NASDAQに行きます。
が、これは日本の東証やシンガポールのCatalystに比べて一桁大きいので「ある程度」ではなく「大成功」していないと選択肢に挙がりません。(例:Grab=NYSE, SEA=NASDAQ)
オーストラリア
シンガポールとアメリカの中間で、かつ英語の市場として、豪州があります。
特に欧米人起業家で、東南アジアで大成功ではないけど上がれるくらい、という場合に東南アジアともAPAC繋がりで商圏が近いから、などの理由も含めてオーストラリアを選ぶケースは散見されます。(例:Ensogo, iCar)
日本
2014年頃、経産省主催のASEANビジネスカウンシルという会合にて「東南アジアのスタートアップに日本で上場の選択肢を!そのためには日本語必須の状況を改善すべき」というプレゼンをしました。その際に東証のマザーズ(当時。現東証グロース市場)とシンガポールの同様の新興市場であるCatalystを比較をした表がこちら。
この比較から、東証の方が流動性(調達できる資金)が大きい、創業者の株を売却するまでのロックアップ期間が短い、など多くの点でシンガポールよりも日本を選ぶ方が企業側からはメリットがある、ということを伝えたのですが、そこでネックになるのが「全部日本語で手続き」と言う点でした。超細かい会計記録なども含めて。逆に、そこをどうにかしてくれたら日本にも大きなチャンスがあると思います。
ということで東南アジア企業が上場する場合の選択肢は、創業者が日本人か外国人か、規模がどれくらいか、プレゼンス・信用力を得たい市場がどこか、によって答えは変わりますが、多くの日本人経営者であれば日本の東証上場はかなり合理的な場合が多いかと思います。
その際に使えるスキームが、CI(コーポレートインバージョン)かJDRなのですが、こちらは次回の後編にてお伝えします。