
「産業交流展2024」参加レポート
こんにちは。
公社デザイン経営支援事業では、11月20日(水)から22日(金)の3日間、東京ビッグサイトで開催されていた産業交流展に参加しました。

産業交流展は、原則として首都圏に事業所を有する中小企業などの優れた技術や製品を一堂に展示し、販路拡大、企業間連携の実現、情報収集・交換などのビジネスチャンスを提供することを目的としています。
私たちは毎年、(公財)日本デザイン振興会、(地独)東京都立産業技術研究センターおよび(公財)東京都中小企業振興公社の3団体で担う「東京都デザイン支援」ブースに共同出展しています。今年も公社はデザイン経営支援事業の紹介や中小企業とデザイナーとのコラボ事例を展示・紹介しました。
東京都中小企業振興公社
デザイン経営支援事業
公社では、産業交流展にあわせて、3つのデザインコラボマッチング事例を展示しました。
事例1.サステナブル素材を使った不思議な形のミニバッグ
「TETO LALA」
紅日裁断×U.K Concept&Design

塩化ビニール(PVC)加工に定評のある有限会社紅日裁断。作業工程で生まれる廃材をアップサイクルしたオリジナル商品ブランド「MISTY LAYER」を展開しています。
デザインコラボマッチングでは、「半分透けて半分隠れる」という独自素材を用いた、若いZ世代向けのミニバッグをつくってほしいというお題に対し、U.K Concept&Designの上松氏は「可愛さ」をキーワードに2つのテトラ(正四面体)が変化する世界でたった一つのデザイン*を提案しました。(*意匠登録出願中)
紅日裁断はサブブランド「MISTY POCO」から、ミニバッグ「TETO LALA(テトララ)」として2024年8月に発売しました。

現代女性の必需品であるキー・リップ・スマホの三種の神器が収納できるサイズを実現するため、よりコンパクトに見えるように機能とデザインのバランスを工夫。さらに、2way式がわかるようにできるだけ単純な構造にしました。本体とファスナーのカラーリングを変えることで、イキイキ&ワクワク感を演出しています。実際の商品をご覧になった来場者の方からは、「中に入れるものの形状によって、バッグの形態を変えることができるのがおもしろい」と、注目を集めていました。
事例2.特殊印刷技術を主役にしたインテリア
「popca クリスマスツリー」
ヤマックス×ooooo

ヤマックス株式会社は、約80年にわたる歴史の中で培ってきた印刷技術を活かし、2022年よりBtoC事業に着手しています。「お客様の想いをカタチにする」という考えのもと、oooooのミヤタシゲヤ氏と共同開発がスタート。約1年をかけて、オリジナル商品「popca」が誕生しました。
「popca」第一弾の『冬のクリスマスツリー』は同社の持つ特殊印刷技術により、薄いフィルム素材でありながらステンドグラスのようなキラキラ感や微細な霜の模様を表現しています。「印刷技術そのものを魅力的な商品にするため、折り紙や飛び出す絵本の構造を元に、オフシーズンには平らに収納できるお飾りを考案しました。ヤマックスの印刷技術を活かし、奥行きと立体感を持つ新しい商品が完成しました」(ミヤタ氏)
季節を飾るインテリアの第一弾として、『冬のクリスマスツリー』を2024年11月にリリース、自社ECサイト「tecoco」で販売を始めました。今後も春夏秋冬にあわせて新しいデザインを展開していく予定です。

会場でもデジタル印刷のツリーが浮かびあがるようにライトを当てて展示をしました。少しわかりにくいのですが、ライトの向こうにほのかにツリーが映っています。シンプルな造形と特殊印刷技術の掛け合わせで、大人の部屋に馴染むインテリアとして注目を集めていました。
事例3.サステナブル化粧品の世界観を統一して伝える
「wood-ness」コミュニケーションデザイン
LA・BHEN&CO×トムテ

LA・BHEN&CO株式会社の新しい化粧品ブランド「wood-ness」は、次世代のバイオマス素材CNF(セルロースナノファイバー)を中心に成分処方を組み立てた化粧品です。「未来の人たちに受け継ぐ化粧品を作りたい」「明確なブランドアイデンティティとコンセプトを確立したい」という代表・エリー氏の想いを表すキーワードは、「DEEP」「COOL」「STYLISH」。それを受けて、トムテの榎本氏は、事前に徹底的にヒアリングとワークショップを行い、エリー氏のビジョンを理解した上でプロジェクトをスタートしました。
「美しい水源や豊かな森を象徴するターコイズブルーにキメ細かい紋をデザインすることで、日本の美と木の繊維を表現しました。また、紫のアウトラインを持つオレンジの縦帯は、明るさと神秘性を表現しています。凛とした美しさを持ちながら、朗らかで時に個性豊かな人格を感じるパッケージデザインに仕上げました」(榎本氏)

パッケージラベルを彩る紋は、ナノサイズの繊維を表現するため、オリジナルパターンとして様々な検証を行いました。ライン間にあえて“抜け”をつくることで密度に絶妙なバランスを持たせつつ、実寸で見た時の距離感とパッと見の印象、どちらも成立するようなデザインとなっているそうです。
デザインコラボマッチングでは「パッケージデザイン」のみの依頼でしたが、プロジェクトの進行に伴い、キービジュアルの作成やWebサイトのディレクションなど、コミュニケーションデザイン全般を榎本氏が担当することになりました「お客様の心に触れるデザイン、製品の品質をデザインを通して伝わるよう何度も修正をお願いしましたが、丁寧に対応していただき、とても感謝しています」(エリー氏)。
クライアントとデザイナーの想いが結晶し、ブランドの立ち上げへとつながった好例となりました。
▼「wood-ness」開発に込めたエリー氏の想いはこちらの動画からご覧いただけます
日本デザイン振興会
東京デザインコンペティション事業
続いて、「東京ビジネスデザインアワード」(TBDA)の成果事例を紹介します。

「東京ビジネスデザインアワード」とは、都内中小企業と、優れた課題解決力・提案力をあわせもつデザイナーとの協働による、新しいブランドやビジネスモデルの開発を目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。2024年で13回目を迎え、多くの商品化・事業化の事例が誕生しています。

事例1.オリジナルブランドの構築
「wemo」
コスモテック×Kenma inc.
2016年度の優秀賞に選ばれた「肌に貼って直接書けるメモシール」。独自の高分子技術を駆使して、さまざまな「機能性フィルム」を展開しているコスモテックがテーマとした水なしで肌に貼れる「特殊転写シール」の技術に対してkenmaが提案したのは、「ウェアラブルメモ(身につけるメモ)」でした。
当初は肌に直接貼りメモができるシールを想定していましたが、最終的にはシリコンバンドに変更、書き心地を保ちながら消し跡が残らないコーティングを開発しました。「wemo」は手首に巻いたバンドの表面に、直接ボールペンで書き込みができ、消しゴムで消せる画期的なツールとして話題になり、発売6年で100万本を超える大ヒット商品となっています。
事例2.新マーケットの開拓
「FROM NOWHERE」
カドミ光学工業×クラウドデザイン
2014年度の最優秀賞を受賞したのは、光学ガラスの特徴を活かした無宗教式に祀るための「祈りの道具」。少子化や核家族化に伴って墓や仏壇を取り巻く環境が変わる中、現代のライフスタイルに合った新しい供養の様式を提案しました。カドミ光学工業とクラウドデザインがこれまで光学機器の部品製造で培ってきた高度な精密接合技術を使って素材と技術の魅力を引き出した美しい道具「FROM NOWHERE」に挑戦しています。
想いを投影するための空のフレーム「Prism Frame [分光枠]」や、遺灰や形見を納めるためのケース「Memento Case [形見箱]」、光学ガラスのお鈴(りん)「水平鈴」を展示。光学ガラスの美しさや手仕事ならではの丁寧なものづくりを感じることができます。

事例3.業界ニーズへの対応
「SICRASS(シクラス)」
マイステック×トムテ
2022年度のテーマ賞を受賞した「SICRASS(シクラス)」。若手職人の育成と収益向上のためにこれまで見えにくかった職人の技術を「可視化」し、その価値を医療業界を中心とした課題解決に活用するビジネスモデルと、そのブランド展開を提案しました。
外科手術で使用するメスなどの「医療器械」を中心に展開するソリューションサービスで、減りゆく手加工の医療器械職人の育成と、その技術継承を支援するとともに、収益向上を目指し、手術用鋼製器械メーカーのマイステックの新事業として、トムテとともに始動しています。
東京都立産業技術研究センター
技術支援

東京都立産業技術研究センターは、都内中小企業の技術支援を行う公設試験研究機関です。地域技術支援部プロダクトデザインの事業紹介パネルを展示しました。同センターでは、デザインに関する技術相談、試作支援、各種講習会を実施。また大型プリンター、カッティングプロッター、レーザー加工機、アパレル機器など試作開発の際に必要な機器が利用できます(要事前予約・別途利用料がかかる)。

中小企業の技術力とデザイナーのアイデアが結実した成果事例を、たくさんの方にご覧いただきました。
ブースにお立ち寄りいただいた皆様、ありがとうございました!
また次回をお楽しみに!!