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あなたの名を呼ぶその先に。note21

手を、差し伸べると同時に。
あなたの腕は降りてきた。

握るより先に。
あなたの手は包んでくれた。

さらっとして、しっとりして
よく馴染んだあの感触は、もういない。
わたしから、振り解いたのだから。

やり方が、悪かった。
後先は、考えなかった。
そんなことよりも、まずはあなたを
わたしから遠ざけないといけなかった。

なにも知らないくせに
一丁前に生意気なことを言うわたしは
あなたにどう映っていたんだろうね。

愛されないことに捻くれていた。
与えられないことに唾を吐いた。
後頭部の髪の毛を引っ張って
水面に何度も叩きつけたって
わたしのこの根性は洗い流せない。

酷い人間。

ほんとうに伝えなきゃいけなかったことは
ひとつと伝えられただろうか。

苦しかった。
あなたを好きと言えなくて。
苦しかった。

あなたの名を呼ぶその先に
あなたがいないことを突きつけられて。
自分の卑しさに打ちひしがれながら
自業自得の黒い砂を浴び続けて。

それでも、これでよかったんだと。
どうか、もう一度。
どうか、もう二度と。

そうやって浮かんだり沈んだりしながら
もがいていないと、いけない。
あなたの傷の何倍かはとっくの昔に。
そう思ってしまうだけ、まだ浅い。

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