そこにあるもの。note25
いつも、そばにあると思っていた。
いつも、ここにあると思っていた。
思っていた、だけだった。
今度どこに行こうとか
今度なにを食べようとか
いつかも、またねも、選ばなかった。
未来の約束がね、ほしかったんじゃないの。
いま、ここに、あなたと、ともに。
過ごす時間が、手元にあってほしかった。
どんな景色も、どんな世界も。
曇りだって、雨だって、あなたと並んで。
晴れの日のように、笑って見つめ合って。
ゆっくりと歩きたかっただけなの。
ね。
そんなこと、伝えたことあったかな。
叶わなかったなら
叶えようとすればよかったね。
そんなこともしないで
先に諦めてしまって、ごめんね。
でもさ、これだけは譲れない。
わたしでなくてよかったならば
あのとき、わたしを選ばないでほしかった。
勝手なのは、あなただって、一緒だよ。
わたしがあなたを信じて選んだのか
わたしがわたしを信じて選んだのか
そのどちらでもあって、どちらでもなくても。
この人の特別になりたいと願ってしまうと同時に
失いたくないと願うようになってしまった。
そんな弱さが原因だってことも
そんな自分が原因だってことも
分かりきったことだけど。
怖かった。
あなたの隣を歩くことの許可を
わたしがわたしに強いていたの。
見合うか見合わないかなんて
誰が決めることでもなかったのに
いつもいつも、自分に問いかけてた。
今日のわたしが、あなたに相応しいか。
精一杯に好きでいた結末が
あなたから離れることの決断だったのは
このままの並行線で縮まらない距離に
途方もなく、嫌気がさしてしまったから。
いつまでも、この寂しさに
耐え続けることなんて、誰にもできない。
不甲斐ないのは、わたしだ。
置いてきたそこにあるもの。