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いま、コピーライターが「決して使ってはいけない」言葉

こんにちは。名古屋のコピーライターkosakuです。
先日家の新聞を読んでいるとタイトル写真のチラシを見つけました。
皆さんご存じ、某有名チェーンのチラシですね。
美味しそうな写真の脇に次のようなコピーが添えられています。

応援するなら!
観戦バーレル


手に汗握る瞬間も、歓喜の瞬間も。
みんなでオリジナルチキンを囲めば、
盛り上がりは最高潮!
夏の応援のおともに、
今だけおトクな
観戦バーレルをどうぞ。

なんだか奥歯にモノが挟まったようなコピーですが、なぜこのような物言いになっているのでしょうか?

「オリンピック観戦にはケンタッキー!」

そう大きな声で言えばいいのに。


軽々しく使えない言葉がある


広告業界の人なら当然ご存じだと思いますが、実はこれ、大人の事情があるんです。「オリンピック」という言葉やそれを想起させる表現は、国際オリンピック委員会(IOC)や各国オリンピック委員会(日本ではJOC)が保有する知的財産権に該当し、平たく言えば使うことを禁止されているんですね。

もしこのチラシの中で「オリンピック」という言葉が使われてしまった場合、知的財産権の侵害で法的措置が取られる可能性が出てきます。広告の差し止めならまだ良いですが、損害賠償を請求されることも考えられますので、コピーライターは旬の話題だからと言って「オリンピック」という言葉やそれを想起させる表現で広告を作ってはならないのです。

もちろん、委員会に莫大なスポンサー料を支払っている公式スポンサーは「オリンピック」という言葉を自由に使うことができます。オリンピックのネームバリューで広告プロモーションを行えるのはお金を払った企業だけ。当たり前と言えば当たり前のことですね。

ここで先のチラシのコピーをもう一度見てみましょう。

「オリンピック」という言葉は一言も使っていません。五輪マークも当然ないですし「応援シーンに最適なバーレルがありますよ」というアピールに留まっています。

…でも、まあ、普通の感覚を持っている人なら「オリンピックのおともに買ってほしいんだな」と分かります。

このようにイベントの公式スポンサーではない企業が、そのイベントを連想させるようなプロモーション活動を行うマーケティング手法を「アンブッシュマーケティング」と言います。


ビッグイベントにまつわるアンブッシュマーケティングの好事例


過去にあった事例として、南アフリカのKFCがこんなアンブッシュマーケティングを展開して話題になりました。

https://spodigi.com/sports-business/sponsorship/kfc-ambush-ad-like-neymar/

2018年のロシアワールドカップ直前に、南アフリカのKFCはサッカーをモチーフにしたTVCMを展開しました。サッカーの試合中のラフプレーを大げさに痛がり転げまわっていた選手が、そのまま街中のKFCに転がり込むという内容で、当時サッカー選手がよくやっていた「シミュレーション」と呼ばれる行為を揶揄したストーリーです。
KFCの思惑通り、動画はバズって大成功。「ワールドカップ」という言葉を使わずに大会を想起させ話題をつくることに成功しました。

これはたまたま問題が起こらず良い事例になりましたが、アンブッシュマーケティングを行う際は法的リスクや倫理的な問題を慎重に検討する必要があります。
お客さまから「今度の広告はオリンピックにちなんだ表現にしてほしい」というオーダーが来たら、こういったリスクがあることを伝えて、まずは違う表現を検討してもらいましょう。ウチみたいな小さい企業の広報活動なんて見てないでしょ?と思ったら大間違い。IOCは期間中、目をギラギラと光らせています。

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