年末年始の読書2冊(2019年)

毎年、年末年始は読書をして静かに過ごします。

昨年読んだのは「ブラック・スワン」と「サピエンス全史」でした。まとまった時間がとれるので、分厚い本を読むのにちょうど良いのです。

今年は次の2冊を読みました。どちらも自分や世界の見方を再考させてくれる良書です。

1冊目 「自意識(アイデンティティ)と創り出す思考」

本書の要点は単純明快である。自分自身にフォーカスを向けるのをやめ、創り出したい成果にフォーカスを合わせること、それだけだ。
(終章「真の創造プロセスに向かって」より)

よくある自己啓発本で重要視されている、自意識(アイデンティティ)や自己肯定感、ポジティブ思考は、成果を出すために本当に必要なのでしょうか?

まじめにスポーツに取り組んだことがあれば分かると思うのですが、勝負の世界は非情です。思うような成果が出せず、自分の実力のなさに打ちのめされることもあります。自己肯定感やポジティブな感情を持ち続けることは難しいのではないかと思います。

人が実際に有能であるとき、自分自身についてどう思っていようと関係はない。関係があるのは、現実とつながっているかどうかだ。自身の能力を正しく捉えられていることも現実の一部である。物理学者で柔道の達人でもあるモーシェ・フェルデンクライスは、人間の学習プロセスを研究してこう述べている。「意志の力は、実行能力が不足しているときにだけ必要となる」。有能であればあるほど、意志の力は要らなくなる。「自分ならできる」と自分自身に言い聞かせなくてよくなるからだ。
(第1章「自意識(アイデンティティ)」より)

自分が他人にどう見られているか、諦めず冷静に現実を受け入れてトレーニングに励むことが大切ということでしょう。そんな当たり前の(しかしよくある自己啓発本では正反対のことが書かれている)ことを思い出させてくれる本でした。


2冊目 「FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」

ここ数十年間、わたしは何千もの人々に、世界の事実について数百個以上の質問をしてきた。貧困、富、人口、出生、死亡、教育、保健、ジェンダー、暴力、エネルギー、環境など、どれも世界を取り巻く状況の変化にまつわる質問だ。複雑な質問や、ひっかけ問題はひとつもない。それなのに、まともに正解できる人はほとんどいない。
(「イントロダクション」より)

私もほとんど正解できませんでした。

世界の平均寿命はすでに70歳を超え、世界中の30歳男性は平均10年間の学校教育を受け、同じ歳の女性は平均9年間の学校教育を受けています。また世界で電気が(いくらかでも)使える人は80%います。世界のほとんどの人はいわゆる「中所得層」にいるのです。

この本は世界の本当の姿についての本でもあり、あなたについての本でもある。あなたやわたしが出会うほとんどの人がありのままに世界を見ることができないのはなぜだろう。どうすれば世界を正しく見られるのだろう。そんな疑問にこの本は答えてくれる。
(「イントロダクション」より)

ありのままに世界を見ることができないのは、人間の本能が誤って機能するからだと本書では述べられます。人が「ドラマチックすぎる世界の見方」を求める本能があるのには理由があります。

時代遅れの本能が現代で問題になる、というのは「サピエンス全史」の1つのテーマであったように思います。新しい時代、新しい年の幕開けに、自分や世界の見方をアップデートすることが求められているのでしょう。

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