「封筒」①
「水平思考って知ってる?」
「…もしかして『ウミガメのスープ』か?」
「そう、それそれ。やったことは?」
「…いや、ない。」
「今から問題を出す。
その問題を出された後、回答者はヒントとなりそうなことを出題者に質問ができる。
質問の数に制限はないけど、その質問はYES・NOで回答できるものじゃないといけない。
あと、出題者は質問に対して、YES・NO・関係ないの3択で答えることができる。」
「…俺、その問題やらないとダメか?」
「どうせ暇でしょ?
問題を言うね。
『ある会社の社長が社内のパーティーに出席した。社長が帰宅すると妻が突然泣き出し、その後社長は死亡した。翌日、妻は自分の子どもを殺害し、自ら命を絶った。それはなぜか?』」
「気味の悪い問題だな。」
「お、ちょっと意識がはっきりしてきた?
じゃあ、今から質問していいよ。」
「はあ…そうだな…何から聞いたらいいのか…。
じゃあ、社長が死亡したのは妻が原因?」
「ノー」
「違うのか…じゃあ、社長は自殺だった?」
「ノー」
「じゃあ、社長は他殺?」
「イエス」
「イエスか…ますます気味が悪いな。
他殺なら…誰かに恨まれていた?」
「イエス」
「社長を恨んでいたのは社内の人間?」
「イエス」
「その社内の人間が社長を殺した?」
「イエス、すごいね、めちゃくちゃ速いじゃん。」
「なるほどな、これで社長は社内の人間に殺されたことはわかった。
次は…一旦、なぜ妻は自分の子どもを殺害したのかを聞くか。
えー…妻は子どもを愛していた?」
「んー…それは…半分イエス、かな。
めちゃくちゃ答えづらいな、それ。」
「そんな回答もありなのか…となると、子どもを心から愛していない理由があるのか。
妻は普通に子供嫌い?そういうわけじゃないか?」
「それはノーだね。」
「だよな…じゃあ…子どもを虐待していた?」
「ノー」
「え、そうか…んー…。
子どもには何か病気や障がいがあった?」
「ノー」
「それも違うのか…だとすると…子どもを愛せない理由…。
……もしかして、自分の子どもじゃない?」
「えーと…それも答えづらいな…、半分ノー、と言ったらいいのかな」
「半分ノー……じゃあ、聞き方を変えるけど、子どもは自分と社長の子?」
「それは、ノー」
「やっぱりか、その子どもは養子でもないよな、多分」
「うん、ノーだね」
「かなりドロドロしてるな…恐らくその子は妻と社長以外の誰かの子だ。」
「イエス、いいね、少しずつ近づいてるよ。」
「でも、まだ、なぜ妻が子どもを殺したのかがわからないな…。
妻は子どもに…憎しみを抱いていた?」
「うーん…それも…半分イエス、かな」
「半分愛していたって回答だったもんな。
ということは、愛していると同時に憎しみもあった…。」
「憎しみ…いや、やっぱり半分イエス、も違う気がしてきたな。
なんというか…あーもう、ヒントになっちゃうけど、常に憎しみを抱いていたわけではない、かな」
「んー常に、か…妻が子どもに憎しみを抱くようになったのは生まれたときだけ?」
「関係ない」
「じゃあ、最近?」
「関係ない」
「ん、じゃあ、いつごろから憎しみを抱いていたかは関係ないのか…でも、それで、常に憎んではいない…。
………子どもを殺したときは憎かった?」
「お、イエス!」
「なるほど、じゃあ、それまでは半分愛しているような状態だったけど、殺す瞬間は憎かったんだな。」
「そうそう、イエス!」
「じゃあ、今わかってるのは、社長は恨みを抱く社内の人間に殺されていて、妻は自分と別の誰かとの子どもを憎しみで殺している。
待てよ…こういう作り話にありがちな、って考え方するけど、その子どもは夫を殺害した社内の人間との子?」
「お!イエス!!」
「なるほど、やっぱりかー…ドロドロ系の話だな。
じゃあ、妻が子どもを殺したのは、子どもの本当の父である社内の人間に夫である社長を殺されたから、その復讐か。」
「復讐…んー、復讐って意味ならイエスかな」
「…なんか話がつながったから、一旦回答してもいい?」
「いいよ」
「社長は、社長へ恨みを抱く社内の人間に殺された。
そして、それを知った妻はその社内の人間との子どもを復讐として殺害、その後、子どもを手にかけた罪悪感で自殺した。
どうこれ?」
「おー……3割正解かな。」
「3割?そんなに少ないのか?」
「だって、まだ、社内パーティーから帰宅した社長を見て妻が泣いた理由がわかってないじゃん。
あと、最後の、妻が自殺した理由は全く違う。」
「えー、これ以上は思いつかないな…答えは?」
「えー、もう降参するの?」
「この問題疲れるしさ、教えてよ」
「…まだ考えないとダメだよ。
まだまだ時間はあるんだしさ、暇でしょ?」
②へ続く
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