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『孤狼の血 LEVEL2』映画評論

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もっと『孤狼の血 LEVEL2』を楽しんで頂くために。様々な視点から『孤狼の血 LEVEL2』を読み解く映画評。
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記事一覧

【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画ライター・成田おり枝】

待ってました!愛すべき白石組の名バイプレイヤー、音尾琢真の煌めきを目撃前作『孤狼の血』(2018)で主演を務めた役所広司は、続編『孤狼の血 LEVEL2』の公開にあたって「『孤狼の血』じゃけぇ、なにをしてもええんじゃ!」とコメントを寄せた。その言葉通り、危険な奴らを演じる俳優陣が思い切り暴れまくる姿を目撃できる『孤狼の血』シリーズ。そのなかでも、登場した瞬間に「来たぜー! 待ってました!」と観客を大いにニヤリとさせてくれるのが吉田役の音尾琢真だ。 前作では、スナックで下ネタ

【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画ライター・よしひろまさみち】

孤狼2で自由に書いてOK!  という極楽のような場所はこちらですか?『孤狼の血 LEVEL2』をたとえるなら、ヤバい幕の内弁当。この「ヤバい」は傷んでいるとかじゃなくて「旨すぎてどうしよう……震える」の最高レベル、ってことなのは、本編を観た人なら分かってもらえるわよね。 じゃ、なんで幕の内弁当なのか。幕の内弁当って、ちょっと古いスタイルだけど今も昔も定番で、白飯もあれば副菜もよりどりみどり。『孤狼~』もそうでしょ。ヤクザ映画は古い、と言われてはや20年ほど。古くは『仁義なき

【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画評論家・森直人】

ヤバくて明るい「東映ユニバース」(©轟夕起夫)の未来 文句なしに面白い。シンプルに、すごく面白い。『孤狼の血 LEVEL2』は強い「形式」の中で、色気と殺気に満ちた「役者」が蠢き、高性能な「演出」が祭りのように沸騰している。娯楽映画としてこれ以上、これ以外のものは必要ないのではないかと思える。 まず前提として確認したい。 2018年の『孤狼の血』はまさに「目からウロコ」だった。 この画期作は筆者にとって、デイミアン・チャゼル監督のミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(2016

【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画ライター・斉藤博昭】

 コロナ禍の閉塞感も突き破る、時代と映画の偶然にして狂気的リンク  コンプライアンス、ポリコレなどによって表現する側がこれまで以上に気を遣い、抑制や萎縮につながってしまう。特にテレビ番組は、明らかに「当たり障りのない表現」が幅を利かしている、ここ数年。これは新型コロナウイルスへの対応でも似たようなところがあり、とにかく過剰なまでの消毒、感染予防の徹底がなされ、ちょっとでも落ち度があると批判を浴びたりもする。もちろん安心に、穏やかな日常を送ることは大切だけれど、こんな抑制と警

【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画評論家・北川れい子】

「孤狼の血 LEVEL2」讃歌 《男たちの血まみれお伽噺に酔う》 まず戯れ言で失礼。 コ・「孤狼の血」に近付くな ロ・ロクデナシ野郎たちが大集合 ウ・嘘も裏切りも何でもあり ノ・のたうち回って死ぬ奴も チ・血が迸る映画に近付くな う-ん、これではまるでスブラッタホラーの宣伝惹句。あらためてもう一度。 コ・こいつらみんなヤバすぎる ロ・路地の裏側は男のリング ウ・運だけでは生き残れない ノ・のぼせた野郎に明日はなし チ・超絶ノワール劇に血が騒ぐ  お粗末でした。  それに

【『孤狼の血 LEVEL2』評論/ライター・西森路代】

日岡と大上の間には「継承」があった。では日岡と上林の間にあるものは何なのか…     これまでにも、ヤクザや警察組織の人間模様を描いた作品を見てきた。そのとき、登場人物の関係性としては、親と子ほども離れた同士が反発しあいながらも、知らず知らず「継承」するものもあったし、相反する組織に属する人間同士、「決して交わってはいけないのに、お互いを認識した瞬間から、何かシンパシーを感じあい、どうにも惹かれてしまう」というものもあった。  前作の『孤狼の血』を見たものならわかると思うが

【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画ジャーナリスト・中山治美】

役所広司に最も近い男   松坂桃李で忘れられない作品がある。 東京芸術劇場プレイハウスで上演された三浦大輔演出の舞台「娼年」(2016)。作家・石田衣良の同名小説が原作で、無機質な日々を過ごしていた大学生・リョウが”娼夫”のアルバイトを通して他者の心と身体に触れることで彩ある人生を見出していく物語だ。濡れ場有り。というか、ほぼ濡れ場で、舞台では異例のR-15+指定。観客も心して鑑賞せよ!という感じで、劇場内がピリッとした空気に包まれていた事を肌感覚で今も覚えている。  そんな

【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画評論家・轟夕起夫】

新たなる悪の地獄めぐり  これは“白石和彌 LEVEL2”だ!  「時代は昭和から平成に変わり、バブル景気の真っ只中にあった」 前作に引き続いて、二又一成のナレーションが適宜挟まれてゆく『孤狼の血 LEVEL2』。原作シリーズから離れ、完全オリジナルストーリーで監督白石和彌は、東映映画ならではの“荒ぶる世界”を新たに描出してみせている。 ところで今年の2月、NHK Eテレで放送された『SWITCHインタビュー 達人達』で白石監督は丸山ゴンザレス氏(危険地帯ジャーナリスト)と

【『孤狼の血 LEVEL2』評論/ライター・ 藤木TDC】

マル暴刑事とヤクネタやくざの激突!現在進行形の暴力映画 「狐狼の血LEVEL2」は70年代東映ヤクザ映画のオールドファンを間違いなくニヤリとさせる映画である。いや、むしろニヤケっぱなしといっていいかもしれない。  前作は原作ありきだったのに対し、今回は原作にない創作的続編という自由な構成ゆえ、監督は配給会社東映の過去作品を完全に意識、70年代ネタ満載で俳優たちもみな楽しみながら撮られたであろう印象を受けた。  モノクロ静止画&ナレーションでこれまでのあらましを復習、雨中

【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画評論家・秋本鉄次】

『撮れい、撮ったれい!』「孤狼の血」シリーズの使命はアウトロー映画の血脈を今後も絶やさぬこと。         『映画はアウトローを描いてこそ、じゃけえ』…広島の隣県で方言も似たような山口県生まれなので、この言い方をさせて頂きたい。『映画言うたら“刺激”じゃろうが』とも吠えてみたい。もう昔からの持論である。それがどうだ。今世紀に入ってから特に、銀幕のシャシンが、どうも“衛生消毒・温室栽培”されすぎて刺激度が急速に損なわれた。大袈裟に言えば“映画の危機”である。  そんな中