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惚れるってこういうこと~US Air Force Academy卒業式

翌日、ピーカンの青空。
アメリカンフットボール用のスタジアムで、卒業式が行われた。

前日、焦りながらもしっかりと「明日の卒業式も来るので許可証は2日分でお願いします」といっておいたので、それをパスポートとともに透明なカバンにいれた。

どこからでもかかってこい、と意気込んだものの、北ゲートはまたしてもパレード同様まったくのノーチェック。
ある意味がっかり。
まあスムーズに入れるに越したことはないのだけれど。

とはいえ、会場であるファルコンスタジアムに入るためのセキュリティは空港並み。金属探知にK9犬、荷物は透明なハンドバッグにいれなければならず、水筒も持ち込めない。

男、女、各種の人種が程よく混じった写真…とつい気にしてしまう。
ちなみに画面の上には銃を構えた警備が。

それもそのはず、要人が出席するのだから。

私はてっきりバイデン大統領をこの目で見られると期待していたが、今年の証書授与は副大統領のカマラ・ハリスだという。
初の女性、初のインド系、初のアフリカ系の副大統領だもの、それもまたよし。

そして、教授陣の入場の後、副大統領が登場した。

ハリス副大統領。
敬礼する士官候補生たちに比べても見劣りしない体格。
すくっと立ち姿も凛々しく、カッコいい。

そしてこの日の主役、昨日少尉に任官されたばかりの「元・士官候補生」たちの入場である。

さすがにペースの揃った行進

学部長であるリンネル・レテンドルのスピーチ、とアナウンスされると、とたんにスタンド席の上階をしめていた士官候補生からスタジアムを揺るがす大きな声があがった。
一瞬ブーイングかと思い、そんなの許されるのかといぶかしく思ったのだが、それは間違いだった。
ジェニーによると、とても候補生たちから愛されており彼が登壇するときは必ず掛け声がかかるのだという。しかもこの年度で引退ということもあり、ことのほか大きな歓声だったのだろう。
「敵は外だけでなく、内側にもおのれの心にもいかねないのだ」という彼のスピーチは、愛情とウィットに満ちていた。

そして、副大統領のスピーチ。
自分の功績や国の政治的なポジションも上手に触れつつ、しっかりメッセージを伝えるもの。
やはりこのポジションにまで登り詰める人材のスピーチというのはすごいなあと感心しきり。

遠目にも圧のある立ち姿。
ゆとりをもって目の前の学生たちを見わたしながら。
一度もプロンプトに目を向けたり、視線を落とすことなくスピーチをしていた。
やっぱりスピーチ力って大事だなあと痛感。

こうこうと真っ昼間の直射日光が降り注ぐスタジアム。
日除け対策ばっちりのカジュアルな服に帽子をかぶったスタジアム席の観衆とは対照的に、スーツを着込んだ副大統領は、同じようにぴっちりと立ち襟の制服を着た卒業生900人以上とひとりずつ敬礼し握手していく。
どちらもすごい。

最後は、恒例のハットトス(帽子投げ)。

空軍士官学校では、その瞬間、上空をサンダーバード機が飛び越えていくことで知られている。

サンダーバードの影が横切るのが分かる。
爆音に目を挙げた瞬間、もうスタジアムの遠くへいってしまった
これはスタジアムの反対側でマリー叔母さんが撮った写真。
ハットトスする学生たちに同期して上昇するサンダーバード。
一番上の階には濃紺の制服を着た下級生たち。

周囲に建物が何もない荒野のまんなかにあるスタジアムゆえか、かなりの低空飛行で通り過ぎていく。

爆音。
迫力。
ぎりぎりまで近づきあったフォーメーションの美しさ。

かっこいい…。
ことばを呑むとはこのことだ。
あまりにかっこよすぎて、ワーオくらいしかいえない。

もし子供の頃これを観ていたら、自分も戦闘機乗りを夢みたかもしれない。空を自由自在に飛ぶ姿に惚れた瞬間だった。

その後も、これでもかと贅沢に縦横無尽にサンダーバードバードが上空を行き交う
お腹のファルコンがいかしてる。

ロック音楽をBGMに、DJが名調子でパイロットの名前や卒業年度を紹介する。
ああ、この目の前にいる若者たちの中にも、やがて、同じように空を舞うものもいるのだろう。

22歳という若さ。
可能性。
青空のように無限の、彼らの未来。

清々しい気持ちになれる一日だった。

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