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北ウェールズへの旅-その3:またね。
ざざざざ。
ざざざざ。
なんか近い。
目が覚めると、水音がやたらに近い。
窓から見下ろすと、たっぷり豊かな満潮だった。
がっつりと着込んでマフラーぐるぐる巻きにして、朝の散歩。
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ひと気の全くない海岸線を歩いていたら、あまりに冷たい風が吹きすさぶせいか、とつぜん携帯の電源がおちた。
そのタイミングで丘の向こうからパワフルな朝日が昇ってきた。
携帯のカメラやポッドキャストなしで、そのままぜんぶ、自分の目で耳で肌で感じなさいということなのかもしれない。
反対側から、おじさんが自転車をゆっくりとこいでやってきた。
「おはよう」
一瞬のことだったけれど、目を合わせて、あいさつを交わしてくれる誰かがほっこりとあたたかいものをくれた。
♢
のんびりと時間をかけて荷造りをし、チェックアウト。
チェスターとカーナビに行き先を打ち込んだ。
地図では海岸線にそって東にいくと思っていたけれど、どんどん住宅街のなかに入り込んでいく。しかも、かなりの急斜面。
一人しか乗っていないフィアット500。なのに、ローギアでも坂を上るのがやっとだ。
なにしろ、これまでいろんな謎の地点に連れて行った経歴を誇るわがカーナビ。いったいどこに連れていかれるのか、と思いつつ、少し楽しみながら狭い山道をたどっていった。
と、そこに。
唐突に突然、見晴台のような場所が広がった。
ケルト十字のすっくと立つ広場。
そして、そこからふりかえってみると、そこには
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すばらしい景色がまっていた。
さよならウェールズ。
また来るからね。
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