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「一場の夢と消え」松井今朝子 著 を読んで

 近松門左衛門の若い頃から晩年までを描いた小説を読んだ。
 文楽は、大学3年の時に、「曽根崎心中」を原文で読むゼミを取ったことがある。その年に、曽根崎心中の文楽がそのまんま映画化されて観ることができた。

 当時、人形劇のサークルにも入っていて、それもあって、文楽も一種の人形劇ということで、興味を持ったのだと思う。

 その後、大阪に数年住んでいた時に、文楽劇場に一人で通って何度か文楽を鑑賞した。

 義太夫の語りと人形遣い。通ううちに、顔も覚えてしまい、親しみを持って観ていたのを記憶している。

 前置きが長くなったけれど、近松門左衛門とは、そういうわけで若い頃からご縁があった。2015年にNHKでやっていた「ちかえもん」というドラマも観た。
 
 本書はそれとはちょっと違うけれど、武家に生まれた近松が、紆余曲折の後に文楽にかかわることになった経緯と、その生涯が描かれていて、非常に面白かった。

 最初は歌舞伎のホンを書いていて、それが役者とのやり取りでいろいろ変わっていくというのも興味深い。

 文楽の人形も、当初は着物がきれいなくらいの木偶人形だったのが、徐々に工夫が凝らされていく様子もわくわくした。

 悪名高い犬将軍の時代で、いろいろや制約がある中で、必死に生き残りを図ろうとする芸人たちの姿も心に残った。

  最近は、文楽の地方公演だけ年に一度観るくらいだったが、来年は一度じっくりと本場の文楽を鑑賞してみたいと思う。

 友の会にも一口だけだが加入。せっかくの伝統を絶やさずに、ずっと継続してもらいたい。