9/12 大体の調味料うちにない
キャベツ180円、ゆずみそ210円×2、桃(さくら)350円、絹ごし豆腐130円で1080円也。
急に鍋が食べたくなって、父が気を利かせておいていったお惣菜ズはいったん冷蔵庫で眠っていてもらうとして、鍋を作る。
キャベツ一玉を買うのは勇気がいった。なにせ固形物をちゃんと毎日食べているわけではないぐだぐだな食生活を送っているからである。
栄養ゼリーと、のばしにのばしたそうめんでここ3ヶ月くらいしのいできた。
キャベツを一玉を食べ切れるだろうか。不安しかないが最悪キャベツは冷凍できる。
桃は、好きなのにまだ今年食べていないことに気づいて買った。なるべくかたいものを。
本当は「おどろき」という品種が大好きなのだが売っていなかった。
はりはりした食感と、噛めば噛むほどしみじみと甘さを感じられる品種だ。どこかで売っていないだろうか。
ゆずみそは馬路村の製品で、しかも半額になっていたので買った。実家の分も。
前に何故か馬路村のポン酢ブームが実家で起きて、なんにでも馬路村のポン酢をかけていた記憶がある。(弟はそういうのに興味がないので、実際にやっていたのは、両親と私である)
確か鍋の季節だったか。
ポン酢は湯豆腐に合う。
そういえば実家では湯豆腐がよく出ていたが、鍋に白菜と豆腐と水を入れてただ沸かしただけだった。
多分本当は昆布の出汁とかいれるんだろう。
でも私はその極限までシンプルな湯豆腐が好きだった。
母が作る数少ない料理の一つなのでレア感もあったからかもしれない。
そういえばこの家にはポン酢がない。
酢はある。
インターネットで「ポン酢 作り方」で検索する。
どうやらなんかめんどうくさいことが判明する。
かつお節とか、ゆず果汁とか。
ないさ。
今度は「ポン酢 作り方 簡単」で検索。
おかしい。
さっき出てきたレシピばかり表示される。
ということは、さっきので「簡単レベル」だったってこと?
ざわり、と背中の毛が立つ。
世界が歪む。
ポン酢、買った方がコスパいいんじゃないか……でもお金がない。
私にできることは、醤油と酢をまぜることだけだ。
でもそれじゃあ酢醤油じゃあありませんか。
ポン酢、ポン酢をください、と私は雪がちらつく町中で、道行く人に声をかける。
指先は赤く、ささくれが目立つ。唇には潤いがなく血色が悪い。
ポンズ、ポンズ……と女は囁き続け、いつしか都市伝説「ポンズ女」となる。
あなたの町にもくるかもしれません。
ポンズ女の執着心はそれはそれはものすげぇのです。