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鶴の一声ならぬ…🦍
むかし一緒に働いていたカフェで、仲のよかった店長がよく言っていた。
「くうぅ〜〜〜っ!!」
と。
190センチを越える身長で、ハワイ出身で英語が話せない彼は、ムキムキマッチョだった。
その容姿のせいではじめは入社した新人がビビリ倒すのがセオリーであったが、ゴリラのような存在感に太陽のような笑顔と明るさで、みな一様にメロメロになるまでがセット。
飲食店のホール勤務を経験したことがある人ならわかるのだが、お料理が乗っているお皿を持てるのはだいたい両手で3枚という人が多いはず。
それを彼は5枚持つ。
水の入ったピッチャーは両手で10ほど持つし、テーブルのバッシング(空いた皿の回収やテーブルの片付け)も「あれ?2人でバッシングしたん?」と思うほど下げてきていた。
そんなシゴデキゴリラ店長でも、やはり人間のようで。
火を吹くような忙しさになると額に汗をかいていた。
忙しさに圧倒され、畳み掛けられるようにオーダーが相次ぐと店内は一層賑やかになる。
オーダーが入ると、キッチン(ドリンカー)ではティロティロン🎵と音楽が鳴って卓番と注文が印刷される。
ホールがオーダーでバタバタしはじめると、キッチンでもティロティロが止まなくなるというわけだ。
そのティロティロが狂ったように鳴り続けると、(オーダーが入ると、了解の意味で発する掛け声が飲食店には結構あったりするのだが)決まって一旦、キッチンからは一切の人の声が聞こえなくなる。
もう全員目の前のことに精一杯で、気持ちにも余裕がなくなってくる。そして一生懸命作ることに集中して、声が出なくなってくるのだ。
そんな時間がいくらか続くと店内は殺伐としてきてしまう。普段から活気のある店ほど、その時間はかなり気まずい。ホールも含めイライラもしてくる。笑
それを一瞬で打破してくれるのが、キッチンに響き渡る声量で発せられる店長🦍の
「くうぅ〜〜〜っ!!」
だった。
川平慈英のク〜〜!と少しちがう、
「もう笑うしかない」という満面の苦笑い。
それを聞くと、待ってましたと言わんばかりに全員の眉間のシワが解け、苦しいのに笑っちゃうという謎の現象。
その「くうぅ〜〜〜っ!!」に何度助けられたか、わたしも覚えていない。
苦しいとき、ちょっと本気の声量で言ってみてほしい。不思議と気持ちがスッキリして、自暴自棄にも似た気合いと楽しさが込み上げてくるから。笑
不思議なゴリラ 人だったなぁ🦍